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本編
34、沙也加ちゃんと運命
翌日からも変わらず、司の家の車で一緒に登校して、それが周知のこととなった。周りはそわそわしだしたが、司のオーラが半端ないので誰も司には聞けないから俺に聞いてくる。
もちろん、付き合っているなんて言わない。
櫻井の件で助けてくれたアルファが司だったと言い、俺の心配をしてくれて送迎をしてくれているんだと言うしかなかった。だって、可愛くて儚いオメガではない俺と、アルファの頂点みたいな司が付き合っているなんて言えるわけがない、というか俺も付き合っているという自覚は無いし、承諾は俺としてはしてないから付き合っているかと言われたら付き合っていないと言っていいと思う。
そのまま流されそうになるも、俺はあれ以来キスも許さなかった。
自惚れではなければ、司は俺を好きなんだとわかる。でも何かが俺に歯止めをかける。それが何なのかそれからすぐに知ることになった。
「沙也加ちゃん久しぶりだね、大丈夫だった?」
「正君! 連絡できなくてごめんねっヒートだったの。ねえちょっとこっち来て!」
そういえば沙也加ちゃんがいないと思ってメールはしていたが、返事は無かった。ヒートにしては長かった気がする、だから体調でも崩したのかと思った。
可愛い沙也加ちゃんからの上目づかいで、人のいないところへとこっそり誘われた。同じオメガだけど、どきどきする。可愛い女の子ってやっぱりいいな。そんなことを思っていたら彼女はいきなり自分の長い髪をかき上げて、俺に細いうなじを見せてきた。
「えっ! それ」
「ふふっ、そう! 本当はここ人に見せたら彼に怒られちゃうんだけど、正君は私の大事な友達だからいいんだ! 実は運命の番に出会ったの! それでヒートに入って彼と番になった」
沙也加ちゃんのうなじには、くっきりと噛み後があった。
「えええぇっ! す……ごい、おめでとう」
「ふふふ、いいでしょ? 自分が運命の相手に出会えるなんて思ってもなかったよ、すごいんだよ。もうそこらのアルファなんかと違って、出会った瞬間細胞レベルでこの人って感じるの。彼も同じように感じて、そのままヒート起こして番」
彼女は興奮して思い出し、赤い顔をしていた。
――細胞レベルでこの人――
それなら俺だって感じた。だけど彼女と違うのは相手はそれを感じてくれなかったこと。
「正君? ごめん、こんな話聞きたくなかった? フェロモンだけで番になるなんて運命を知らない人にはわからない感覚だよね。でも人になんて言われようと私は彼に会った瞬間恋に落ちた、この人しかいないって思えたんだ」
わかるよ、俺はその運命を知っているから。とは言えなかった。
「ううん、素敵なことだよ。俺たちオメガはそういう風に一部の人間には見られてしまうかもしれないけど、俺は運命に愛された沙也加ちゃんが羨ましい、本当に良かったね」
「うん。ありがとう、正君ならそう言ってくれると思っていた」
彼女は緊張の糸がほどけたのか泣き出してしまった。俺は頭をポンポンって撫でた。
「で? その彼はどんな人なの?」
「うん! 今日ね、迎えにきてくれるから是非正君に会って欲しいんだ、十歳年上のね、小説家で入江響也さんって言うの。私あんまり小説読んでこなかったからこれから読もうと思って」
まじか!? あの入江響也!
「えっ! まじで!? その人こないだ凄い賞をとった作家じゃない?」
「そうなの? でも結構有名人らしいってのはなんとなく思った。担当さんに番ができたって言ったら世間が騒がしくなるとか言われたみたい。あっ、彼の名前内緒なんだった。秘密ね!」
「う、うん。言わないよ。でもそんな人が運命だったんだね、俺その人の小説好きで全部読んだ! 会えるなんて嬉しいな」
「……響也さんは、あげないよ?」
好きな人ができた女の子は、ますます可愛いな。
「ぷぷっ、何言っているの。俺男だよ、好きなのはあくまでも小説! その人の実物見たことないし、でも世界観がいいんだよね。沙也加ちゃんの大事な人だから、ファンだけどそこはお父さんとして俺もきちんと見極めていい?」
「ふふっ、まさ父さんに認めてもらえたら嬉しいな!」
そんなやりとりをして今日が始まった。そして放課後、司に用事があるから送りはいいと言って沙也加ちゃんと校門へと足早に行った。
校門に凄いイケメンが立っていて、若干目立っていた。あれが入江響也、メディアなどにはあまりでないから実際初めて見た。難しい言葉の言い回しを好む小説家なのでもっと気難しい、うっそうとした人なのかと勝手に思っていたが、これは西条と並ぶ美形ではないか!
沙也加ちゃんからふわっといい香りがしてきた、番に会って喜んでいるのだろう。俺も抑制剤飲んでなかったら司に対してこんな風に匂いを出してしまうのかな?
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