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[Revenant/Fantome]

[01]第二話 白の化け物

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ヘリンたちは馬を駆り、ボードウィン城より一日かかるリモージュ地域に到着していた。

到着したとたんに、異常な状況を目の当たりにした。

普段ならばこの地方に雪は降らない。

 「アルフレッド、この状況は想定していなかったな。」

 「異常気象。よもや、天候を操るモーヴェとは」

馬の蹄が雪を踏みしめる。

溶けている場所と積もっている場所の境目を超えた。

寒さのせいで息が白くなる。

ヘリンの心配するところは、引きつれている兵士を含め、騎士たちは雪の装備はしていない。

この寒さの中、鎧を着ている者は凍傷の恐れもあるし、温暖な気候の服装しか着ていない者は低体温症を引き起こすこともある。

戦いが長引くと危険になるかもしれないと、ヘリンは思案する。

一度、近隣の街へ戻り装備を整え直した方がいいかもしれない。

馬を回頭させ、ヘリンは道を戻ろうと考えた。

 「アルフレッド、ここは一度戻り、装備を…。」

回頭した、一瞬だった。

眼前を白に染められた。

 「アルフレッド! どこだ!?」

ヘリンは力の限り叫んだ。

状況が全く分からない。

突然、目の前を雪に覆われ、視界を奪われた。

モーヴェが近づいていると考えるのが妥当だろう。

自然すらも変えることのできる能力を持つモーヴェ。

しかし、ここまで広範囲に影響を及ぼす力を持つモーヴェに遭遇したことはない。

ヘリンは剣の柄を握りしめる。

柄が冷たい。

手の体温を奪われているようだ。

 「アルフレッド!」

ヘリンはもう一度叫んだ。

近くにいるはずなのに見失ってしまった。

どうにか状況を打破しなければ。

それよりも先に同行した騎士、および兵士たちの安否を確認することが先決だ。

白い息を吐き出し、雪に足をとられながらも歩を進めるしかない。

留まり、体温を下げることの方が今は危険だと感じる。

これだけ叫んでも返事が返ってこないという事は最悪の事態も考えられる。

いや、雪に声を奪われて、届かないだけかもしれない。

近くに寄れば、声が届くはずだ。

一歩、一歩、確かめながら歩く。

剣がやけに重く感じる。

剣先から凍り付いているように思える。

 「アル…。」

もう一度、叫ぼうとしてヘリンは声をおさめた。

異様な声がする。

聞いたことがないような気味の悪い声。

その声を聞いて、馬が怯えて乗っていたヘリンを振り落した。

 「くっ!」

逃げていく馬は白い雪の中へと消えていく。

仕方がない。

馬は本来、臆病な生き物だ。

しかも、ヘリンが乗っていたのはまだ年若い馬だった。

逃げ出されたことよりも、この先どうすればいいか考える方が先決だ。
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