95 / 348
第95話
しおりを挟む
高速機動で漆黒の狼が地を駆け、精鋭部隊へと襲い掛かる。それを、俺はただ見ているだけだ。まあ今世問わず前世でもそうだが、エリートと呼ばれる者たちは総じてプライドが高い。そして、そのプライドの高さが傲慢となり、よく知りもしない人に対して高圧的になって見下す。
それは俺相手でも変わる事はなく、彼らは王都で顔合わせをした時から高圧的に接してきて、遂には桃への案内以外で自分たちに声をかける事も、手を出す事も不要と言い切られた。なので、どんな一方的にやられていようが、死に瀕していようが、俺が彼らに何かをする事はない。それに、魔境に入る際に誓約書を書いただろう?
この魔境という地に足を踏み入れるという事は、全てにおいて自己責任であると承諾したという事だ。魔境は、ベイルトン辺境伯領ではない。誰の領土でもなく、誰かが作り出した場所でもない。生き死には自然の摂理が適用され、王や貴族であっても、奴隷であってもこの森では一つの命。弱い者が強い者の糧になる、弱肉強食の力がものをいう厳しい世界だ。
つまり何が言いたいのかというと、手出し不要と言われている事も相まって、精鋭部隊の連中を助ける気が一ミリもないという事だ。
(だけど、ジャック爺や公爵夫妻の企みの件もあるから、精鋭部隊の全滅は避けた方がいいか。まあ何人か死んだとしても、全滅は避けられるんだから、王族たちからしてみれば儲け物だろ)
助ける義理も義務もないが、ジャック爺たちのためにも、現在進行形で蹂躙されている精鋭部隊を救いに動く。それに、これ以上戦闘に時間をかけて、血の匂いを魔境に漂わせると状況がマズくなる。次から次へと魔物が近寄ってきて、休まることのない戦闘地獄になってしまう。なので、さっさと仕留めるか撃退して、安全を確保する事を優先する!!
俺は漆黒の狼がやって見せた様に、身体強化の魔法を発動する。そこから身体全体を魔力で覆い、魔力の鎧を生み出す。更に、腰に差していたロングソードを抜き放ち、剣身に魔力を纏わせて強化する。
強化された身体で右脚を一歩踏み込み、地を砕きながら一気に加速。ボロボロと表現してもいい程に一方的にやられている精鋭部隊に、止めを刺そうとしている漆黒の狼に向かって一直線に駆けて、爪で引き裂かれそうになっている魔法使いの前に割り込む。そして、ロングソードを左薙ぎの横一線に鋭く振るう。
「――――フッ!!」
「ガァアアア!!」
左薙ぎに振るったロングソードは、漆黒の狼の鋭き爪を綺麗に切り裂いた。そのまま返す刀で、漆黒の狼を縦に真っ二つに切断しようと、上段からの振り下ろしを放つ。
漆黒の狼は爪を切り裂かれた痛みに呻きながらも、上段から振り下ろされたロングソードの刃を、後ろに跳ぶことで避けた。漆黒の狼は綺麗に着地し、避けてやったとばかりにニヤリとしようとしたが、次の瞬間に左肩が切り裂かれて血が噴き出した事で、その表情が固まる。
「退け、黒き狼。次に襲い掛かってきたら、その首を飛ばす」
「………………グルゥ」
漆黒の狼は長き沈黙の後に一鳴きし、身を翻してこの場から去っていく。その際には、切り裂かれた左肩の傷が塞がり始めていた。やはり、魔境の魔物の再生能力は異常な程に高いな。
「…………」
俺は一言も声を掛ける事なく、精鋭部隊のリーダを見つめる。リーダーは暫く呆然としていたが、見下していた俺に見られた事で我に返り、指揮下の魔法使いたちに指示を出していく。
「……フン。では、“若返りの桃”に向かって移動を再開するぞ」
『了解』
それは俺相手でも変わる事はなく、彼らは王都で顔合わせをした時から高圧的に接してきて、遂には桃への案内以外で自分たちに声をかける事も、手を出す事も不要と言い切られた。なので、どんな一方的にやられていようが、死に瀕していようが、俺が彼らに何かをする事はない。それに、魔境に入る際に誓約書を書いただろう?
この魔境という地に足を踏み入れるという事は、全てにおいて自己責任であると承諾したという事だ。魔境は、ベイルトン辺境伯領ではない。誰の領土でもなく、誰かが作り出した場所でもない。生き死には自然の摂理が適用され、王や貴族であっても、奴隷であってもこの森では一つの命。弱い者が強い者の糧になる、弱肉強食の力がものをいう厳しい世界だ。
つまり何が言いたいのかというと、手出し不要と言われている事も相まって、精鋭部隊の連中を助ける気が一ミリもないという事だ。
(だけど、ジャック爺や公爵夫妻の企みの件もあるから、精鋭部隊の全滅は避けた方がいいか。まあ何人か死んだとしても、全滅は避けられるんだから、王族たちからしてみれば儲け物だろ)
助ける義理も義務もないが、ジャック爺たちのためにも、現在進行形で蹂躙されている精鋭部隊を救いに動く。それに、これ以上戦闘に時間をかけて、血の匂いを魔境に漂わせると状況がマズくなる。次から次へと魔物が近寄ってきて、休まることのない戦闘地獄になってしまう。なので、さっさと仕留めるか撃退して、安全を確保する事を優先する!!
俺は漆黒の狼がやって見せた様に、身体強化の魔法を発動する。そこから身体全体を魔力で覆い、魔力の鎧を生み出す。更に、腰に差していたロングソードを抜き放ち、剣身に魔力を纏わせて強化する。
強化された身体で右脚を一歩踏み込み、地を砕きながら一気に加速。ボロボロと表現してもいい程に一方的にやられている精鋭部隊に、止めを刺そうとしている漆黒の狼に向かって一直線に駆けて、爪で引き裂かれそうになっている魔法使いの前に割り込む。そして、ロングソードを左薙ぎの横一線に鋭く振るう。
「――――フッ!!」
「ガァアアア!!」
左薙ぎに振るったロングソードは、漆黒の狼の鋭き爪を綺麗に切り裂いた。そのまま返す刀で、漆黒の狼を縦に真っ二つに切断しようと、上段からの振り下ろしを放つ。
漆黒の狼は爪を切り裂かれた痛みに呻きながらも、上段から振り下ろされたロングソードの刃を、後ろに跳ぶことで避けた。漆黒の狼は綺麗に着地し、避けてやったとばかりにニヤリとしようとしたが、次の瞬間に左肩が切り裂かれて血が噴き出した事で、その表情が固まる。
「退け、黒き狼。次に襲い掛かってきたら、その首を飛ばす」
「………………グルゥ」
漆黒の狼は長き沈黙の後に一鳴きし、身を翻してこの場から去っていく。その際には、切り裂かれた左肩の傷が塞がり始めていた。やはり、魔境の魔物の再生能力は異常な程に高いな。
「…………」
俺は一言も声を掛ける事なく、精鋭部隊のリーダを見つめる。リーダーは暫く呆然としていたが、見下していた俺に見られた事で我に返り、指揮下の魔法使いたちに指示を出していく。
「……フン。では、“若返りの桃”に向かって移動を再開するぞ」
『了解』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる