60 / 348
第60話
しおりを挟む
(‟若返りの桃”?あの果実、桃にはそんな効果があったのか?……いや、待てよ。桃を魔境で見つけて、母さんや叔母さんたちに贈り始めてから、女性陣の機嫌や肌艶が非常に良かったな。もしかして、この桃が持つ効能や効果のお蔭なのか?)
最初に母さんに桃を贈ったのは子供の頃で、自分が食べてとても美味しい桃だったからという理由だった。この美味しさを母さんにも味わってもらいたいと思い、誕生日に合わせて送ったのが始まりだった。
そして当時の事を思い返してみると、桃を最初に見た母さんの驚きや喜びといった反応、本物であると確信しつつも少し疑っている所など、今の二人の様子にそっくりだった。
それに、母さんが桃を一口食べた時の満面の笑顔を思い出した。その笑顔は美味しいものを食べたという笑顔でもあったが、女性として求めていたもの、素晴らしいものを食べたという笑顔でもあったという事に、今更ながら気付いた。
そこから次々と記憶を辿っていくが、母さんの次に桃を贈った叔母さん、その他の女性陣たちの反応や驚きを思い返すと、皆母さんと同じ様に女性として喜んでいた事にも気付いた。
(だから皆、毎年の様にこの桃を誕生日に贈ってくれと言ってきたのか)
「ウォルターさん!!こちら手にとっても宜しいですか?」
イザベラ嬢が、非常に興奮した様子で俺へと質問してくる。その隣にいるクララ嬢も、イザベラ嬢と同じく非常に興奮している。そんな興奮している女性二人に俺は否という事が出来るはずもなく……。
「どうぞ、どうぞ」
「ありがとうございます!!」
「私にも見せて!!」
「勿論よ!!」
キャッキャとはしゃぎながら、イザベラ嬢とクララ嬢は桃をじっくりと観察していく。観察を始めるとキャッキャしていたのが嘘の様に、段々と真剣な表情や視線に変わっていく。二人が全身から放つ雰囲気は熟練の職人や鑑定士の様なそれであり、間違える事は許されないといった思いを感じさせる。
「じっくりと見させてもらったけど、やっぱり間違いないわ」
「そうね、私も同意見だわ。色々な書物に書かれていた内容と、この桃の特徴は一致するわ。後は中身の特徴も一致すれば、完璧に‟若返りの桃”である事は確定ね」
「でもこれがもし本物だとして、私たちだけ見たとなったら…………」
「…………アンナ様からどんなお仕置きをされるか分からないわよ」
「お母様も呼びましょう」
「ええ、それがいいわね」
この桃が贈り物として十分なのかという答えをもらえぬままに、桃の所有者である俺を置き去りして二人の中で話が進んでいき、アンナ公爵夫人もこの場に呼ぶことが決まってしまった。
イザベラ嬢が、早速とばかりに机に置かれているベルを鳴らす。その音を聞いたメイドさんが、素早く無駄のない動きで部屋の中に入り、イザベラ嬢の傍に近寄って要件を聞く。イザベラ嬢はアンナ公爵夫人を呼ぶように伝えると、メイドさんは承った事を告げて、綺麗な一礼をして部屋から去っていく。
そしてメイドさんが去ってから数分後、部屋の扉が三回ノックされ、アンナ公爵夫人が到着した事を告げられた。イザベラ嬢がそれに答えると、扉が開いてアンナ公爵夫人が部屋の中へと入ってくる。
アンナ公爵夫人は、普段と変わらぬ悠然とした様子でこちらに近づいてきた。だが机の上にポツンと置かれた桃が視界に入った瞬間、何時も余裕のあったその姿が嘘の様に崩れ去っていき、スススッと早足になって一気に距離を詰めてくる。
そして一言も発する事なくジッと桃を凝視し、先程のイザベラ嬢とクララ嬢と同じ様に、熟練の職人や鑑定士の様な雰囲気を放ちながら、無言で桃を観察し続ける。そのまま一・二分ほど観察を続けた後、ふ~っと深く息を吐き、何時ものアンナ公爵夫人へと戻る。
「これは間違いなく‟若返りの桃”ね。一体どうやって手に入れたの?」
アンナ公爵夫人は、鋭き視線でイザベラ嬢たちを見る。その鋭き視線はイザベラ嬢の母である前に、美を追求する一人の女性としてのものであった。
最初に母さんに桃を贈ったのは子供の頃で、自分が食べてとても美味しい桃だったからという理由だった。この美味しさを母さんにも味わってもらいたいと思い、誕生日に合わせて送ったのが始まりだった。
そして当時の事を思い返してみると、桃を最初に見た母さんの驚きや喜びといった反応、本物であると確信しつつも少し疑っている所など、今の二人の様子にそっくりだった。
それに、母さんが桃を一口食べた時の満面の笑顔を思い出した。その笑顔は美味しいものを食べたという笑顔でもあったが、女性として求めていたもの、素晴らしいものを食べたという笑顔でもあったという事に、今更ながら気付いた。
そこから次々と記憶を辿っていくが、母さんの次に桃を贈った叔母さん、その他の女性陣たちの反応や驚きを思い返すと、皆母さんと同じ様に女性として喜んでいた事にも気付いた。
(だから皆、毎年の様にこの桃を誕生日に贈ってくれと言ってきたのか)
「ウォルターさん!!こちら手にとっても宜しいですか?」
イザベラ嬢が、非常に興奮した様子で俺へと質問してくる。その隣にいるクララ嬢も、イザベラ嬢と同じく非常に興奮している。そんな興奮している女性二人に俺は否という事が出来るはずもなく……。
「どうぞ、どうぞ」
「ありがとうございます!!」
「私にも見せて!!」
「勿論よ!!」
キャッキャとはしゃぎながら、イザベラ嬢とクララ嬢は桃をじっくりと観察していく。観察を始めるとキャッキャしていたのが嘘の様に、段々と真剣な表情や視線に変わっていく。二人が全身から放つ雰囲気は熟練の職人や鑑定士の様なそれであり、間違える事は許されないといった思いを感じさせる。
「じっくりと見させてもらったけど、やっぱり間違いないわ」
「そうね、私も同意見だわ。色々な書物に書かれていた内容と、この桃の特徴は一致するわ。後は中身の特徴も一致すれば、完璧に‟若返りの桃”である事は確定ね」
「でもこれがもし本物だとして、私たちだけ見たとなったら…………」
「…………アンナ様からどんなお仕置きをされるか分からないわよ」
「お母様も呼びましょう」
「ええ、それがいいわね」
この桃が贈り物として十分なのかという答えをもらえぬままに、桃の所有者である俺を置き去りして二人の中で話が進んでいき、アンナ公爵夫人もこの場に呼ぶことが決まってしまった。
イザベラ嬢が、早速とばかりに机に置かれているベルを鳴らす。その音を聞いたメイドさんが、素早く無駄のない動きで部屋の中に入り、イザベラ嬢の傍に近寄って要件を聞く。イザベラ嬢はアンナ公爵夫人を呼ぶように伝えると、メイドさんは承った事を告げて、綺麗な一礼をして部屋から去っていく。
そしてメイドさんが去ってから数分後、部屋の扉が三回ノックされ、アンナ公爵夫人が到着した事を告げられた。イザベラ嬢がそれに答えると、扉が開いてアンナ公爵夫人が部屋の中へと入ってくる。
アンナ公爵夫人は、普段と変わらぬ悠然とした様子でこちらに近づいてきた。だが机の上にポツンと置かれた桃が視界に入った瞬間、何時も余裕のあったその姿が嘘の様に崩れ去っていき、スススッと早足になって一気に距離を詰めてくる。
そして一言も発する事なくジッと桃を凝視し、先程のイザベラ嬢とクララ嬢と同じ様に、熟練の職人や鑑定士の様な雰囲気を放ちながら、無言で桃を観察し続ける。そのまま一・二分ほど観察を続けた後、ふ~っと深く息を吐き、何時ものアンナ公爵夫人へと戻る。
「これは間違いなく‟若返りの桃”ね。一体どうやって手に入れたの?」
アンナ公爵夫人は、鋭き視線でイザベラ嬢たちを見る。その鋭き視線はイザベラ嬢の母である前に、美を追求する一人の女性としてのものであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる