運命を知っているオメガ

riiko

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本編

13、抗えないヒート

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 父さん母さん、俺の死因はキュン死……。

 しておりませんでした。でも、これはオメガの死因ナンバーワンに違いない。俺の心臓も、チンポも持たない!

 やばいです。チンコ硬くなったまま愛しのアルファ様にお姫様抱っこされております。変態と罵られたら立ち直れないです。

 それにしても、つらいっ、熱いっ、いい匂いっ。

 俺は西条に抱えられているけど目が開けられない。見たら俺は……俺は、また死んでしまう。だって、この香りは俺が求めてやまなかった俺のアルファの匂い。

 だめなのに、抱えられながらチンポがってる。

 はぁ、はぁ、はぁ。

 あっ、西条から離された? そして少し意識が浮上して目を開けると、ここは、保健室? ベッドに寝かされて上からは保険医の先生が俺を心配そうに見ている。

 でも、俺はキョロキョロして西条を探すと、側にいてくれた西条と目が合い、しっかりと俺を見てくれている。

真山まやま君、目が覚めた? もう本格的にヒート始まっているけど、薬で発情させられた。だと薬を打って抑えることはできない。一度に違う作用のものを使うのは体に負担なんだ。だから自然にヒートと向き合うしか無い、この意味わかるね?」

 薬で発情ってなんだ? でも先生が言うこと、わかっている。自然にヒートってことは、薬を使わずに発情期をやり過ごさなくちゃいけないってこと。

 そもそも俺っ、薬なんていつ使った? 発情させられた? よく覚えてない。

「はっ、あっ、大丈夫です。あの、一人にしてもらえますか? その……あんたも、ありがとう。迷惑かけてごめん」

 西条に俺の気持ちを気づかれないように、素っ気なくお礼を言った。そして先生は困った顔をした。

「いや、そうじゃなくてね。正直、今の君は抑制剤なしの発情は耐えられないと思う。オメガの発情を止めるにはアルファの精を体内に入れるのが一番なんだ。彼……西条君は君の特別じゃ無いの?」
「えっ、違います。そいつは俺を助けてくれたけど、違う! 先生大丈夫です。俺、耐えるから」

 もうやめて。早くこいつを解放してあげて!

「でも、ここに君を抱いてくれそうなアルファがいるのに。真山君はこないだ初めてのヒートを迎えたんだよね、薬を飲んでいても辛かったって言っていたじゃないか」
「でも、俺経験ないし、無理です」
「いつかは経験しなくちゃいけないよ、君の場合は薬が効かない体質だ、アルファに抱かれたほうがいいんだよ。それに発情はもともと薬だけで耐えられるものではない。そんな子に医者としては一人で薬なしは許可できないよ」
「そんな……じゃあ、適当な人、探すからっ、だからそいつだけはっ」

 先生に縋るように否定した、そして西条をそっと見ると、イラついているように見えた。泣きたいっ。これ以上、俺のことで失望させたく無い。

「何言っているんだ! 適当な奴に心当たりでもあるのか!? でもダメだ! アルファならここにいる、俺は正樹を抱きたい」
「……えっ」

 な、なんて言った? 

 そもそもなんで、俺は西条に名前で呼ばれているんだ? 西条は俺を運命だと気がついているのに、前のヒートの時は俺を抱かなかったんだよな? それとも気づいていない? なにが起きているのかわからない。

 でも西条の低くて優しい声に、そして抱きたいっていう言葉に、顔から熱が発生した。

 そして、恥ずかしいけどそんな西条を見てみたくて、顔を見た。そしたら優しく笑ってくれた。

 あっ、好きだ。いやいや! ダメだダメだ!

「でもっ、あんたっ、オメガ嫌いだろう? いいよ、そこまで迷惑はかけられない」
「確かに俺はオメガ嫌いで有名だ、だけど正樹だけは違う」

 それは、なに? 俺を運命と認定してくれるの? あれ、でもオメガ嫌いならそもそも運命もダメ? 

「ど、うして」
「正樹は俺に抱かれるより、知らないアルファに抱かれる方がいいのか?」
「……」

 思考は停止した。

 先生と話していたからか、西条から触れられてないからか、今はまた発情が少し引いている。だから、きちんと断らないと。快楽に負けて西条にフェロモンレイプ? なんてできない! 俺のせいで西条に一生の傷を、汚点を残せない!

「なぁ、正樹が嫌がるようなことはしない、俺に任せてくれないか?」
「でもっ」
「俺が触るのは嫌じゃ無い?」
「いや、じゃない」

 ゆっくりと手を握られた、そしてもう片手が俺のうなじに触れた。

「ひやっ、そこ」
「ここ?」
「だめっ、だからっ」

 思わず発情を促されそうになったら、先生が間に入ってくれた。

「ねえ……ここでおっぱじめる気? それでもいいけど、じゃあ僕はもういいかな? 人の行為を見る趣味はないし、真山君も恥ずかしいだろうから」

 間に入ってくれたんじゃなかったの? 嫌だ、二人きりにしないで!

「えっ、先生っ」

 先生はにっこりと笑って、最低なことを言ったよ!

「大丈夫だよ。西条君に任せてみなさい、彼はきっとうまいと思うよ?」

 西条は納得したのか!? 

 二人は頷きあっているみたいだった。先生にすがろうと思ったら、すぐに部屋から出て行ってしまった。どうしよう、そう思ったら急に西条の香りが強くなった、発情が始まる、それがわかったけど、もう遅かった。

 大好きな西条の香りに包まれて、そのまま抱えられた。俺はもう何も考えられなくて、ギュッと捕まると、ふって笑う声が聞こえた。

 もうどうにでもなれ。

 そうして、はぁはぁと息を乱しながら、西条を離さなかった。
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