運命の番は姉の婚約者

riiko

文字の大きさ
24 / 71
第二章 男を誘う

24 子供が欲しい

しおりを挟む
「俺は結婚もしないし、交際もしない。欲しいのは初めから一つ、子種だけだから。それができるなら相手は隆二でもいいけど、無理だろう? 子種だけもらって父親としての権利を主張しないとか都合よすぎるだろ?」
「どうしても、それ必要なの?」
 隆二は隣に腰を下ろし、冷静に聞いてきた。
「それって?」
「だから、子供を産むってこと」
「さっきからそう言っているだろう。俺、家族が欲しいんだ。夫じゃなくて子供っていう家族が」
 自分で言っていておかしいことは爽にだってわかっている。しかし、今のセリフは我ながらしっくりきた。
 きっと一生アルファとつがいになれない。なぜなら爽のアルファは姉の男一人だけだから。かといって、ベータとだって結婚するつもりはない。爽には、この先もずっと運命の男を想って生きていく人生しか見えなかった。   
 たった一人の結ばれない相手を想っているオメガを嫁にする人が哀れだ。だから旦那はいらない。しかし子供は欲しい。姉の結婚式に参列するためだけではなく、隆二と体を合わせてから、子供を孕む自分が少し想像できるようになっていた。
 もしかしたら自分の遺伝子をこの世に残したいというのは、オメガの本能なのかもしれない。
 誰ともこの先結婚できないならせめて子供だけは……。自分の家族を欲しがってもいいじゃないかと、爽は開き直った。
 将来を憐れんでいるとでも思われたのだろうか、隆二が優しくなる。
「そんな泣きそうな顔で、言わなくてもいいよ。きっと爽にはいろんな事情があるんだね」
「え……」
 爽の頭をなでながら、隆二はそう言った。まさか何か感づかれているのだろうかと、爽は焦った。しかし隆二の提案は――
「いいよ、僕が子供の種をあげる」
「え、いいの?」
「ああ、だから、今後一切他の男と関係を持とうとしないで。生でするのに、他の男を受け入れている人とするのは、リスクしかないから。僕も爽を生で抱く以上、誰とも寝ないって約束する。それを約束してくれたら爽のこの小さなお腹に僕の種を溢れるほど注ぐ」
 隆二は、爽の腹をさすってそう言った。
 リスク管理も必要になる。そこを見落としていた。誰でもいいと言って誰とでも生ですることは、病気になることも考えないといけない。だったら、子供の親になる人は、関係を持つ人は一人だけの方がいいというのも、安全策として必要なことだと、隆二の言葉に納得をした。
「あ、りがとう」
「どういたしまして」
 いったいどういった心境の変化なのかはわからないが、隆二がそう言うのなら縋るしかなかった。
 男を漁ることが、どれだけリスキーで大変かをほんの数回しかしていないが、わかった。一回は薬を飲まされ、次は金で買おうという男を釣ってしまった。そして二回も保険証を寝ている間に見られていた。相原という分別ある大人と、目の前にいる隆二という男だったのが幸いだった。犯罪者に見られていたらどうなっていたかわからない。
 だからといって、爽はいきなり隆二を信用はできなかった。身元は知られてしまったし、変に抗い、親になにか言われても困る。だったら隆二に寄り添って人となりを見て判断するしかない。
 とにかく爽の要望は言った。これで付き合いを始めるとは思われないだろう。隆二からセフレと提案されたくらいだ。本気ではなく体の関係で言いと言ったようなものだ。
 問題が片付いたら、やることは一つだった。
「する?」
「いきなり、そういうこと」
 隣に座る隆二を仰ぎ見て、爽は誘った。
「だって、俺に子種くれるんだろ? そしたら俺が隆二と一緒にいるときにすることは一つだけだと思うんだけど? 今日気分が乗らないなら、後日でもいいよ。でもなるべく早く妊娠したいから、あまり先でも困るかな」
「僕は、こういう経験は初めてだから、慎重にいきたい」
「ただ、やるだけだろ?」
 隆二が真剣な顔をして向き合うことに、爽は疑問を感じた。
 ――ただエッチするだけなのに、何をそんなに……。面倒臭い男だったら、やっぱり面倒臭いなあ。
「そうじゃなくて、爽に僕の子供を産んでもらうってことでしょ」
「うーん? そんな真剣に考えられても困るんだけど、俺は別に相手は隆二じゃなくてもいいって思ってるどうしようもないオメガだよ? ただベータの男ならそれでいいっていうだけの条件なのに」
「え、ベータだけが爽の対象なの?」
 そこで驚いた顔をした隆二。
「なにそこで驚いてるんだよ、アルファなんて絶対嫌だね。俺、アルファのフェロモン嗅ぐと気持ち悪くなるんだよ。だからアルファは問題外」
「オメガなのに?」
 やけに食いついてくる。
「ベータの隆二は、オメガのことなんてわからないだろ? フェロモンで誘われるなんて最悪でしかないね。隆二がアルファだったら、絶対にこんな誘いしないし乗らなかった。相原さんが、ベータしか来ないから安心って言ったからみかげさんのところに行ったんだ」
「そうなんだ……」
 隆二はまた考えるような顔をした。爽はその表情を見て、不安を感じた。
「ねぇ、面倒くさかったら、やっぱりやめよう。妊娠はするつもりだったけど、種明かしするつもりはなかったから。なんか重い話でごめん。な? 今日はただエッチを楽しもうよ、相性のいいっていう体で俺を楽しませてよ?」
「爽! 僕は爽を手放すつもりはない。だから爽のここに入るのはこれから先僕だけだ」
 隆二は真剣な顔をして、爽の腹をさすった。
「そうなの?」
「そうなの!」
「じゃあ、する?」
「そうだね、爽は今それしか考えられないみたいだから、とろとろにさせてあげるよ」
 隆二はキスをしようとしてきたので、爽は慌てて唇に手を当ててキスを回避した。その手に勢いよくキスをした隆二はあっけにとられていた。
「この手はなに?」
「あ、なんか、これ以上キスはだめな気がする。やっぱり少し話しよう」
「なんの話? 僕と真剣に交際する気になった?」
 隆二は微笑む。
「そうじゃなくて! 俺、本当に子供が欲しいだけで、彼氏が欲しいわけじゃない。だからセフレってことでいいんだよね? 俺たちは体だけの関係。そして、俺が孕むまでは隆二以外に体を開かないって約束するから、生でしてくれるんでしょ?」
「そう言ったね」
「だから、恋人みたいな真似はよして。ただ体の快楽のためだけに俺を使ってよ。キスとか、そういうのなしで」
「ふーん。爽はへんなところで、変な常識があるみたいだけど、セフレだってキス位するし、キスした方が気持ちいいんだよ。気持ちいいことするのに、そこだけなしなんてひどいと思わない? セックスには雰囲気も大切なんだよ」
 たしかに、そうなのだろう。それでは仕方ない。キスは気持ちいいし、隆二に口の中もとろとろにされるのは悪くないと爽は思った。
「それじゃ、エッチのときだけな」
「ああ、わかったよ。じゃあ、いいね」
「うん」
 隆二は爽にキスをして、手慣れた手順で次々爽をとろけさせた。

しおりを挟む
感想 257

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。 自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。 残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。 この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる―― そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。 亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、 それでも生きてしまうΩの物語。 痛くて、残酷なラブストーリー。

僕がそばにいる理由

腐男子ミルク
BL
佐藤裕貴はΩとして生まれた21歳の男性。αの夫と結婚し、表向きは穏やかな夫婦生活を送っているが、その実態は不完全なものだった。夫は裕貴を愛していると口にしながらも、家事や家庭の負担はすべて裕貴に押し付け、自分は何もしない。それでいて、裕貴が他の誰かと関わることには異常なほど敏感で束縛が激しい。性的な関係もないまま、裕貴は愛情とは何か、本当に満たされるとはどういうことかを見失いつつあった。 そんな中、裕貴の職場に新人看護師・宮野歩夢が配属される。歩夢は裕貴がΩであることを本能的に察しながらも、その事実を意に介さず、ただ一人の人間として接してくれるαだった。歩夢の純粋な優しさと、裕貴をありのまま受け入れる態度に触れた裕貴は、心の奥底にしまい込んでいた孤独と向き合わざるを得なくなる。歩夢と過ごす時間を重ねるうちに、彼の存在が裕貴にとって特別なものとなっていくのを感じていた。 しかし、裕貴は既婚者であり、夫との関係や社会的な立場に縛られている。愛情、義務、そしてΩとしての本能――複雑に絡み合う感情の中で、裕貴は自分にとって「真実の幸せ」とは何なのか、そしてその幸せを追い求める覚悟があるのかを問い始める。 束縛の中で見失っていた自分を取り戻し、裕貴が選び取る未来とは――。 愛と本能、自由と束縛が交錯するオメガバースの物語。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

あなたは僕の運命なのだと、

BL
将来を誓いあっているアルファの煌とオメガの唯。仲睦まじく、二人の未来は強固で揺るぎないと思っていた。 ──あの時までは。 すれ違い(?)オメガバース話。

神託にしたがって同居します

温風
BL
ファンタジー世界を舞台にしたオメガバースです。 アルファ騎士×美人ベータ(?)  【人物紹介】 受け:セオ(24歳)この話の主人公。砂漠地帯からの移民で、音楽の才がある。強気無自覚美人。 攻め:エイダン(28歳)王室付き近衛騎士・分隊長。伯爵家の三男でアルファ。料理好き。過労気味。 【あらすじ】 「──とりあえず同居してごらんなさい」 国王陛下から適当な神託を聞かされたセオとエイダン。 この国にはパートナー制度がある。地母神の神託にしたがって、アルファとオメガは番うことを勧められるのだ。 けれどセオはベータで、おまけに移民。本来なら、地位も身分もあるエイダンと番うことはできない。 自分は彼の隣にふさわしくないのになぜ? 神様の勘違いでは? 悩みながらも、セオはエイダンと同居を始めるのだが……。 全11話。初出はpixiv(別名義での投稿)。他サイト様にも投稿しております。 表紙イラストは、よきなが様(Twitter @4k7g2)にお願いしました。 追記:2024/3/10開催 J. Garden55にて、『神託にしたがって同居します』の同人誌を頒布します。詳しい内容は、近況ボードにまとめます。ご覧頂ければ幸いです!

高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。  オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。  そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。 アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。  そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。 二人の想いは無事通じ合うのか。 現在、スピンオフ作品の ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中

処理中です...