2 / 71
第一章 運命の番を知る
2 運命の出会い
しおりを挟む
高校三年生の夏、爽は友人たちと服を買いに行くため、目当てのショップ前で待ち合わせをした。友人を待っている時、道路の向こう側にいる長身の男が気になった。なぜかはわからないが、なんとなく気になって彼を見ていた。
大きな道路は車の通行が多く、バカみたいに熱い夏のせいで蜃気楼さえも見えそうなもわっとした空気があった。だから明確に彼の顔が見えたわけではない。それなのに、爽には他の人は目に入らずに、その人だけがクリアに見えた気がした。
ふと彼がこちらのほうを見た。いや、定かではない。実際には、ただ顔の位置が道路の向こうに向いただけで、目が合ったかわからない。しかしその時、急に心臓がドクンと鳴った。
ずくん、ずくんと、ありえない音をたてて心臓が高鳴り出す。
――な、な、なんだ、これっ。
感じたこともない自分の鼓動に爽は困惑していた。そして、息が急にあがりはじめた。
「はっ、はぁ、はっ」
――なに、これ、熱いっ。
周囲がざわついているのが気配でわかるが、その場に立っていられなくなり崩れ落ちた。どうしてか、道路の向こうにいた男に縋りたくなり顔を上げる。車が多く通る道路の向こうだから、相手が気付いてないのは当たり前だ。それでもその男を爽は必至に目で追った。
その時、男の近くに偶然にも姉が見えた。
「ねえちゃん? ねえちゃん……助けてっ」
大きな道路を挟んだ向こう側で、その男と話している姉を見て助けを求めた。こんな場所からでは声が届くはずもないのに、世界で一番信頼している姉だから、助けを求めたらこちらを見てくれると思った。しかしこちらには一切気がつかずに、その男と楽しそうに話しているのが見えた。二人は知り合いなのだろうかと疑問に思うも――
――ダメだ……あれは、俺の男、俺のアルファだ。
なぜか熱い体が語りかけていた。自分はオメガで、あの男はアルファ。あのアルファが欲しい……細胞がそう言っていた。大好きな姉のはずなのに、麗香の男に向ける笑顔を見た途端、嫉妬で狂いそうになった。
そんな本能の声は向こう側に届くはずもなく、それでもこちらに気が付いていない男に縋ろうと必死で息を切らせているところで後ろから友人に抱き抱えられる。
「爽っ! しっかりしろ。今、運ぶから」
「爽ちゃんっ! すぐに僕の緊急抑制剤打つからねっ、チクっとするけど我慢して」
二人の友人が何か言っているが、爽の思考がはっきりしない。とにかく心臓がうるさい。
「えっ、緊急……っ、はぁ、うっ」
「爽、もう黙れ。ほら、これで少し落ち着くだろ。急いで家に連れて帰るからな、安心しろ」
太ももに何かがチクっと刺さった痛みを感じると、熱い心臓は少し音が静かになった。そして次に気が付いたら自分の部屋のベッドで、爽は初めての発情期を迎えていた。
大きな道路は車の通行が多く、バカみたいに熱い夏のせいで蜃気楼さえも見えそうなもわっとした空気があった。だから明確に彼の顔が見えたわけではない。それなのに、爽には他の人は目に入らずに、その人だけがクリアに見えた気がした。
ふと彼がこちらのほうを見た。いや、定かではない。実際には、ただ顔の位置が道路の向こうに向いただけで、目が合ったかわからない。しかしその時、急に心臓がドクンと鳴った。
ずくん、ずくんと、ありえない音をたてて心臓が高鳴り出す。
――な、な、なんだ、これっ。
感じたこともない自分の鼓動に爽は困惑していた。そして、息が急にあがりはじめた。
「はっ、はぁ、はっ」
――なに、これ、熱いっ。
周囲がざわついているのが気配でわかるが、その場に立っていられなくなり崩れ落ちた。どうしてか、道路の向こうにいた男に縋りたくなり顔を上げる。車が多く通る道路の向こうだから、相手が気付いてないのは当たり前だ。それでもその男を爽は必至に目で追った。
その時、男の近くに偶然にも姉が見えた。
「ねえちゃん? ねえちゃん……助けてっ」
大きな道路を挟んだ向こう側で、その男と話している姉を見て助けを求めた。こんな場所からでは声が届くはずもないのに、世界で一番信頼している姉だから、助けを求めたらこちらを見てくれると思った。しかしこちらには一切気がつかずに、その男と楽しそうに話しているのが見えた。二人は知り合いなのだろうかと疑問に思うも――
――ダメだ……あれは、俺の男、俺のアルファだ。
なぜか熱い体が語りかけていた。自分はオメガで、あの男はアルファ。あのアルファが欲しい……細胞がそう言っていた。大好きな姉のはずなのに、麗香の男に向ける笑顔を見た途端、嫉妬で狂いそうになった。
そんな本能の声は向こう側に届くはずもなく、それでもこちらに気が付いていない男に縋ろうと必死で息を切らせているところで後ろから友人に抱き抱えられる。
「爽っ! しっかりしろ。今、運ぶから」
「爽ちゃんっ! すぐに僕の緊急抑制剤打つからねっ、チクっとするけど我慢して」
二人の友人が何か言っているが、爽の思考がはっきりしない。とにかく心臓がうるさい。
「えっ、緊急……っ、はぁ、うっ」
「爽、もう黙れ。ほら、これで少し落ち着くだろ。急いで家に連れて帰るからな、安心しろ」
太ももに何かがチクっと刺さった痛みを感じると、熱い心臓は少し音が静かになった。そして次に気が付いたら自分の部屋のベッドで、爽は初めての発情期を迎えていた。
137
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜
みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。
自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。
残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。
この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる――
そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。
亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、
それでも生きてしまうΩの物語。
痛くて、残酷なラブストーリー。
神託にしたがって同居します
温風
BL
ファンタジー世界を舞台にしたオメガバースです。
アルファ騎士×美人ベータ(?)
【人物紹介】
受け:セオ(24歳)この話の主人公。砂漠地帯からの移民で、音楽の才がある。強気無自覚美人。
攻め:エイダン(28歳)王室付き近衛騎士・分隊長。伯爵家の三男でアルファ。料理好き。過労気味。
【あらすじ】
「──とりあえず同居してごらんなさい」
国王陛下から適当な神託を聞かされたセオとエイダン。
この国にはパートナー制度がある。地母神の神託にしたがって、アルファとオメガは番うことを勧められるのだ。
けれどセオはベータで、おまけに移民。本来なら、地位も身分もあるエイダンと番うことはできない。
自分は彼の隣にふさわしくないのになぜ? 神様の勘違いでは?
悩みながらも、セオはエイダンと同居を始めるのだが……。
全11話。初出はpixiv(別名義での投稿)。他サイト様にも投稿しております。
表紙イラストは、よきなが様(Twitter @4k7g2)にお願いしました。
追記:2024/3/10開催 J. Garden55にて、『神託にしたがって同居します』の同人誌を頒布します。詳しい内容は、近況ボードにまとめます。ご覧頂ければ幸いです!
高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】
きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。
オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。
そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。
アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。
そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。
二人の想いは無事通じ合うのか。
現在、スピンオフ作品の
ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる