Lastbabylon

将義双世/マサヨシソウセイ

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『狂いし蒼き太陽』

/燃ゆる落日04

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どうして? 生きているの? 確かにこの腕の中で看取ったのに。なぜ? 本当に君なのか?

ねぇ――……。

ボールスは静かに目を覚ました。ふかふかのベッドで眠っていた。

 「ここは? テオ?」

辺りを見回す。ここはどこだろうと疑問しか出てこない。飾られた部屋。派手というわけでもなく、質素というわけでもない。多くの剣や盾が並び、どこか懐かしいようなそんな部屋だった。

 「テオ……?」

ボールスは立ち上がり、テオを探す。なぜこんな場所にいるのか、記憶がすっぽり抜けているような気がする。どうしてテオがいないのか、分からないというように部屋の外へ出ようとする。すると、扉が勝手に開いた。正確には開かれたのだ。

ボールスは一瞬警戒の糸を張る。

 「お、起きたか?」

扉を足で開きながら男は中へ入ってきた。両手には果物がたくさん乗った銀の皿を持っている。

 「いやぁ、本当に懐かしいな。覚えてるか? 俺のこと?」

その場にへたり込んでいるボールスを気にすることもなく男は銀の皿をテーブルに置く。そして、ボールスに向かってリンゴをひとつ放り投げた。

 「覚えてないと、辛いし悲しいな」

男もリンゴを手に取ると一かじりする。シャキッと瑞々しい音がする。ボールスは手にあるリンゴを見る。お腹がぐぅと鳴る。

 「ん? うまいぞ。食えよ」

男はボールスにそう促す。

 「……ありがとう」

ボールスはそう言うとリンゴをかじる。

 「なぁ、ボールス。覚えてるか?」

リンゴを食べるボールスを見つめながら男はもう一度聞いた。茶色い瞳が物憂げに細められた。懐かしいようなそんな瞳。

 「ガウェイン……」

ボールスは静かにそう言葉にした。

 「ガウェイン・ロット=オークニー」

そして、はっきりとその名を口にした。

 「そう、ガウェイン。覚えていてくれて嬉しいよ。ただ、今はガウェイン=A・ロット=オークニー=ロジアン・カークランドだがな。長いから下はロークでいいがな」

男……ガウェインはそう言うとリンゴをかじる。その姿は紛れもなく遠い昔のガウェインのままだった。だが、ボールスには疑問しかわかない。

 「ねぇ、ガウェイン。君が昔のガウェインと言うのは分かったよ。でも、なぜ生きているの?」

ボールスは思い出す。この腕の中で消えた命の事を。
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