[Revenant/Fantome]

将義双世/マサヨシソウセイ

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[04]第一話 白き騎士ヘリン

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 「イベリスはいつも図書室にいるのかい?」

手に取った本をそっと机に戻す。

自分が居ないときイベリスが何をしているのか知りたかった。

 「ボールスおじい様が残してくれた本が面白くていつも読んでいるの」

イベリスは嬉しそうに話す。

屈託なく笑うのだ。

本当に本を読むのが好きなのだと分かる。

 「何を読んでいたの?」

何気なしにヘリンはイベリスに聞いた。

ここにあるほとんどの本は女の子が読むようなものではない。

騎士の冒険譚。

神徒であったボールスが男女の恋愛を題材にしたものを置くことはなかった。

真面目で地味。

他の騎士と違って、華やかさはなかった。

それはヘリンもよく理解している。

だからこそ、イベリスが何の本を読んでいるのかが気になったのだ。

 「『残虐な王の最期』です」

物騒な本のタイトルだが、ヘリンには覚えがあった。

 「それは子供向けに書かれた本じゃなかったかな。確かよくその本を読んでくれってせがまれたよな。いつも本はボールス父様に読んで貰っていたはずなのに、その本だけは私が読んだ記憶があるよ」

 「この本だけボールスおじい様は読んでくれなかったのです。なぜかをずっと考えて、その理由を探しているのです」

机に置いていた本をそっと持ち、抱きしめる。

子供ながらに感じていた疑問を今でも持ち続けている。

そのイベリスの気持ちは分からないでもなかった。

意味のないことをする人ではなかった。

必ず理由が存在する。

ただ、亡くなってしまった今となってはその真実を知るすべもない。

 「それは初耳だね。この本は確か私の祖父にあたるボールス王の時代の話だった。そして、それを打ち破ったボールス父様とその従弟である伯父様の話。史実を元に作られた話だからね。ボールス父様は自分が登場する話を嫌ったのではないかな」

だから、ヘリンは憶測で話すしかない。

 「でも、聖杯探求の話は読んでくれますよ。ヘリン父様の理由でしたらこの話も読んでくれませんよね?」

 「うーん、そうだね。でも、どうしてこの本だけ読んでくれなかったのだろう?」

返ってきたイベリスの言葉にヘリンは手詰まりだった。

 「ボールスおじい様の事ですから、きっと理由があると思っています」

 「イベリスはその理由をずっとここで探しているのかい?」

 「はい、ボールスおじい様が何を考えてこの本を読んでくれなかったのか知りたいじゃありませんか。それに、私もヘリンお父様の様にこのボールスおじい様の歴史書を守っていきたいのです」

イベリスの言葉にヘリンは泣きそうになった。
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