ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第四章 番

75、番として 10 ※

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 先輩は俺を黙って見ていたけど、俺から行動に移した。早く終わらせてここから出たかったから。先輩のモノを服の上から手で擦った。先輩は驚いたのか、力が抜けていた。
 
 俺は膝立ちになり、先輩をベッドへ押し倒し先ほどと逆の姿勢になった。上から見下ろして先輩のベルトを外し、すでに緩くち上がっていた先輩のそれをじかに触り、口に含んだ。

「ふっ、うっ、ん……」
「良太……やめ、ろ。そんなこと……」

 先輩は苦悩に満ちた顔で下から俺を見上げている。確実に硬くなっている大きすぎるそれを、手で扱きながら裏筋から舐めたりしゃぶったりした。

 先輩は耐えていたけど、俺ははっきり言ってアルファくらい口ですぐにイカせられる。どれだけの肉棒を口にいれてきたかは数えて無いが、経験はそこら辺のオメガより数倍ある。

「良太! 離せ、」
「ふん、んっ、先輩も我慢しないで、イッてください、僕のお口気持ちいいでしょ? きちんと最後まで飲みきってあげます、ふ、んん ……」
「くっ!」

 先輩は驚きながらも必死に耐えていたが、俺の口淫で果てた。

「うううんんっ!」

 ごくん。と全て飲みきった。

 つがいだからか? 今まで嫌でたまらなかった男の精液なのに、たまらなく愛おしくて甘く痺れる味がした。もっと味わいたいと、出ている全てを飲みきった後も、必死に舐めて綺麗にした。

 そんな行為をしている俺を、先輩は息を切らしながら見ていた。まるでおぞましい生物でも見るように。俺は目の前の男を見て笑った。

「ご馳走様です、つがいだからかな? 今までで一番美味しかったですよ。先輩、そんな顔しないでください。オメガなんて精液を飲むの、慣れていますから。先輩だって散々オメガにさせてきたでしょ? これでも僕、上手いって評判だったんです」
「な、にを、言っている……。お前は俺が初めての相手だろう……」
「あぁ、後ろの話でしたらそうですよ。先輩、忘れました? ご自分で調べたんですよね?」
「……あぁ、だからお前は処女のはずだろう」

 俺は鼻で笑った。

「僕は早くに両親を亡くしたオメガですよ? 子供がどうやって生きてきたか、普通わかるでしょ? あぁ先輩みたいなお上品な人には想像もつかないか。僕はお爺様に救われるまで、いろんな人の沢山のペニスを口に咥えてきたんです。性奴隷オメガってやつですね。そんな生活していたから精液くらい簡単に飲めます」
「そん……な、調べがつかない数年はそんなことになっていたのか……」

 俺は、精一杯の淫乱オメガを演じた。

 いや、本当にそうだったかもしれない。だけど俺という人間に夢を見ている、目の前のかわいそうなアルファに現実を見せるため、笑って話を続けた。

「気持ち悪いですよね? だから言ったじゃないですか、僕はあなたには相応しくないって。僕はお爺様に保護されて、性的な支配から解放されたんです。それなのに今度はつがいの性奴隷とかっ」

 先輩は驚いている。 
 
 まさか、この俺が本物の淫乱だったとは思ってなかったんだろう。性的なことに疎いウブなオメガって思っていたな。

「僕は自由を知ってしまいました。だからもうあんな生活に戻るつもりはありません。お爺様なら奴隷扱いしないアルファを見つけてくれるはずだったんです。なのに、こんなことになった。たとえつがいを解消されて死ぬとしても、もう奴隷にはならない」
「俺は! お前を奴隷なんて思ってない!」

 この期に及んで、こいつは自分だけは正しいとか正当性を主張するのか? バカバカしい。

「そうですか? 脅して恐喝して、レイプする。それを僕は奴隷だと感じましたが、先輩の認識と僕の認識が違うようですね? どちらにしても、もう終わりです。こんな過去のある汚いオメガなんて忘れてください。僕はこれからお爺様のところへ行き、契約は終わったと伝えます」

 先輩が、がばっと俺を両腕でつかんでキスをしてきた。

 「んんっ」

 激しく舌まで絡められたキスをされ、唇離れると銀の糸がぷつっと切れた。それを俺は目で追って名残惜しそうに見てしまった。

「お前の過去は変えてやれないが、愛している。俺の想いが重すぎるのもわかっているが、お前の前では自制が効かないんだ。岩峰へ嫉妬が過ぎるのもすまないと思う。だけど! 良太が好きなんだ。怒って悪かった、だから、お願いだ」

 先輩は必死にそう言うと、そのまま俺の胸に自分の顔を埋めて抱きついてきた。

 そして呟いた。

「俺を捨てないで……」
 
 俺はあっけにとられた。散々、自分は汚れているって教えたのに。それなのに、捨てるなってどういうこと? アルファがオメガにすがるとか、あり得るの?

 俺の胸にすがる先輩を、俺はどうしていいかわからなかった。アルファがこんなこと。

 先輩の肩に手をあてた。

「貴方が僕を捨てるんです。汚いオメガを間違えてつがいにしてしまったから……それが一番正しい選択です」
「いやだ、良太を愛している。お前は汚くない。世界一綺麗だ、お前がいないなら俺は生きていられない」

 どうしてそうなるんだろう? そんなわけないだろう。

「先輩、どうかしている。やめてください、離して……」
「すまなかった。もう無理やりは絶対にしない。お前の過去の苦しみも俺は受け止めるから。お前を陵辱した奴らを探し出して殺してやる。もう誰かに屈服する必要もないし、他のアルファに抱かれる必要もない、愛している。どうかお願いだ。側にいて」
「もう過去については、お爺様が全て処理してくれたので大丈夫です。先輩を苦しめるために話したんじゃないです。僕を知ってもらって、僕を諦めてもらうためです」

 先輩が顔を起こして俺を見つめる。

 こんな男前なのに、可愛そうに。俺みたいなどうしようもない人間のせいで、この綺麗な人を俺は汚してしまった。そっと先輩の目元に手を当てた、そしたらその手を掴まれた。

「それを知っても、お前を諦めない! 絶対にだ」
「困ったな……」
「どうしたら許してくれる? 良太」

 そんな捨てられた犬みたいな目で見られても困るし、本当に困った。さっきまで諦めていた心がもうどうでも良くなってしまった。そもそも俺はなんで頑なに? いろいろなことが、わからなくなってきた。そして少しこのやり取りが面倒になった。

「はぁ、もういいです」

 俺は半ば諦めたような口調で言った。

「良太っ」

 先輩はさらに焦った声を出した。

「いや、違くって。僕も悪かったと思います。頭に血が上りすぎて、自分の価値観を押しつけてしまいました。学費については、つがいとして甘えさせてもらいます。もう転校は考えません」

 先輩の顔色が一気に明るくなったように感じた。ぱぁっと笑顔になった。なんだろう? この可愛い生き物は、本当にアルファ?

「良太! ありがとう! 愛している、嬉しいよ、俺の側で学園生活を送ってくれる?」
「こんな面倒臭いオメガでいいなら……」
「良太ならなんでもいい! ああ、好き。好きだ、愛してる」

 俺はあまりの豹変ぶりに、ふって笑ってしまった。さっきまであんなにシリアスな会話していたのに、一気に抜けた。
 
 今までの人生で、喧嘩をしてまで人と打ち解けるなんて無いからわからないけど、こうやって人と人は互いに無いものを理解しあって深めていくものなのかな?

「ふふ、先輩、アルファなのに、もうおかしくなってきちゃった。僕たちさっきまであんなに険悪だったのに」
「こうやって、お互いの思いを伝え合っていけば、何度でも俺たちはやり直せる。良太も辛いこと我慢しないで俺に言って? 良太の辛かった子供時代は俺なんかが何か言える訳じゃないけど、良太を知っていきたい。これからは何も辛いことが無いように俺が守っていく」

 そんなの、無理だよ。

 この単純なアルファは何も知らないから簡単に言ってのける。そう心の中で思ったが、もう反抗するのは面倒くさかった。だけど、なんとなくつがいだからか先輩の言うことは、俺の心を軽くした。

「先輩、ありがとうございます。僕の子供時代の出来事を許せるのなら、もう忘れてください。さっきは興奮して言っちゃったけど、本当は誰にも知られたくないし、思い出したくもない、だからこれ以上は聞かないでください。先輩が、まだ僕と一緒にいたいなら、忘れて、そして調べないで。無理ならここで終わりにしてください」
「終わりにしない。良太がそれを望むなら、俺はもうそのことには触れない。約束する」
「本当にいいですか? こんな過去のある僕をつがいにしていて」
「どんな過去でも受け入れる。これからは決してそんな辛い思いさせないから、守るから。だからもう過去を思い出さないくらい、俺に溺れて」

 先輩の香りに包まれて、俺も本当にあの辛い過去が忘れられそうな気がしてきた。
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