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第四章 番
76、番として 11
しおりを挟むそしてそのまま濃厚な土日になった。
先輩が俺を離したくない、そんな想いを受け止めて、勇吾さんの家には帰らなかった。
お仕置きと称して抱かれる予定が、ただの甘い番生活になった。仲直りのためにくっついて他愛もない話をして、流れでキスしたりしていたら、お互いにヒートアップしてきた。その時、先輩に抱いていいかって聞かれて、気づけば頷いていた。
翌日が休みだから先輩は遠慮せず俺を抱いた。抱いていいなら、次の日に響かないような抱き方はしないって宣言された。
番になって、自分で決めて学園に戻って一週間しか経っていないが、とても濃厚だった。抱かれた回数はまだほんの数回だったが、発情せずにここまで乱れたのはこの週末が初めてだった。
恥ずかしくて、気持ちよくて、ずっと蕩けていくような時間だった。俺の心が先輩を少しずつ受け入れてきたからか? 抱かれることを嫌だとは思わなかった。それほどに濃厚な二日間を、寮の部屋から出ず、ずっと過ごしていた。
週明けからは普段通りの学園生活が始まった。
俺の日常はどうなるのだろうと不安に感じたが、そんな不安は必要ないくらい変わらなかった。今まで通りの時間の流れとルーティンをこなす毎日。ただ夜だけは違う、一緒に風呂に入り、週に何回か先輩に抱かれている。
日々の中で、目が合えば自然と笑顔が溢れる。そして性的に誘う様な目をされると、たちまち俺からはオメガの甘い香りがでてしまう。その度に恥ずかしくて真っ赤になるから、それも先輩をその気にさせてしまうみたいだった。
そぅ、あれから何度も体を繋げている。
キスは恥ずかしくて毎回慣れなくて、赤くなってしまう。だが体を繋げる頃にはそんな羞恥心も消え、ひたすら快楽に溺れる。
先輩に誘われればそのまま流される。いや、拒否する時間もないくらいあっという間に裸になっているわけで、気づいたらもう喘いでいる。そんな感じであった。
未だ夢の中にいるような日々だった。でも番に抱かれるのは嫌ではないのだと思う。最近では自分から強請りそうになってしまうのを抑えるのが大変だ。
俺は、先輩を好きなわけではない。
自分はアルファに陵辱されているんだ、そう思い俺の心を守っている……そうするつもりだったのに、決して無理やりな行為はなくて、ひたすら愛されていると実感してしまう。だから凌辱されているなんてとても思えなくなっていた。
もっと抱かれていたいって思ってしまう、卑猥なオメガの心に苦しむ。
どうして俺は先輩を受け入れてしまっているんだろう。形だけの、期間限定の番としてこの人を騙し、本当は勇吾さんのお嫁さんになる日を望んでいる。
そう信じて、今を過ごしているはずなのに。
どんどん自分の心が汚れていく気がして、たまにどうしようもなくなる。そして俺の不安を感じると先輩は俺を抱き、俺は何かを考えるのをやめる、その繰り返しの日々だった。
今はまだいい。
だけど次の発情期がきたら俺はどうなる?
きっと前とは違って、俺からずっと求めるのではないか?
抱かれていても、先輩は気を使ってくれて前みたいに無茶をしてこない。だから理性で本能を抑えられているが、発情中は理性が効かないはずだ。
こんな緩い毎日の中でも俺はどうしようもなく、その日がくるのが怖くてたまらなかった。
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