運命の番は姉の婚約者

riiko

文字の大きさ
23 / 71
第二章 男を誘う

23 自宅

しおりを挟む
 どこかの駐車場に入った。いつものホテルではないらしいと、またのと脳内で言っている爽だった。
 ここで車が停まる。契約駐車場に見える。車庫入れが終わると、隆二が車から降りた。助手席側のドアを外から開けると、隆二が初めと同じように爽のシートベルトを外し、手を引かれ車から出される。
 ここまでお姫様対応をされたのは、初めてだったので、爽は照れた。
 爽の手を引いて隆二は言った。
「入ろう。ここが僕の家」
 地下駐車場から、エレベーター直結なのだろう。入ろうと言った先にはエレベーターが見え、爽は立ち止まる。
「え、行くと思うか? 今までの会話で」
「そうだね、来ないよね?」
「ああ、行かないよ。じゃ、俺は帰るから」
 車から降りて自由になった体を、駐車場の出口の方へと向け歩き出した。そこで突然テレビのナレーションのような語り口調で、隆二が話し始める。
三上爽みかみそう、十九歳、高校卒業後に家を出て就職。今は、社員寮で暮らしている」
 爽はパタリと立ち止まった。
「え?」
 振り返り、隆二を見る。
「実家は都内なのになぜわざわざ寮暮らしなの? 家族とは疎遠とかかな? それでそもそも一人で子供をどうやって育てていくつもり?」
「どういうこと? なんで俺の経歴を知ってるの……」
 隆二は当たり前に話していたことに、驚きを隠せない。爽は彼に、プライベートや仕事のことを語ったことがない。
「本当に危険な子だね。一夜限りの相手との現場に、いや二回シタね。とにかく財布に丁寧に保険証なんて入れておくべきじゃないからね。ヤリつかれて寝ちゃうなんてさ、起きたとき無事じゃないことだってあるのに。緊急連絡先まで僕、覚えちゃったよ」
「あ……」
 そういえば、相原にも見られて身分を知られたばかりだった。
 あの時は警察官に拾われて安全しかなかった。隆二はそもそも人のものを勝手に見るような男に見えなかったので、財布の中身を見られていたとは思いもしなかった。
 オメガは何かあった時のために、保険証には必ず連絡のつく保護者や家族が記載されている。それを見られたら現住所も戸籍の住所もすぐにわかってしまう。
 そういったことにも、オメガは気を付けなければいけなかったようだ。今さらながら爽は行動の浅はかさに気が付いた。
 隆二はきっといいところの出。おぼっちゃんなのは、相原とみかげが否定していなかった。だから関係を持った相手のことは、ゆすられないようにとかの防衛策で、そうやって弱みを握っておくのかもしれない。
 黙っていると隆二が控えめに聞いてくる。
「怒った?」
「……怒ってないけど、驚いた」
「僕が犯罪者だったら、爽は今頃どうなっていたと思う? そういった行動から家族がゆすられることもあるんじゃない?」
「隆二は、犯罪者……なの?」
 隆二は真顔で話していたのだが、次の瞬間、大きな声で笑った。
「ははは、今そこ? とにかく、僕は犯罪者じゃなくて、爽に惚れたただの男だよ。でも、爽がこのまま帰るなら犯罪者になるかもしれない。実家に行って、やり逃げされたってお父さんに言うかも?」
「……わかった。隆二の部屋で話そう」
「理解が早くてよかった。おいで」
 隆二に手を繋がれ、地下駐車場から直通のエレベーターで隆二の暮らす階まで上がっていった。
 ずっと手を繋がれたままなのに、爽はやはり嫌悪感がなかった。脅されたはずなのに、それでもなんとなくこの手に安心してしまう。エレベーターの中で爽は必死に考えていた。これから何を話すというのだろうか、手の内は全て見せた。いや、全てではないが、だいたい間違いではない。
 隆二はカードキーで部屋を開けると、爽を招き入れた。玄関から室内を見渡すと、想像通りの金持ちだった。マンションの一室、ここは都会の一等地の夜景がばっちりと見えるタワマンらしい。
「部屋に入ってくつろいでて。今なにか飲み物を、んん?」
 隆二が自宅へ帰ってせわしなく動こうとするのを、爽は胸倉を掴みキスを仕掛けた。
「そんなの、いいから、やりたいんだろ?」
「え、ちょ、まずは話でも、むちゅっ、ん」
 隆二としか経験ないキスだったが、出会ってから数えきれないくらいの口づけをした。だから、やり方は覚えていた。
 部屋にまで連れ込んで、いったいなにを話すというのだろうか。
 なぜか脅されてここまで来たが、爽は隆二と行為をする以外に用はなかった。相性がいいと言っていたが、ただ単にオメガの体が気に入ったのかもしれない。だったら手早く終わらせて、口止め料として体を差し出すだけ。
「いいよ、やろうよ、種明かししたからさ。もう隆二の子供は望まないから安心して」
「え、そういう話なの?」
「どういう話だよ。とにかく、俺の体が忘れられなかったんだろう? いいよ、また朝まで好きなように抱けよ。それで終わりにしてくれ、な」
「また、そんなビッチ発言して……似合わないよ。トビキリ可愛いけど」
「だまれ」
 隆二に抱きつきながら、爽はキスを繰り返す。隆二はキスを丁寧に返してはくるが、それ以上をしようとしない。
「って、ちょっと、なんなんだ! 俺とヤルために部屋に連れてきたんだろ?」
「違うよ、って違わないけど、今は違う」
「はぁ? 意味わかんね」
「ほら、キスしたいのはわかったけど、今は落ちついて座ろう」
「キス、したいわけじゃない!」
「はいはい、爽はキス好きだもんね。初エッチのときも、ずっとれてる最中、キスキスって、キスばかり強請ねだってきて、可愛かったなぁ。後でたっぷりしてあげるから」
 エッチのときのことを言われると、爽としては何も言えなくなる。恥ずかしいことに、ほぼ真実だからだ。
 頭をポンポンとなでられ、リビングにあるソファに座らされた。隆二が水のペットボトルを渡してくる。
 ――水まで、おしゃれかよ! 
 それは海外の見たことないブランドの水だった。蓋を空けてグイっと飲んだ。一息ついた爽は、ソファに深く腰をかけて悪態をついた。
「で! なんだよ、お前なにがしたいんだよ」
「爽と真剣に交際がしたい」
「は? いやだ、はい、終わり!」
「それに子供だって、君にあげることができる」
「それは欲しいけど、でももれなく隆二もついてきちゃうんだろ? 俺、子供の親はいらないんだけど」
「もれなくって……」
 隆二は呆れた顔をしていた。

しおりを挟む
感想 257

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。 自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。 残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。 この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる―― そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。 亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、 それでも生きてしまうΩの物語。 痛くて、残酷なラブストーリー。

欠陥Ωは孤独なα令息に愛を捧ぐ あなたと過ごした五年間

華抹茶
BL
旧題:あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~ 子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。 もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。 だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。 だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。 子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。 アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ ●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。 ●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。 ●Rシーンには※つけてます。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

番を持ちたがらないはずのアルファは、何故かいつも距離が近い【オメガバース】

さか【傘路さか】
BL
全10話。距離感のおかしい貴族の次男アルファ×家族を支えるため屋敷で働く魔術師オメガ。 オメガであるロシュは、ジール家の屋敷で魔術師として働いている。母は病気のため入院中、自宅は貸しに出し、住み込みでの仕事である。 屋敷の次男でアルファでもあるリカルドは、普段から誰に対しても物怖じせず、人との距離の近い男だ。 リカルドは特殊な石や宝石の収集を仕事の一つとしており、ある日、そんな彼から仕事で収集した雷管石が魔力の干渉を受けない、と相談を受けた。 自国の神殿へ神が生み出した雷管石に魔力を込めて預ければ、神殿所属の鑑定士が魔力相性の良いアルファを探してくれる。 貴族達の間では大振りの雷管石は番との縁を繋ぐ品として高額で取引されており、折角の石も、魔力を込められないことにより、価値を著しく落としてしまっていた。 ロシュは調査の協力を承諾し、リカルドの私室に出入りするようになる。 ※小説の文章をコピーして無断で使用したり、登場人物名を版権キャラクターに置き換えた二次創作小説への転用は一部分であってもお断りします。 無断使用を発見した場合には、警告をおこなった上で、悪質な場合は法的措置をとる場合があります。 自サイト: https://sakkkkkkkkk.lsv.jp/ 誤字脱字報告フォーム: https://form1ssl.fc2.com/form/?id=fcdb8998a698847f

あなたは僕の運命なのだと、

BL
将来を誓いあっているアルファの煌とオメガの唯。仲睦まじく、二人の未来は強固で揺るぎないと思っていた。 ──あの時までは。 すれ違い(?)オメガバース話。

高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。  オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。  そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。 アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。  そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。 二人の想いは無事通じ合うのか。 現在、スピンオフ作品の ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

処理中です...