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第35話『炎の後に立つもの(後編)』
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叫びと共に、ロナルドさんが僕をかばうように飛び出した。
咄嗟に後ろへ引き戻される僕。その目の前で、二振りの剣がぶつかり、火花が激しく散った。
「っ……!」
ロナルドさんの剣が、ゼノスの刃を真正面から受け止めていた。
鍔迫り合いの火花の中、その鋭い眼差しが、真っ直ぐゼノスを見据えている。
「レンに指一本でも触れてみろ。次はお前の喉を掻っ切る……!」
静かな声。けれど、全身を貫くような圧があった。
ゼノスの顔がわずかに歪む。だが、それでも剣を引こうとはしなかった。
ロナルドさんの脚が、力強く地を蹴る。
「二度と、誰も貶めさせない!」
振るわれた剣は、音を立てて空気を裂いた。
鋼が打ち合わされる衝撃音──そして、ゼノスの身体がわずかに後ろへ傾ぐ。
それは、彼の守りが明らかに揺らいだ証だった。
その隙を見逃す人など、ここにはいなかった。
「今だ!」
イーサン団長が一歩踏み込み、斜めからゼノスの防御を砕くように斬り込んだ。
ルースさんも、血の滲む腕を構えたまま、最後の一撃を叩き込むように突き進む。
三方向から交錯する剣の気配。
ゼノスの姿が、剣閃に包まれるようにして揺れ──
「……ぐっ、あああああああああッ!」
呻くような怒声と共に、ゼノス・アーチはついに地に膝をついた。
その手から剣が滑り落ち、地面に鈍い音を立てて転がる。
鋭く、緊張した空気が、ひと息に崩れる。
その場の全員が、ただ静かに、彼を見つめていた。
僕も──声もなく、その光景を見つめていた。
イーサン団長が、剣を収めて一歩近づく。
ゼノスはその顔を見上げ、唇を震わせて何か言おうとした……けれど、声にはならなかった。
そして、そのまま──静かに、崩れ落ちた。
その瞬間、彼の胸元から、何かが転がり出る。
小さな金縁の、銀の指輪だった。
かつて、婚約の証として贈られたもの。
時を経ても曇らぬその輝きが、砦の朝光をかすかに反射していた。
テオさんが、ゆっくりと歩み出る。
転がる指輪を拾い上げ、ひとつ息を吐いた。
「……どこで道を違えたんでしょうね、私たちは」
その声は、誰に向けたわけでもない。
ただ過去を悼むような、どこか哀しみに似た静けさがあった。
そして、テオさんはその指輪を、倒れ伏したゼノスの手にそっと握らせる。
もう応えのない手を、ほんの一瞬だけ包み込んで──やがて、立ち上がった。
「さようなら、ゼノス・アーチ」
それ以上、何も言わなかった。
誰も動かなかった。
いや、動けなかったのだ。
砦を包んでいた緊張は、ようやく、ほんのわずかだけ緩んだ。
それでも、まだ誰も勝利を叫ばない。
終わりが近づいたことを感じながらも、すべてはまだ途中だと、そうわかっていたから。
砦の外から、角笛の音が響く。
それは──王都の軍使の到着を告げる、長い、低い音だった。
———————
投稿は毎日21:30です。
リアクションやコメントいただけると嬉しいです♪
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咄嗟に後ろへ引き戻される僕。その目の前で、二振りの剣がぶつかり、火花が激しく散った。
「っ……!」
ロナルドさんの剣が、ゼノスの刃を真正面から受け止めていた。
鍔迫り合いの火花の中、その鋭い眼差しが、真っ直ぐゼノスを見据えている。
「レンに指一本でも触れてみろ。次はお前の喉を掻っ切る……!」
静かな声。けれど、全身を貫くような圧があった。
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「二度と、誰も貶めさせない!」
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ゼノスの姿が、剣閃に包まれるようにして揺れ──
「……ぐっ、あああああああああッ!」
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そして、そのまま──静かに、崩れ落ちた。
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誰も動かなかった。
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それでも、まだ誰も勝利を叫ばない。
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砦の外から、角笛の音が響く。
それは──王都の軍使の到着を告げる、長い、低い音だった。
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