誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界

Greis

文字の大きさ
124 / 348

第124話

しおりを挟む
 王都は今、魔法競技大会の開催が近い事もあって非常に賑わっている。朝市や大通りの各商店から聞こえる声の大きさが、普段の倍以上に感じるくらいには盛り上がっているな。各商店は魔法競技大会の為に王都に訪れる人たち向けに、割引してみたりおまけを付けてみたりと、今後の御贔屓ごひいきの為に商魂たくましく色々と動いている。
 魔法競技大会は、各都市にある魔法学院の生徒たちが、王都に集まる一大行事の一つだからな。割引やおまけを付けたとしても、それを上回る利益が出るんだろうな。それに上手くいけば、各都市の魔法学院の生徒たちを通じて、新たな顧客となる貴族と繋がりが持てる可能性があるからな。さらにその貴族が暮らしている都市に支店を出すことにでもなれば、商人の笑いが止まらなくなるだろう。

(去年はそんな幸運な商人はいなかったが、今年は幸運な商人が出てくるかね?)

 特に今年の魔法競技大会には、アルベルト殿下や側近たちといった、例年にない目玉と言っていい者たちが代表として出場するからな。王都に訪れる商人などの数も去年に比べて多く、アルベルト殿下たちとあわよくば接触出来るかもと、捕らぬ狸の皮算用を企てている者ばかりだ。
 活気のある王都の街並みや人々を眺めながら歩き続けた後に、一軒のお店の前で足を止める。お店からは良い匂いが漂ってきており、まだ朝早いというのに、常連のお客さんたちが買いに来ているのが見える。店の入り口の取っ手を右手で握り、手前に引いて中へと足を踏み入れる。

「おはよう、オバちゃんたち」
「あらウォルター君、おはよう。今日も何時ものでいいの?」
「うん、何時ものでお願い。オバちゃんたちの所の客足はどう?順調に稼げてる?」
「ああ、ガッポリだよ!!魔法競技大会様様だね!!この時期は、王都に訪れる商人さんたちや旅人さんたちが大勢増えて足を運んでくれるし、王都内の新規のお客さんも足を運んでくれるからね」
「多少割引やおまけを付けたってしっかり元が取れるし、大口のお客さんも増えるからね」
「変なお客さんとか来てない?あまりに度が過ぎている様だったら、俺の方から上に伝えおくけど……」
「心配してくれてありがとうよ。でも今の所は大丈夫だよ」
「何かあったら、ウォルター君かジャックさんにちゃんと言うから」
「本当に何かあったら、直ぐに俺かジャック爺に相談してよ。変な遠慮とかいらないからね」
「ああ、分かってるよ」

 何時ものやり取りをして、何時もの様に締める。それを常連さんたちは微笑みながら見ている。その事に少し恥ずかしさを覚えるものの、大事な事だからオバちゃんたちに毎回言っておく。

「ほら、出来立てほやほやの食パンだよ!!ジャックさんと一緒に味わってね!!」
「おお~、今日も美味しそうですね。ジャック爺も喜びますよ」
「ははは、嬉しい事言ってくれるね。それじゃあ、幾つかおまけを付けといてあげないとね」
「ありがとう、オバちゃん」
「いいのよ。また明日も来て、パンを買っていってちょうだいね」
「はい、楽しみにしていますね」

 出来立てほやほやの食パンの代金をお店に支払い、とてもうきうきした足取りで家へと足を進める。ここのパンは美味しいから、俺もジャック爺もお気に入りなのだ。それが出来立てほやほやともなれば、さらにその美味しさが際立つ。このお店を王都で見つけれた事は、俺にとってもジャック爺にとっても幸運な事だったな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...