127 / 348
第127話
しおりを挟む
闘技場の中を、色とりどりの魔法が飛び交う。ぶつかり合って相殺して消えていく魔法もあれば、どちらかがどちらかを圧倒したりと、派手な魔法戦闘に身分関係なく歓声を上げている。
それにしても、各校の魔法学院の生徒たちもまた、王都校に比べて遜色ない質だな。流石に上位属性魔法を使う事が出来る者はいないようだが、どの生徒たちも魔力が洗練されており、日々の鍛錬を怠っていないのがよく分かる。
それは、ジャック爺の様子からも伝わってくる。各都市の学生たちに鋭い視線を向け、気になった生徒の一挙手一投足に集中し、賢者としての目で採点をしている。だがそんなジャック爺も、一つの学院の生徒たちの事は真剣には見ない。言うまでもない事だが、王都校の出場選手たち、つまりはアルベルト殿下や側近たちの事だ。
「日々の鍛錬を欠かさずに行っているのは、素直に素晴らしい事だと認めよう。しかし、その密度が薄い。薄すぎるんじゃ」
「各都市の魔法学院の生徒たちに比べると、才能に頼っての力押しなのが見て分かるね。それに魔法を構築する時にも、魔法を相手に放つ際にも工夫がないね。あれだと、戦場経験、人と人同士の殺し合いを経験した魔法使いたち相手には通じない」
「そうじゃの。真面に相手をされたとしても五分から十分、相手が悪ければ数十分遊ばれた後に、無残に殺されて終わりじゃろうな」
「でも今の所、殿下や側近たちは戦場に出そうにないんでしょ?陛下がそう言ってたって、ジャック爺が俺に教えてくれなかったけ?」
「そうじゃな。余程の事がない限りは戦場へは送らんと、儂の目の前で馬鹿な事を言いおったの。儂も一度は戦場に出る事で、実際の魔法戦闘を体験させた方がいいと進言したんじゃ。王子たちに何もさせないとしても、戦場の空気だけは感じさせるべきじゃとな」
魔物相手であっても人相手であっても、実戦を経験した者としていない者には大きな壁があるからな。学院でどれだけ魔法の腕を磨いたとしても、それが実戦で正しく発揮される事はほとんどないと言っていい。その理由は、実戦には傷の痛みや死の恐怖が常に付き纏うからだ。
戦場における傷の痛みと死の恐怖は、状況判断を鈍らせたり冷静さを失わせる。そして冷静さを失った魔術師など、相手にとっていいカモでしかない。カモにされない為には揺るがぬ精神を手に入れる必要があり、実戦経験を多く積んでいく事でしかそれは成し得ない。
「その様な話があったとは。しかし、実際に戦場へ行ったという話は聞いていません。という事は……」
「先程も言った様に、王がその必要なしと判断し、儂の進言を聞き入れなかったんじゃ。確かに、儂の進言を全て聞き入れる必要はないの。じゃがこの進言に関しては、大臣たちも珍しく儂側に立って王を説得しておった。臣下としても、魔物相手であっても戦場を知らぬというのはまずいと思ったんじゃろうな」
「という事は、殿下や側近たちって実戦経験なしなの?」
「正確に言うならば、緊張感のある戦場で、それなりの強さの魔物を相手にした事がない、じゃな。王都近郊にある草原などに現れるような弱い魔物や、合同訓練を行った森に出てくる魔物程度では、正直に言ってあれであったじゃろ?」
「肩慣らしにもならなかったね」
「つまり王子たちは確実に勝てる魔物や状況でしか、戦闘を行った事がないって事ですか?」
「そうじゃ。ハッキリと言ってしまうが、王子たちは温室育ちの魔法使いなんじゃよ」
それにしても、各校の魔法学院の生徒たちもまた、王都校に比べて遜色ない質だな。流石に上位属性魔法を使う事が出来る者はいないようだが、どの生徒たちも魔力が洗練されており、日々の鍛錬を怠っていないのがよく分かる。
それは、ジャック爺の様子からも伝わってくる。各都市の学生たちに鋭い視線を向け、気になった生徒の一挙手一投足に集中し、賢者としての目で採点をしている。だがそんなジャック爺も、一つの学院の生徒たちの事は真剣には見ない。言うまでもない事だが、王都校の出場選手たち、つまりはアルベルト殿下や側近たちの事だ。
「日々の鍛錬を欠かさずに行っているのは、素直に素晴らしい事だと認めよう。しかし、その密度が薄い。薄すぎるんじゃ」
「各都市の魔法学院の生徒たちに比べると、才能に頼っての力押しなのが見て分かるね。それに魔法を構築する時にも、魔法を相手に放つ際にも工夫がないね。あれだと、戦場経験、人と人同士の殺し合いを経験した魔法使いたち相手には通じない」
「そうじゃの。真面に相手をされたとしても五分から十分、相手が悪ければ数十分遊ばれた後に、無残に殺されて終わりじゃろうな」
「でも今の所、殿下や側近たちは戦場に出そうにないんでしょ?陛下がそう言ってたって、ジャック爺が俺に教えてくれなかったけ?」
「そうじゃな。余程の事がない限りは戦場へは送らんと、儂の目の前で馬鹿な事を言いおったの。儂も一度は戦場に出る事で、実際の魔法戦闘を体験させた方がいいと進言したんじゃ。王子たちに何もさせないとしても、戦場の空気だけは感じさせるべきじゃとな」
魔物相手であっても人相手であっても、実戦を経験した者としていない者には大きな壁があるからな。学院でどれだけ魔法の腕を磨いたとしても、それが実戦で正しく発揮される事はほとんどないと言っていい。その理由は、実戦には傷の痛みや死の恐怖が常に付き纏うからだ。
戦場における傷の痛みと死の恐怖は、状況判断を鈍らせたり冷静さを失わせる。そして冷静さを失った魔術師など、相手にとっていいカモでしかない。カモにされない為には揺るがぬ精神を手に入れる必要があり、実戦経験を多く積んでいく事でしかそれは成し得ない。
「その様な話があったとは。しかし、実際に戦場へ行ったという話は聞いていません。という事は……」
「先程も言った様に、王がその必要なしと判断し、儂の進言を聞き入れなかったんじゃ。確かに、儂の進言を全て聞き入れる必要はないの。じゃがこの進言に関しては、大臣たちも珍しく儂側に立って王を説得しておった。臣下としても、魔物相手であっても戦場を知らぬというのはまずいと思ったんじゃろうな」
「という事は、殿下や側近たちって実戦経験なしなの?」
「正確に言うならば、緊張感のある戦場で、それなりの強さの魔物を相手にした事がない、じゃな。王都近郊にある草原などに現れるような弱い魔物や、合同訓練を行った森に出てくる魔物程度では、正直に言ってあれであったじゃろ?」
「肩慣らしにもならなかったね」
「つまり王子たちは確実に勝てる魔物や状況でしか、戦闘を行った事がないって事ですか?」
「そうじゃ。ハッキリと言ってしまうが、王子たちは温室育ちの魔法使いなんじゃよ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる