凌辱夫を溺愛ルートに導く方法

riiko

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外伝~凌辱と溺愛の分岐点~

1 凌辱夫編 ~物語が始まる前の真実~

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 僕の結婚は、国王陛下が決めた。すなわち王命だった。
 馴染んだ王都をひとり離れてこの辺境の地までやってきた。
 王国を守った英雄の辺境伯。嫁ぐ前に、僕は一度だけ第一王子に呼ばれた。ガリアード・オスニアンは凶悪な人間で容赦なく凌辱する人だと教えられた。巷では英雄と言われるが、実際は性癖の歪んだ恐ろしい男だと聞いていた。王子が言うなら間違いないのだろうけど、僕にこの結婚を断る権利はない。
 そのとき、第一王子から手鏡をいただいた。この魔道具は邪な気を浄化してくれる特別なものなので、大事に寝室に置いて、いつでも見えるようにと言われた。そうすれば鏡の魔法でリリアンをいつまでも美しく守ってくれるお守りだと。彼は煩い人間を嫌うので、何も話さずにいれば暴力を振るわれないと事前に言われていた。だから初めての挨拶のとき、僕は黙ってしまった。本当は挨拶くらいしたかったけれど、あまりに大きな男性で、威圧感が凄すぎて緊張して声が出なかった。
 そうしたら、とても低くて怖い声で挨拶されただけだった。
 その声に大げさに体がびくっとなった僕の印象は、とても悪かったかもしれない。あのときの挨拶を間違えなければ、もっと普通に話ができたかもしれない。
 今となってはわからないけれど……。後に初めから態度が酷かったと言われたから、第一印象の時点で僕に悪いところがあったのだろう。
 医者による体のチェックは、言われるままに裸になったら、尻の孔に指を入れられた。男性同士の結婚は尻を広げておく必要がから耐えろと医者は言うけれど、僕は初めての痛みに耐えられずにずっと泣いていた。
 傷がつかないようにと、なぜか孔に舌を入れて医者が舐めてきた。
 気持ち悪くて仕方なかったけれど、僕は何も知らない公爵令息で、結婚をする前の儀式だと言われたら従うしかない。それでも悲しくて恥ずかしくて気持ち悪くてずっと泣いていた。
 しばらくすると、粘着性のある水を塗られると痒くなり、もっと擦ってもらわないと痒みでどうにかなりそうだった。そこを指で慣らされた後、卑猥な男性器のような形のモノを孔に入れられる。
「いやぁぁぁ!」
 痛いのに気持ちいい、でも痒い。医者がする行為に泣いて叫んでいた。
「ふふ、可愛らしい。性に疎いから仕方ないですね。ヒクヒクとしているリリアン様のココは愛らしい。きっと辺境伯も気に入ってくださるでしょう」
「や、やだっ、やめてくださいっ。いやあ、あっ痛い、痛い、もう抜いてぇ!」
 初夜前に疑似体験をしておけば、男のモノがすんなり挿入できてすぐに夜は終わる。そう言われて、僕は我慢してそれを受け入れた。痒くて痛くてムズムズして苦しくて、とにかく辛いしかなかった。
「痒い、ああ、いやぁ、痛いっ」
「リリアン様。痒いなら私が触ってあげますからね」
 そう言うと、先ほどまで入っていた男性器のようなモノは抜かれて、医者は指でまた責めてきた。
「あ、ああ! そこ、だめっ」
「ああ、ここですね。リリアン様の痒いところは、ほら、手なら繊細に触れる」
「あ、やだっ、やだっ、もう嫌だァ! 許してくださいっ、ひっく、ひっ」
 僕があまりに泣くと、医者は感度を上げればすぐに痛くなくなると言い、僕の小さくなっていた男根を口に入れてじゅぼじゅぼと出し入れしていた。気持ちが悪くてたまらなかったけれど、疲れから抵抗をする力がなくなった。
 医者は僕の男根を美味しそうにしゃぶっていたが、それを泣きながら耐えた。
 前を医者に舐められて、後ろはまたも大きくて固い男根の無機質なモノが挿入されている。どうして、僕はどうしてこんなことになっているの? 結婚ってこんなに苦しいことなの? 悲しいし、苦しいし、気持ち悪い。早くこの時間が終わってと思っていた。
 しばらくすると医者から解放された。そのときには僕の心がどこか遠くへ行っていた。疼く尻、悲しみを超えた心。人からこんな侮辱的な行為をされたのは初めてで、この後は放心状態のまま部屋でずっと泣いていた。辺境伯からの食事の誘いを断り、翌日の結婚式では泣きはらした顔と痛む尻のまま出席した。
 宰相として忙しい父が、この日だけ都合をつけて王都から駆けつけてくれた。王都で大きな案件を抱えていて、すぐに戻らなければならない父に泣いて縋った。
 父は辛そうな顔をするも、王命を廃止できるように精一杯頼むので少しだけ耐えなさいと言って、王都へ帰っていた。

 ――その日の夜は、一生忘れない。

 旦那様となったオスニアン辺境伯はなぜだか初めから怒っていて、僕は怖くて逃げだした。だけど簡単につかまってしまった。王命なので、僕たちが交わらなければいけないと言われ、泣きながら僕はずっと耐えた。医者にいたぶられた腫れた尻を見て、淫乱だと罵られた。僕は何も言えず、医者よりも酷い行為に耐え続けた。
 終わらない初夜。翌日の昼まで、何度も大きな旦那様の男根を挿入された。僕ははじめての行為にずっと泣いていた。
 オスニアン家従者のリックが、初夜後の体のケアをしてくれたけれど、僕は泣きながら何を言われていても聞こえなかった。きっと慰めてくれていたかもしれない。僕の心はもう何も受け入れられなかった。  
 その夜から熱を出して数日寝込んだ。
 熱が引くと、旦那様が会いにきた。僕は初体験の痛みと恐怖から、彼に対して怯えてしまった。旦那様は、それでもまた僕を抱いた。
 彼自身も僕とどう接していいのかわからないようだったけれど、僕だってわからない。日中、僕は疲れ切って部屋から出られなかった。だから、彼と夜にベッドを共にするだけの生活だった。
 それが何度も続いたある日、自分の能力である治癒の魔法を尻にかけてみたら、尻の痛みが治まった。それからは閨が終わった翌朝、旦那様が出ていったのを確かめてからこっそりその魔法を自身の体に施していた。
 この部屋には夜に旦那様が僕を抱きにくる以外、掃除や給仕にくるのはリックという僕の一つ上の男の子だけだった。いつの間にかリックだけが僕の話し相手として心の支えになっていった。
 姉のような存在の、公爵家からついてきてくれた侍女ジュリは、ここに来たその日のうちに公爵家に帰されてしまった。辺境伯にも従者はいるから必要ないと言われたらそれに逆らえず、ジュリと涙ながらにお別れをした。ジュリは元気にしているかな?
 ――僕はいったい、いつまでこんなことをするのだろう。
 妻というものは、この行為をするだけに存在するものなのだろうか? 
 初めて嫁いだ身としては、何が正解なのかわからない。実家の母を思い出してみても、父とそんな関係のようには思えなかった。兄も、義姉とそんな夜を過ごしているように見えない。だって父も母も、兄も義姉も、僕の前でいつも楽しそうに笑っているし、仲良くしている。なにより家の外に一緒に出かけている。
 旦那様が僕に笑いかけたことがない。
 どうして、僕だけこんな生活なの? 何がいけなかったの。誰か、教えて……
 感情をどこかに置いてこられたらいいのに……まだ僕は夢を見る。いつか愛される夢を。
 部屋の窓から見る外の世界は、皆楽しそうだった。小さな女の子がよく僕に手を振ってくれる。毎日の楽しみは、彼女に微笑みかけることだけだった。そうしなければ、僕は笑うことを忘れてしまうと思って必死だった。この屋敷の人のように、笑って過ごす生活をしたい。
 彼に優しくされたい。愛されてみたい。それでもいつも、その夢は儚く散る。
 いくつの夜をこの部屋で過ごしただろう。
 旦那様の部屋から見るお庭は素敵で、少し心が落ち着く。だけど僕は、あの場所に降りる日は来ない。植物を、花を、もう触る日も来ないかもしれない。
 ずっと、誰か助けてって、心の中で叫んでいる。
 僕がずっと泣いて過ごし、辺境伯夫人としての仕事もしないことに怒った旦那様から、手紙を出すことは禁止されていた。里心を忘れてこの地に慣れろと言うけれど、いつまでたっても馴染めないでいた。部屋の掃除に来るリックは、そんな僕に兄からの手紙をこっそり持ってきてくれた。
 旦那様に見つかると怒られるから、読んだら必ず燃やしてくれと言われた。旦那様は僕が第一王子の手先だと思っている。リックはそんなことないと、伝えてくれているらしいけど、僕の態度が悪すぎて信じてもらえないのだ。
 夫になびかない妻。だって、ずっと僕を抱く夫に、どうやって誤解だと伝えればいいのかわからない。彼とは会話がない。ただひたすら、彼は僕を抱くだけ。
 兄の手紙を読むたびに涙が止まらなかった。兄は今の僕を知らないから、辺境伯には愛されているか? 使用人は優しいか? 手紙をたまには送ってほしいと書いてあった。最後には必ず「愛している」という言葉。
 兄だけが、兄の手紙だけが、僕が愛されていることを知るたった一つのモノだった。
 だけど、手紙だけでは僕の心を保つにはとても頼りなく、兄が助けに来てくれたとき、もう誰かに縋ることを止めた。それは僕の人生を止めた瞬間だった。
 兄は第一王子から、僕が夫に凌辱されていると聞いたと言った。
 でもなぜ? なぜ第一王子は僕が夫に虐げられていると知ったの? 兄は、気まずそうに理由を話した。夫から一歩的に抱かれている僕たちの閨を、鏡を通じて第一王子に見せられたそうだ。それを見た兄は愛し合う二人の姿ではないと察した。僕があの日に頂いた手鏡は、王家のある部屋の鏡と繋がり、手鏡に映るものをそのまま映し出す魔道具らしい。
 僕は嵌められたんだ……瞬時にそう思った。
 その話を聞いて、兄と夫との戦いは作られたモノのように感じた。僕を溺愛する兄なら、僕を助けてくれる。公爵家の嫡男が動くほどのことをした辺境伯。その事実があれば世間の風向きが変わる。
 そして夫を陥れたい人物、それは――
 僕のことを政治に疎いと世間は思っているだろうけれど、僕だって宰相の息子である公爵令息としてそれなりの教育は受けてきた。だからわかった。第二王子と仲がいい夫は、僕と同じで争いの理由の一つにされたんだと。
 二人の王子は、いまだ決まらない王太子の座を競いあっている。
 第一王子は、その地位を得るために僕という宰相の息子を使ったのだろう。何も知らない僕を使って辺境伯を陥れ、その友人の第二王子まで地位を脅かす何かを、第一王子は考えたのかもしれない。
 もしかしたら第一王子は、僕を駒として使うために国王陛下に辺境伯へ嫁ぐように助言したのかもしれない。
 僕の地位は高いので、嫁へ行く先を父がかなり厳選していた。
 そんなとき、この辺境伯は国を救った英雄として時の人だったこともあり、褒美として僕がこの人に嫁ぐことになった。表向きの王命の理由は、国を救った英雄への褒美として”王国の花”と呼ばれた僕、公爵令息だった。
 僕は駒にされた。
 僕はそのためだけに、この辛い生活を強いられてきた。
 僕は、僕は……もう無理だった。

 兄が便りのない僕を心配して救いに来た。
 夫に刃を向けたとき、チャンスだと思った。
 僕は自分で死ぬ覚悟が今までなかったし、そういう発想もなかった。だから今日まで夫の行為に耐えてきたけれど、もう限界だった。
 もしここで兄が負けたら? 今より酷い凌辱が待っているんじゃないか。それにもし兄が勝っても、僕のナケナシのプライドが、家に帰ることすら選択できなくなっていた。
 早く楽になりたい。
 僕は頑張った。立派に政略結婚をして、国王陛下のご意向に従った。
 第一王子は夫を陥れて、そして第二王子の荒を探して自分の地位を確実なものとし、王太子に任命されるのを待っているのだろう。
 僕は知らなかったとはいえ、立派に彼の策略の駒として働いた。夫は閨で散々、僕が第一王子の愛人だと言って責め立ててきた。何度否定しても聞き入れてもらえなかった。
 だから僕はもう夫が疑うことに、否定をしなくなっていた。きっと、そういうふうに仕組まれたんだと思った。
 もういい。
 夫をかばうために、自ら兄の剣に飛び込んだ。ううん、本当はかばう理由はないし、そんなことをしなくても、強い辺境伯に兄の刃が刺さるわけがないことを僕は知っていた。だから僕はあえて夫をかばった。
 僕の腹に刺さる兄の剣を見て笑った。やっと楽になれる。兄は泣いている。夫が見たことがないくらい焦った顔をしていた。
 せめて僕の死が無駄にならないように、僕は言った。
 一人だけ許せない人がいる。絶対に許せない!
「お兄様、先立つ不孝をお許しください。そして僕の死を無駄にしないで。僕は誰も憎んでないし、これでいいと思っております。だからもう無駄な戦いはやめて……両家を憎しみに追いやった第一王子殿下を打ち破ってください」
 兄も夫も泣いていた。
 旦那様の涙、初めて見た。
 僕をあんな風に扱っておきながら、こんな涙を流すのか。楽しくて大好きなおもちゃがなくなって、子どものように絶望したのだろう。僕はその涙を見て、心から安心した。
 それほどまでに執着したおもちゃを、僕自身の手で壊してやったんだから。これは僕の復讐だ。僕に酷い扱いをした夫への復讐。
 僕の復讐は、僕の命という代償を経て成し遂げられた。
 次、生まれ変わるなら誰かの道具として使われるにしても、自主的に動ける人になりたい。できることなら騎士として戦えるような強さと折れない心情を持つような、心の強い人になりたい。  
 身分などいらない! 誰かに縋って生きていくのではなくて、たとえどんな苦難の道でも自分自身で勝ち取っていけるような、強い人になりたい。
 一人で生き抜く強さを僕にください。
 ――それでも、一度でいいから愛されたかった。
 夫の笑顔を見てみたかった。僕を抱く夫が、優しく抱いてくれる日を夢見てきた。最後にふとそんなことを願って“王国の花”と言われた儚い公爵令息だった僕は、命を散らした。
 最後まで夫に愛されなかった僕は、そこで息を引き取った。


 ~凌辱編 fin~


 
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