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第90話
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王城での研究がなくなり、現在は手持ち無沙汰となっている儂は、ウォルターもお嬢さん方も学業でいない日を待ち、改めてカノッサ公爵家の屋敷へと訪れている。
今回はイザベラのお嬢さんの部屋ではなく、カノッサ公爵その人の執務室へと招かれた。この意味は非常に大きい。今から行われる会話は、『賢者』ジャック・デュバルとカノッサ公爵家との、政治的なものであるという事の証明だ。
(儂としても、今回の話は政治的であってくれた方が助かる。許せ、ウォルター。色々な意味での)
今回の会談で、当主としておきたい話題は二つ。一つは、先日の魔道具製作に関しての事。あの場では、簡単な取り決めだけを作って終わったからの。詳しい事について、カノッサ公爵当主を交えて改めて話しておきたいと思っておったから、こちらとしても好都合であった。
そしてもう一つの話題についてじゃが、政治的なものであり、個人間でのものでもある。これについては魔道具とは違い、早急に話を纏める必要はない。ないんじゃが、儂個人としては、儂が生きている間に骨組みだけは作っておきたい所じゃ。それにベイルトン辺境伯家や辺境伯領などの、辺境を舐めている王都の貴族たちや王族共に、辺境に住む者たちの逞しさや強さを見せつけてやらねばならん。
「今日はこのような場を設けてもらい、非常にありがたく思っております」
「いえ、私としても、賢者様と会話が出来るなど身に余る光栄です」
「この人、昔から賢者様に憧れておりまして。今日お会いするまで、ずっと落ち着きがなかったんですから」
「アンナ、余計な事は言わなくていい」
「いいじゃないの、ローゼン。貴方が賢者様に憧れていたのは本当の事だし、落ち着きなく動き回っていたのも本当の事じゃない」
「それでも、ご本人の目の前で言わなくても……」
「ははは、お二人は仲が良いんじゃな。上位貴族、それも公爵家でここまで夫婦仲が良いのは、中々珍しいんじゃないかの」
「ふふふ。賢者様、私たちは恋愛結婚ですから。仲が良いのは当然ですよ。ねぇ、ローゼン」
「……そうだな」
「見事に尻に敷かれとるの。まあ、それも一つの夫婦円満の秘訣じゃの。…………では、早速本題に入ろうかの」
儂が表情を真剣なものに変えてそう言うと、カノッサ公爵であるローゼン殿とアンナ夫人も雰囲気をガラリと変え、カノッサ公爵家当主と公爵夫人と切り替える。
今日話し合う内容については、事前にアンナ夫人を通じて伝えてあるからの。特に魔道具に関しての話し合いは、カノッサ公爵家にとっても一大事といってもいいものだからの。まあ儂にとって最も大事な話は、そこについてではないがの。儂にとって今一番大事なのは、孫同然に可愛がってきたウォルターの幸せじゃ。
何やらアンナ夫人の方は、ウォルター個人の価値と言うものを、凡そではあるが理解出来ている様だしの。昨今の辺境を下に見る者たちが多い貴族の中で、しっかりと情報を集め、ウォルターの事を傑物であると正しく認識しておるカノッサ公爵家。イザベラお嬢さんも、一本芯の通った良い娘であったしの。
その他にも、クララお嬢さんやナタリーお嬢さん、それにマルグリットお嬢さん。皆、良い娘であった。彼女たちについても、アンナ夫人が何やら企んでおるようだし、儂からは何かを言うつもりもない。彼女たちと共に生き、ウォルターが笑顔で暮らせる未来の為なら、儂はこの残り短い命で出来る限りの事をしてやるつもりじゃ。
今回はイザベラのお嬢さんの部屋ではなく、カノッサ公爵その人の執務室へと招かれた。この意味は非常に大きい。今から行われる会話は、『賢者』ジャック・デュバルとカノッサ公爵家との、政治的なものであるという事の証明だ。
(儂としても、今回の話は政治的であってくれた方が助かる。許せ、ウォルター。色々な意味での)
今回の会談で、当主としておきたい話題は二つ。一つは、先日の魔道具製作に関しての事。あの場では、簡単な取り決めだけを作って終わったからの。詳しい事について、カノッサ公爵当主を交えて改めて話しておきたいと思っておったから、こちらとしても好都合であった。
そしてもう一つの話題についてじゃが、政治的なものであり、個人間でのものでもある。これについては魔道具とは違い、早急に話を纏める必要はない。ないんじゃが、儂個人としては、儂が生きている間に骨組みだけは作っておきたい所じゃ。それにベイルトン辺境伯家や辺境伯領などの、辺境を舐めている王都の貴族たちや王族共に、辺境に住む者たちの逞しさや強さを見せつけてやらねばならん。
「今日はこのような場を設けてもらい、非常にありがたく思っております」
「いえ、私としても、賢者様と会話が出来るなど身に余る光栄です」
「この人、昔から賢者様に憧れておりまして。今日お会いするまで、ずっと落ち着きがなかったんですから」
「アンナ、余計な事は言わなくていい」
「いいじゃないの、ローゼン。貴方が賢者様に憧れていたのは本当の事だし、落ち着きなく動き回っていたのも本当の事じゃない」
「それでも、ご本人の目の前で言わなくても……」
「ははは、お二人は仲が良いんじゃな。上位貴族、それも公爵家でここまで夫婦仲が良いのは、中々珍しいんじゃないかの」
「ふふふ。賢者様、私たちは恋愛結婚ですから。仲が良いのは当然ですよ。ねぇ、ローゼン」
「……そうだな」
「見事に尻に敷かれとるの。まあ、それも一つの夫婦円満の秘訣じゃの。…………では、早速本題に入ろうかの」
儂が表情を真剣なものに変えてそう言うと、カノッサ公爵であるローゼン殿とアンナ夫人も雰囲気をガラリと変え、カノッサ公爵家当主と公爵夫人と切り替える。
今日話し合う内容については、事前にアンナ夫人を通じて伝えてあるからの。特に魔道具に関しての話し合いは、カノッサ公爵家にとっても一大事といってもいいものだからの。まあ儂にとって最も大事な話は、そこについてではないがの。儂にとって今一番大事なのは、孫同然に可愛がってきたウォルターの幸せじゃ。
何やらアンナ夫人の方は、ウォルター個人の価値と言うものを、凡そではあるが理解出来ている様だしの。昨今の辺境を下に見る者たちが多い貴族の中で、しっかりと情報を集め、ウォルターの事を傑物であると正しく認識しておるカノッサ公爵家。イザベラお嬢さんも、一本芯の通った良い娘であったしの。
その他にも、クララお嬢さんやナタリーお嬢さん、それにマルグリットお嬢さん。皆、良い娘であった。彼女たちについても、アンナ夫人が何やら企んでおるようだし、儂からは何かを言うつもりもない。彼女たちと共に生き、ウォルターが笑顔で暮らせる未来の為なら、儂はこの残り短い命で出来る限りの事をしてやるつもりじゃ。
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