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第113話

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 ジャック爺に言われた通り、バックパックから女性陣へと持たされたお土産を取り出す準備を始める。この準備の間に、ジャック爺が服に備わっている機能を説明するため、カノッサ公爵へと近づいていく。

「ローゼン殿、一つ伝え忘れていた事がありまして……」
「賢者様、伝え忘れていた事とは?」
「うむ、服についてなんじゃがな。これらの服には、魔法がかけられておるんじゃ」
「魔法がですか?一体どの様な?」
「身体に何か作用する魔法ではない。ただ、服を着た者の身体に合わせて、自動で服が調整してくれるという魔法じゃ。簡単に言えば、というものじゃ」
『!?』

 ジャック爺による魔法の説明に、この場にいる全員の動きがピタリと止まる。女性陣は両耳に精神を集中させ、ジャック爺の言葉を一言一句聞き逃さない様にしている。

「それは…………もの凄い魔法なのでは?」
「まあ、分類としては新しい魔法になるじゃろうな。ベイルトンの服飾職人の女性たちが生み出した魔法じゃな。まあ、発想自体はウォルターのものが元になっておるがな」

 女性陣の視線が、俺の背中に集まっているのを感じる。再び嫌な汗が背中を流れるが、恐怖を抑え込んで作業を続ける。

「それでじゃな、下手に寸法調整や魔法をかけたりすると、その魔法にどんな影響が出るのか分からん。なので、服に関しては手を出さずに、そのまま使ってほしいんじゃ」
「賢者様でも、術式が壊れたら修復できない程の魔法なのですか?」
「いや、儂も修復する事は可能じゃ。ただ…………」
「ただ、なんです?」
「非常に面倒になるんじゃ。精密に組み上げられた術式じゃから、修復するのに時間も労力もかかる。一つの服の術式を修復するのに、大体三か月から四か月はかかるじゃろうな」
「三か月から四か月!?……分かりました。いただいた服に関しては、限られた者にのみ伝え、しっかりとした管理をさせていただきます。ですが、もし術式が壊れてしまった場合、賢者様を頼らせていただいても?」
「構わん。それくらいなら問題はない。じゃが、一着二着程度なら問題はないが、何着も術式が壊れてしまった場合には、一旦儂の方で預からせてもらう。ベイルトンに送って、修復してもらった方が早いからの」
「はい、分かりました」
「それから、服そのものは寡黙な蜘蛛の糸からできた生地で作られているとはいえ、普通の服より少し頑丈なくらいでしかない。服そのものが破れたりしてしまうと、最悪その服は諦めてもらう事になるからの。その辺は、承知しておいてくれると助かるの」
「肝に銘じておきます」

 背中に集まっている視線が、突き刺す様な視線に変わる。それこそ、ナイフやレイピアでグサリとやられている様に感じてしまう。とても恐ろしくて、後ろを振り向く事が出来ない。恐怖を抑える事が出来ず、カタカタと手が震えている。誰か助けて欲しい。
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