異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし

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第22話『紫騎士団の奇襲』

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それは突然だった。

午前の補給見回りから戻ろうとしていたとき、砦中に響き渡った警鐘──。

「東方林道より、紫騎士団!奇襲──敵襲!!」

その声に、空気が一変する。
備えのある者も、ない者も、とにかく動き出した。

僕は、心臓が跳ね上がるのを感じながら、砦の中庭を駆けていた。
何が起きているのか、どこまでが本当なのか、わからないまま──でも、走らなきゃいけなかった。

(なんで、こんな急に!?)



指揮所はすでに戦時体制。
戦術用の地図に幻光が重ねられ、報告魔石がひっきりなしに鳴っていた。

「レン、補給班からの搬送指示と戦況連絡、優先で頼む!」
「は、はい! 了解!」

手が震えた。でも、止めている時間はなかった。
書状を転写盤に乗せて複写し、次の部隊に回す。
焦ってミスりかけた僕の手元に、テオさんの声が飛ぶ。

「落ち着け。数秒の差で命は左右されない。正確に」
「……はい!」

冷や汗をぬぐって、僕は手を動かし続けた。

けれど、周囲はざわついていた。
それは、戦の緊張というより──「信じがたい何か」を突きつけられた空気だった。

「……紫騎士団って、そんことあるのかよ」
「なんでこっちに……何かの誤報じゃ……」
「味方のはずだろ……!?」
「紫が敵って、どういう──」

声にならない声が、あちこちで漏れていた。

「……どうして? 紫騎士団は、仲間のはずじゃ……」

僕も思わず呟いていた。
その時、指揮卓の奥に立つイーサン団長が静かに言った。

「現実を見ろ。旗は偽らない」

淡々と、それでいて断固とした声。

テオさんもすぐに続けた。

「情報工作の可能性もある。だが事実として、砦を囲もうとしているのは“味方の顔”をした軍勢だ。対応するしかない」

その冷静さが逆に、事態の深刻さを際立たせていた。

僕は手を止めかけて──それでもまた動かし始める。

(……戦うんだ、紫騎士団と)

言葉にしてもまだ信じられなかった。
でも、それは現実だった。



やがて、最前線に出る部隊が次々と名を呼ばれ──その中に、あの名前もあった。

「第二陣先鋒、ロナルド・ルース。出陣!」

(……え?)

最初、耳を疑った。
ルースさん? ロナルドさんと一緒に、最前線……?

隊列の中に立つルースさんの姿が見えた。
軽く片手を挙げて、こっちを見て笑っている。

いつも通りの笑顔だった。
でも、なぜか──心に引っかかった。

(……なんか、違う)

装備がいつもより軽い?いや、そうじゃない。
腰に下げた魔具──それ、黒騎士団の標準装備じゃない……?

(いやいやいや、そんな──)

自分の思考を、慌てて止めた。

(……仲間だよ? ルースさんは、ずっとここで一緒にやってきた人で。おかしなことなんて、ない。僕が知らないものだって多い)

そんな考えを振り払うように、僕は目を閉じた。

ルースさんが前線に消えていく。
そして、ほんのわずかな違和感だけが、胸に刺さったままだった。



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