『貴方』に『別れの挨拶』はまだ言えない

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時計

今日も時計の針はチクタクと動いています。

お気に入りの懐中時計。

どんな『刻』（トキ）も私を見守ってくれています。

そんなはずでした。

私の懐中時計の針は止まってしまいました。

時計を止めてしまったのは私自身かもしれません。

過去を過去だと受け止めきれませんでした。

明日が来るのもこわくて。

毎日が不安でした。

「このままずっと夜だったらいいのに」。

私は朝日を浴びるのが本当にこわかった。

私には朝日が眩しすぎました。

目を瞑って、暗くなったら目を開けての繰り返しでした。

何年経ったのでしょう。

気づいたらお気に入りの懐中時計は錆びてしまいました。

動く気配も感じません。

それでもどうしても手元に残したかったのです。

『あなた』と『同じ刻（トキ）』を生きているから。

『あなた』と話していて、

「カチリ」。


時計の歯車が再び動き出した『音』を聴きました。

それからは『あなた』と『私』はたくさんお話をしました。

ときには夜が明けるまで。

その頃、『私』は、夜明けがこわくなくなっていました。

「ようやく、『私たち』の時計の針が動き出したようですね」

うっすらと微笑みを浮かべた『あなた』はとても『綺麗』でした。