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第22話『紫騎士団の奇襲』
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それは突然だった。
午前の補給見回りから戻ろうとしていたとき、砦中に響き渡った警鐘──。
「東方林道より、紫騎士団!奇襲──敵襲!!」
その声に、空気が一変する。
備えのある者も、ない者も、とにかく動き出した。
僕は、心臓が跳ね上がるのを感じながら、砦の中庭を駆けていた。
何が起きているのか、どこまでが本当なのか、わからないまま──でも、走らなきゃいけなかった。
(なんで、こんな急に!?)
※
指揮所はすでに戦時体制。
戦術用の地図に幻光が重ねられ、報告魔石がひっきりなしに鳴っていた。
「レン、補給班からの搬送指示と戦況連絡、優先で頼む!」
「は、はい! 了解!」
手が震えた。でも、止めている時間はなかった。
書状を転写盤に乗せて複写し、次の部隊に回す。
焦ってミスりかけた僕の手元に、テオさんの声が飛ぶ。
「落ち着け。数秒の差で命は左右されない。正確に」
「……はい!」
冷や汗をぬぐって、僕は手を動かし続けた。
けれど、周囲はざわついていた。
それは、戦の緊張というより──「信じがたい何か」を突きつけられた空気だった。
「……紫騎士団って、そんことあるのかよ」
「なんでこっちに……何かの誤報じゃ……」
「味方のはずだろ……!?」
「紫が敵って、どういう──」
声にならない声が、あちこちで漏れていた。
「……どうして? 紫騎士団は、仲間のはずじゃ……」
僕も思わず呟いていた。
その時、指揮卓の奥に立つイーサン団長が静かに言った。
「現実を見ろ。旗は偽らない」
淡々と、それでいて断固とした声。
テオさんもすぐに続けた。
「情報工作の可能性もある。だが事実として、砦を囲もうとしているのは“味方の顔”をした軍勢だ。対応するしかない」
その冷静さが逆に、事態の深刻さを際立たせていた。
僕は手を止めかけて──それでもまた動かし始める。
(……戦うんだ、紫騎士団と)
言葉にしてもまだ信じられなかった。
でも、それは現実だった。
※
やがて、最前線に出る部隊が次々と名を呼ばれ──その中に、あの名前もあった。
「第二陣先鋒、ロナルド・ルース。出陣!」
(……え?)
最初、耳を疑った。
ルースさん? ロナルドさんと一緒に、最前線……?
隊列の中に立つルースさんの姿が見えた。
軽く片手を挙げて、こっちを見て笑っている。
いつも通りの笑顔だった。
でも、なぜか──心に引っかかった。
(……なんか、違う)
装備がいつもより軽い?いや、そうじゃない。
腰に下げた魔具──それ、黒騎士団の標準装備じゃない……?
(いやいやいや、そんな──)
自分の思考を、慌てて止めた。
(……仲間だよ? ルースさんは、ずっとここで一緒にやってきた人で。おかしなことなんて、ない。僕が知らないものだって多い)
そんな考えを振り払うように、僕は目を閉じた。
ルースさんが前線に消えていく。
そして、ほんのわずかな違和感だけが、胸に刺さったままだった。
———————
投稿は毎日21:30です。
リアクションやコメントいただけると嬉しいです♪
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午前の補給見回りから戻ろうとしていたとき、砦中に響き渡った警鐘──。
「東方林道より、紫騎士団!奇襲──敵襲!!」
その声に、空気が一変する。
備えのある者も、ない者も、とにかく動き出した。
僕は、心臓が跳ね上がるのを感じながら、砦の中庭を駆けていた。
何が起きているのか、どこまでが本当なのか、わからないまま──でも、走らなきゃいけなかった。
(なんで、こんな急に!?)
※
指揮所はすでに戦時体制。
戦術用の地図に幻光が重ねられ、報告魔石がひっきりなしに鳴っていた。
「レン、補給班からの搬送指示と戦況連絡、優先で頼む!」
「は、はい! 了解!」
手が震えた。でも、止めている時間はなかった。
書状を転写盤に乗せて複写し、次の部隊に回す。
焦ってミスりかけた僕の手元に、テオさんの声が飛ぶ。
「落ち着け。数秒の差で命は左右されない。正確に」
「……はい!」
冷や汗をぬぐって、僕は手を動かし続けた。
けれど、周囲はざわついていた。
それは、戦の緊張というより──「信じがたい何か」を突きつけられた空気だった。
「……紫騎士団って、そんことあるのかよ」
「なんでこっちに……何かの誤報じゃ……」
「味方のはずだろ……!?」
「紫が敵って、どういう──」
声にならない声が、あちこちで漏れていた。
「……どうして? 紫騎士団は、仲間のはずじゃ……」
僕も思わず呟いていた。
その時、指揮卓の奥に立つイーサン団長が静かに言った。
「現実を見ろ。旗は偽らない」
淡々と、それでいて断固とした声。
テオさんもすぐに続けた。
「情報工作の可能性もある。だが事実として、砦を囲もうとしているのは“味方の顔”をした軍勢だ。対応するしかない」
その冷静さが逆に、事態の深刻さを際立たせていた。
僕は手を止めかけて──それでもまた動かし始める。
(……戦うんだ、紫騎士団と)
言葉にしてもまだ信じられなかった。
でも、それは現実だった。
※
やがて、最前線に出る部隊が次々と名を呼ばれ──その中に、あの名前もあった。
「第二陣先鋒、ロナルド・ルース。出陣!」
(……え?)
最初、耳を疑った。
ルースさん? ロナルドさんと一緒に、最前線……?
隊列の中に立つルースさんの姿が見えた。
軽く片手を挙げて、こっちを見て笑っている。
いつも通りの笑顔だった。
でも、なぜか──心に引っかかった。
(……なんか、違う)
装備がいつもより軽い?いや、そうじゃない。
腰に下げた魔具──それ、黒騎士団の標準装備じゃない……?
(いやいやいや、そんな──)
自分の思考を、慌てて止めた。
(……仲間だよ? ルースさんは、ずっとここで一緒にやってきた人で。おかしなことなんて、ない。僕が知らないものだって多い)
そんな考えを振り払うように、僕は目を閉じた。
ルースさんが前線に消えていく。
そして、ほんのわずかな違和感だけが、胸に刺さったままだった。
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