77 / 348
第77話
しおりを挟む
桃に関しての情報を引き出そうとする、海千山千の商人たちとの面会から一ヶ月が経った。面会した商人たちには、ポンセロと同じ様に魔境に桃が自生していると伝えてある。当然、王家御用達の商人たちにも同じ事を伝えた。
商人たちからその情報が伝えられた二つの公爵家と王族は、当初はその情報を疑い九割・信用一割といった様子で受け止めていた様だ。だが次第に集まってくる情報によって、徐々にその割合が変化していったそうだ。そして疑いを消し去り、信用を十割に変えた決定打が、俺の実家であるベイルトン辺境伯家からの返答だった。
王族たちは自分たちの持ち得る権力を使い、ベイルトン辺境伯家に情報開示を求めようと、まずは俺の情報が真実であるのかどうかを問い合わせた。それも、王妃の名前まで使って。
親父や母さんたち、それに兄貴たちには、商人たちとの面会の事などは伝えてある。それから、王族が権力を使って何かしら仕掛けてくるであろう事も、しっかりと伝えてある。まあ両親やその家臣たちも馬鹿ではないので、そこら辺の事は充分に理解している。だから親父や母さんたちは、王妃の名前まで使われた問いに対して、心から嘘偽りのない答えで返した。
(実物は目にした事があるし、実際に食した事もあるが、自生しているのを確認したのは息子の両目だけだ……とはね。これは親父じゃなくて、母さんが考えた返答だろうな)
王族はこの返答の時点では、まだ疑いの割合の方は強かった。そこで、信頼できる王城を守護する魔法使いや学者を呼び出し、桃が魔境に自生している可能性などをそれぞれに問うた。
呼び出された魔法使いや学者たちの殆どは、面会した商人や二つの公爵家たちと同じ様に、王都で生まれ育った者たちだ。中には田舎で生まれたが、運や機会に恵まれた事で、王城勤めにまでのし上がった者もいるらしいが。
そして呼び出された者たちは、王都にある過去の魔境に関する文献などを読み漁り、可能性は非常に高いという結論を出していた。それを王族に伝えると、王妃たち女性陣は桃欲しさの欲が湧き上がり、すぐさま桃回収のための戦力を魔境へと向かわせる様に秘密裏に命令を出した。
その際、呼び出された魔法使いの中で一人だけ、安易に戦力を魔境に向かわせるべきではないと反対した者がいた。その人物は王城に長年勤め、最強の魔法使いと呼び声の高い老魔法使い、『賢者』ジャック・デュバルであった。
彼は執拗に、必死になって、王族やカルフォン公爵家の持つ戦力を魔境に向かわせる事に反対した。その姿は、普段は温厚で、決して取り乱したりしない賢者が、初めて見せる姿であったそうだ。
それでも王妃は、桃が手に入るという欲にまみれてしまっており、賢者の言葉に一切耳を傾ける事はなかった。賢者は、王族や王城の守護という己の職務と誇りをかけて王に直談判したものの、王にも聞き入れられる事はなかった。ならばせめてと、向かわせる戦力をもっと増やすか、質を上げるべきだと進言もした。
だがそれは、王族や公爵家の戦力であると認められた者たちのプライドを、大きく刺激した。戦力の増強は不要だと、自分たちだけで魔境を制する事が出来る、そして桃を回収してくる事など容易であると、堂々と王や王妃に向かって宣言してしまった。そしてそれを、王や王妃、カルフォン公爵家当主が受け入れてしまった。賢者ジャック・デュバルは、自身の進言が受け入れられなかった事で、もはや王族に自らは不要だと判断し、全ての職を辞して王城から姿を消した。
そして、一ヶ月が経った今日。王や王妃たち王族、そしてカルフォン公爵家当主の元に、魔境へと向かわせた戦力である者たちが帰還した。全員が満身創痍で、酷く怯え切ってしまっている、たった十名足らずの者たちが。
商人たちからその情報が伝えられた二つの公爵家と王族は、当初はその情報を疑い九割・信用一割といった様子で受け止めていた様だ。だが次第に集まってくる情報によって、徐々にその割合が変化していったそうだ。そして疑いを消し去り、信用を十割に変えた決定打が、俺の実家であるベイルトン辺境伯家からの返答だった。
王族たちは自分たちの持ち得る権力を使い、ベイルトン辺境伯家に情報開示を求めようと、まずは俺の情報が真実であるのかどうかを問い合わせた。それも、王妃の名前まで使って。
親父や母さんたち、それに兄貴たちには、商人たちとの面会の事などは伝えてある。それから、王族が権力を使って何かしら仕掛けてくるであろう事も、しっかりと伝えてある。まあ両親やその家臣たちも馬鹿ではないので、そこら辺の事は充分に理解している。だから親父や母さんたちは、王妃の名前まで使われた問いに対して、心から嘘偽りのない答えで返した。
(実物は目にした事があるし、実際に食した事もあるが、自生しているのを確認したのは息子の両目だけだ……とはね。これは親父じゃなくて、母さんが考えた返答だろうな)
王族はこの返答の時点では、まだ疑いの割合の方は強かった。そこで、信頼できる王城を守護する魔法使いや学者を呼び出し、桃が魔境に自生している可能性などをそれぞれに問うた。
呼び出された魔法使いや学者たちの殆どは、面会した商人や二つの公爵家たちと同じ様に、王都で生まれ育った者たちだ。中には田舎で生まれたが、運や機会に恵まれた事で、王城勤めにまでのし上がった者もいるらしいが。
そして呼び出された者たちは、王都にある過去の魔境に関する文献などを読み漁り、可能性は非常に高いという結論を出していた。それを王族に伝えると、王妃たち女性陣は桃欲しさの欲が湧き上がり、すぐさま桃回収のための戦力を魔境へと向かわせる様に秘密裏に命令を出した。
その際、呼び出された魔法使いの中で一人だけ、安易に戦力を魔境に向かわせるべきではないと反対した者がいた。その人物は王城に長年勤め、最強の魔法使いと呼び声の高い老魔法使い、『賢者』ジャック・デュバルであった。
彼は執拗に、必死になって、王族やカルフォン公爵家の持つ戦力を魔境に向かわせる事に反対した。その姿は、普段は温厚で、決して取り乱したりしない賢者が、初めて見せる姿であったそうだ。
それでも王妃は、桃が手に入るという欲にまみれてしまっており、賢者の言葉に一切耳を傾ける事はなかった。賢者は、王族や王城の守護という己の職務と誇りをかけて王に直談判したものの、王にも聞き入れられる事はなかった。ならばせめてと、向かわせる戦力をもっと増やすか、質を上げるべきだと進言もした。
だがそれは、王族や公爵家の戦力であると認められた者たちのプライドを、大きく刺激した。戦力の増強は不要だと、自分たちだけで魔境を制する事が出来る、そして桃を回収してくる事など容易であると、堂々と王や王妃に向かって宣言してしまった。そしてそれを、王や王妃、カルフォン公爵家当主が受け入れてしまった。賢者ジャック・デュバルは、自身の進言が受け入れられなかった事で、もはや王族に自らは不要だと判断し、全ての職を辞して王城から姿を消した。
そして、一ヶ月が経った今日。王や王妃たち王族、そしてカルフォン公爵家当主の元に、魔境へと向かわせた戦力である者たちが帰還した。全員が満身創痍で、酷く怯え切ってしまっている、たった十名足らずの者たちが。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる