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王弟殿下との甘い朝
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セイル・ディエラ。
ディエラ侯爵家の次男にして、オメガ。
母は現皇后陛下の妹。
幼い頃から王宮に出入りし、王宮内には僕の部屋もある。
さまざまな教育が終了してからは、日中は王太子殿下の政務をお手伝いし、時折、王弟殿下の薬学研究にも協力している。
王宮内の誰もが、僕を大事にしてくれていた。
今は肩書が一つ加わり、王太子殿下の婚約者。
それが、僕。
そして、僕は……どうしようもないビッチだ。
……と、自分では思っている。
はじめは間違いなく、王太子殿下だけだった。
金の髪に、深い緑の瞳。
その目に見つめられるたび、世界の中心に僕がいる気がした。
けれど、いつの頃からか──同じ顔をした弟にも、同じように囁かれ、触れられるようになっていた。
殿下じゃない、と何度も思った。
でも、瞳の色も、手の温度も、同じだった。
気づけば僕は、拒めずにそのまま囚われていた。
だって、二人とも──僕に、優しいんだ。
愛に飢えていたわけではないと思う。
僕の世界はずっと優しさで構築されていたから。
虐げられたことも、蔑まれたこともない。
婚約が決まった時でさえ、予定調和のように誰もが頷いた。
なのに、それなのに。僕は二人の間で溺れていた。
「おはよう、セイル。ちゃんと眠れた?」
耳元で甘く囁かれて、思わず目を伏せる。
喉の奥が、ひりついていた。
「……うん。ちょっと、喉が乾いてるだけ」
「そっか。じゃあ、はい、お水。あと、今日の分の薬もね」
差し出されたグラスと、小瓶。
薄い桃色の液体が揺れるガラス越しに、シリオン王弟殿下の笑った顔が、にじんで見えた。
熱がまだ、引ききっていない。
喉も、腰も、うずいているのに。
「昨夜のは……ちょっと、やりすぎだったかな」
シリオンがそう言いながら僕の髪を撫でる。
「ううん。大丈夫……僕も、シリオンが欲しかった……し」
そう言うと、彼は微笑みながら僕の首元に指を伸ばした。
肌の柔らかいところをなぞって、小さな吐息が漏れる。
──そこには、紅い痕がひとつ、
いや、ふたつ。重なるように、口づけの跡があった。
「ごめんね……シリオン」
小さくそう呟いた僕の髪を、彼はもう一度と撫でて、いつものように笑った。
「なにが?」
「……ううん。なんでもない」
こういうときは、とてつもない罪悪感に襲われる。
昨日の朝、同じようにキスをくれたのは、アルセインだった。
優しくて、冷たくて、真面目で、僕をいつも大切にしてくれる人。
──その夜に、僕は、弟のシリオンに抱かれていた。
身体の奥まで熱くなって、喉がひりつくほど名前を呼ばされて、最後には自分でも何を言ってるのかわからなくなった。
それでも。
どちらにも、どうしても抗えなかった。
二人とも、僕のことを「愛してる」って言ってくれるから。
優しくしてくれるから。
……だから、僕はきっと、ビッチなんだと思う。
とても酷く、醜い。
「今日も一日、頑張ってね。兄上の婚約者さん」
シリオンが、そっと僕の額に口づける。
何もかも、赦されるような音だった。
ディエラ侯爵家の次男にして、オメガ。
母は現皇后陛下の妹。
幼い頃から王宮に出入りし、王宮内には僕の部屋もある。
さまざまな教育が終了してからは、日中は王太子殿下の政務をお手伝いし、時折、王弟殿下の薬学研究にも協力している。
王宮内の誰もが、僕を大事にしてくれていた。
今は肩書が一つ加わり、王太子殿下の婚約者。
それが、僕。
そして、僕は……どうしようもないビッチだ。
……と、自分では思っている。
はじめは間違いなく、王太子殿下だけだった。
金の髪に、深い緑の瞳。
その目に見つめられるたび、世界の中心に僕がいる気がした。
けれど、いつの頃からか──同じ顔をした弟にも、同じように囁かれ、触れられるようになっていた。
殿下じゃない、と何度も思った。
でも、瞳の色も、手の温度も、同じだった。
気づけば僕は、拒めずにそのまま囚われていた。
だって、二人とも──僕に、優しいんだ。
愛に飢えていたわけではないと思う。
僕の世界はずっと優しさで構築されていたから。
虐げられたことも、蔑まれたこともない。
婚約が決まった時でさえ、予定調和のように誰もが頷いた。
なのに、それなのに。僕は二人の間で溺れていた。
「おはよう、セイル。ちゃんと眠れた?」
耳元で甘く囁かれて、思わず目を伏せる。
喉の奥が、ひりついていた。
「……うん。ちょっと、喉が乾いてるだけ」
「そっか。じゃあ、はい、お水。あと、今日の分の薬もね」
差し出されたグラスと、小瓶。
薄い桃色の液体が揺れるガラス越しに、シリオン王弟殿下の笑った顔が、にじんで見えた。
熱がまだ、引ききっていない。
喉も、腰も、うずいているのに。
「昨夜のは……ちょっと、やりすぎだったかな」
シリオンがそう言いながら僕の髪を撫でる。
「ううん。大丈夫……僕も、シリオンが欲しかった……し」
そう言うと、彼は微笑みながら僕の首元に指を伸ばした。
肌の柔らかいところをなぞって、小さな吐息が漏れる。
──そこには、紅い痕がひとつ、
いや、ふたつ。重なるように、口づけの跡があった。
「ごめんね……シリオン」
小さくそう呟いた僕の髪を、彼はもう一度と撫でて、いつものように笑った。
「なにが?」
「……ううん。なんでもない」
こういうときは、とてつもない罪悪感に襲われる。
昨日の朝、同じようにキスをくれたのは、アルセインだった。
優しくて、冷たくて、真面目で、僕をいつも大切にしてくれる人。
──その夜に、僕は、弟のシリオンに抱かれていた。
身体の奥まで熱くなって、喉がひりつくほど名前を呼ばされて、最後には自分でも何を言ってるのかわからなくなった。
それでも。
どちらにも、どうしても抗えなかった。
二人とも、僕のことを「愛してる」って言ってくれるから。
優しくしてくれるから。
……だから、僕はきっと、ビッチなんだと思う。
とても酷く、醜い。
「今日も一日、頑張ってね。兄上の婚約者さん」
シリオンが、そっと僕の額に口づける。
何もかも、赦されるような音だった。
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