誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界

Greis

文字の大きさ
6 / 348

第6話

しおりを挟む
 玄関口でイザベラ嬢とクララ嬢に挨拶をした後、あれよあれよという間に二人に挟まれ、抵抗する間もないままに、イザベラ嬢の私室に連行されてしまった。その途中で、カノッサ公爵その人、その奥様であろう公爵夫人、イザベラ嬢のお兄さんと思われる方々が見えた。カノッサ公爵やお兄さん方は、娘に付いた悪い虫を見るかの様に俺をギロリと睨みつけ、公爵夫人に関しては、ニコニコと微笑んだまま俺を見ていて、何を考えているのか分からなかった。
 メイドさんが机の上に紅茶とお菓子を用意し、静かに部屋から去っていくと、イザベラ嬢とクララ嬢の雰囲気が、令嬢のものから普通の人のものに変わる。

「ふぅ~、令嬢らしくしているのは疲れるわ~」
「そうね。でも、慣れるとそれも普通になるわよ。昔は切り替えが難しかったけど、今はそうでもないしね」
「イザベラは凄いよね」

 どうやら二人とも、前世の日本では俺と同じく、上流階級とかの生まれではなく、一般庶民の家庭の生まれだったみたいだな。それだけで親近感が湧いてくるのは、やはり、転生者同士だという事が大きいのかもしれないな。

「それじゃあ早速、私たちの秘密の会議を始めましょう」
「お~!!」
「お、お~」
「ウォルターさん、クララの真似をしなくても大丈夫よ」

 イザベラ嬢が、俺を微笑ましく見てくる。頬が熱くなり、恥ずかしくて俯いてしまう。そんな俺の様子を見て、イザベラ嬢とクララ嬢がクスクスと笑いだす。

「笑わなくてもいいじゃないですか」
「ごめんなさい。でも、あまりにも可愛らしくてね」
「凄い可愛かったよ」
「そ、それよりも、早く本題をお願いします」

 女性に可愛いなどと言われるのは、前世も含めて初めてだ。気恥ずかしさから、さらに顔が熱くなっていく。このままだといじられ続けると思った俺は、二人に本題に入ってもらう様にお願いする。

「そうね、時は金なり。時間は有効に使わなくてはね。少し長い話になるけど、聞いて頂戴」
「分かりました」

 そこから語られたのは、一人の転生者の少女が、公爵家という家が持つ巨大な力を使って始めた、長く、苦しい、戦いの記録だった。まあ簡単に言ってしまえば、このファンタジー世界の衣食住のレベルを、日本の衣食住のレベルと同等にまで引き上げようと考え、実行に移してきたみたいだ。
 そして、十五歳の時に入学した魔法学院でクララ嬢と出会い、互いに転生者だと分かり、二人で協力し、生活基準を上げようと必死にやってきた様だ。そうしてここまでの十七年間で、それなりに発展する事が出来た様だ。
 だがそれはあくまで女性目線での、女性中心の発展であった。男性向けの発展が進まず、転生者であっても、女性二人では中々難しいと痛感していたそうだ。そんな所に現れたのが、男性の転生者、つまりは俺だったという訳だ。

「そんな訳で、ウォルターさんには、男性目線からの意見をいただきたいと考えています。協力していただけますか?」
「同じ転生者同士、協力してくれないかな?」

 二人は共に笑顔を浮かべているが、イザベラ嬢の背中には、あの見張りの時と同じ様に龍の幻影が浮かび上がり、そしてクララ嬢の背中にも、虎の幻影が浮かび上がっている。

「喜んで、お引き受けいたします」

 魔物相手の戦闘に関しては、俺もそれなりの自信はある。だが、男として女性と戦う事に関しては、無力なのだ。だから俺は、静かな圧を放つ二人に対して素直に頭を下げて、協力を引き受ける事を了承した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...