運命の番は姉の婚約者

riiko

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第二章 男を誘う

23 自宅

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 そしてどこかの駐車場に入った。いつものホテルではないらしい。

 ここで車は停まる。契約駐車場? 車庫入れが終わると、隆二が車から降りた。そして座席のドアを外から開けられて、隆二が初めと同じように、俺のシートベルトを外し、手を引いて車から出された。ここまでお姫様対応をされたのは、初めてだったので、照れた。

「おいで、ここ、僕の家」
「え、行くと思うか? 今までの会話で」
「そうだね、来ないよね?」
「ああ、行かないよ。じゃ、俺は帰るから」

 車から降りて自由になった体を、駐車場の出口の方へと向けた。

三上爽みかみそう、十九歳、高校卒業後に家を出て就職。今は、社員寮で暮らしている。実家は都内なのになぜわざわざ寮暮らしなの? 家族とは疎遠とかかな? それでそもそもひとりで子供をどうやって育てていくつもり?」

 動きを止めて、隆二を見た。

「どういうこと? なんで俺の経歴を知ってるの……」
「本当に危険な子だね。一夜限りの相手との現場に、いや二回したね。とにかく財布に丁寧に保険証なんて入れておくべきじゃないからね。やりつかれて寝ちゃうなんてさ、起きた時無事じゃないことだってあるのに。まさかの緊急連絡先まで僕、覚えちゃったよ」
「あ……」

 そういえば、相原にも見られて身分を知られたばかりだった。あの時は警察官に拾われて安全しかなかったし、隆二もそういう男に見えなかったから、財布の中身を見られていたとは思いもしなかった。オメガは何かあった時のために保険証には必ず連絡のつく保護者や家族が記載されている。それを見られたら現住所も戸籍の住所もすぐにわかってしまう。

 そういったことにも、オメガは気を付けなければいけなかったのか。今さらながら自分の行動の浅はかさに気が付いた。

 隆二はきっといいところの出だ。おぼっちゃんというところは、相原もみかげも否定していなかった。だから関係を持った相手のことは、ゆすられないようにとかの防衛策で、そうやって弱みを握っておくのかもしれない。

「怒った?」
「……怒ってないけど、驚いた」
「僕が犯罪者だったら、爽は今頃どうなっていたと思う? そういった行動から家族がゆすられることもあるんじゃない?」
「隆二は、犯罪者……なの?」

 隆二は真顔で話していたと思ったら、大きな声で笑った。

「ははは、今そこ? とにかく、僕は犯罪者じゃなくて、爽に惚れたただの男だよ。でも、爽がこのまま帰るなら、犯罪者になるかもしれない。実家に行って、やり逃げされたってお父さんに言うかも?」
「……わかった。隆二の部屋で話そう」
「理解が早くて良かった、おいで」

 隆二に手を繋がれて、地下駐車場から直通のエレベーターで隆二の暮らす階まで上がっていった。

 ずっと手を繋がれたままだけど、嫌悪感はなかった。自分は今、脅されたはずなのに、それでもなんとなくこの手に安心してしまう。そして、エレベーターの中で必死に考えていた。これから、何を話すというのだろうか、手の内は全て見せた。いや、全てではないけれど、だいたい間違いではない。

 隆二はカードキーで部屋を開けると、俺を部屋に入れた。想像通りのお金持ちだった。マンションの一室、ここは都会の一等地の夜景がばっちりと見えるタワマンだった。

「部屋に入ってくつろいでて、今なにか飲み物を、んん?」
「そんなの、いいから、やりたいんだろ?」
「え、ちょ、まずは話でも、むちゅっ、ん」

 俺は部屋に入って、靴を脱いだ瞬間、隆二にキスを仕掛けた。隆二としか経験ないキスだったが、出会ってから数えきれないくらいの口づけをした。だから、やり方は覚えていた。

 なにを話すというのだろうか、なぜか脅された。しかし、俺は隆二とナニをする以外、用はないし。相性がいいと言っていたけれども、ただ単にオメガの体が気に入ったのかもしれない。だったら、手早く終わらせて、口止め料として体を差し出すだけ。

「いいよ、やろうよ、種明かししたからさ。もう隆二の子供は望まないから安心して」
「え、そういう話なの?」
「どういう話だよ。とにかく、俺の体が忘れられなかったんだろう? いいよ、また朝まで好きなように抱けよ、それで終わりにしてくれ、な」
「また、そんなビッチ発言して、似合わないよ。トビキリ可愛いけど」
「だまれ」

 隆二に抱きつきながら、キスを繰り返しした。しかし、隆二はキスを丁寧に返してはくるが、それ以上をしようとしない。

「って、ちょっと、なんなんだよ! 俺とやるために部屋に連れてきたんだろ?」
「違うよ、って違わないけど、今は違う」
「はぁ? 意味わかんね」
「ほら、キスしたいのはわかったけど、今は落ちついて、座ろう」
「キス、したいわけじゃない!」
「はいはい、爽はキス好きだもんね。初エッチのときも、ずっとれてる最中、キスキスって、キスばかり強請ってきて、可愛かったなぁ。後でたっぷりしてあげるから」

 エッチのときのことを言われると、何も言えなくなる。ほぼ真実だから。

 頭をポンポンとなでられ、リビングにあるソファに座らされた。そして、隆二が水のペットボトルを渡してきた。水まで、おしゃれかよ! 海外の見たことないブランドの水だった。

 それを空けてグイっと飲んだ。

「で! なんだよ、お前なにがしたいんだよ」
「爽と真剣に交際がしたい」
「は? いやだ、はい、終わり!」
「それに子供だって、君にあげることができる」
「それは欲しいけど、でももれなく隆二もついてきちゃうんだろ? 俺、子供の親はいらないんだけど」
「もれなくって……」

 隆二は呆れた顔をしていた。

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