[Revenant/Fantome]

将義双世/マサヨシソウセイ

文字の大きさ
14 / 42
[Revenant/Fantome]

[02]第二話 白の化け物

しおりを挟む

馬が逃げても、確実にモーヴェは近づいてくる。

ヘリンは、近くにあった樹の陰へと姿を隠す。

息を殺して、様子を窺う。

近づいてくる。

重みのある足音。

雪が降り積もっているはずなのに、存在感のある音。

そっと、樹の陰からその足音の主を覗き込んだ。

その姿を確認し、ヘリンは再び木の陰に隠れた。

 「(なんっ、何だ、こいつは)」

呼吸が荒くなるのを感じた。

その度に、白い息が吐き出されるが、雪の白に混じって消える。

ヘリンが見たもの、それは獅子のような頭を持ち、女性のような胸部、腕には鳥の羽の様に金属の刃がついていた。

その手足は頭部と同じように獅子のものだった。

それよりも何よりもこの雪だというのに、際立っていた白い体躯が特徴的だった。

間違いなく、この雪を起こしているのはこの白い化け物であるとヘリンは感じた。

 「(こんなモーヴェが、なぜこんな辺境に……)」

身震いがした。

感じたこともない恐怖。

情けない話だが、ヘリンにはどうすることもできないと分かってしまった。

明らかな戦力差。

こんな化け物が居るなんて。

ヘリンの頭は恐怖で彩られた。

だが、そんな中で不意にイベリスの事を思い出す。

 「(そうだ。守らなければ。こいつを野放しにしていたら、もっと被害が広がる。それに見逃してしまえば、私は戦えなくなる)」

そう考えながら、ヘリンは強く剣を握りしめた。

少しでも生存の可能性を考えるなら、奇襲をかけるしかない。

ヘリンは息を吸った。

冷たく凍るような空気が肺の中を巡る。

それでも、気を落ち着かせるために呼吸を何度か繰り返す。

足音がヘリンのそばを横切る。

体躯は約3メートル。

巨大とは言い難い。

だが、ひしひしと伝わってくるその存在感。

息を殺して、通り過ぎるのを待つ。

通り過ぎたら、その背に剣を突き立てる。

うまくいけば、倒せる。

いや、倒さなければならない。

足音が通り過ぎる。

ヘリンは瞬間、雪の中を駆ける。

剣を構え、雪を蹴り上げ、白い化け物の背中へと跳躍する。

 「一撃で! 終わってくれ!」

剣撃の威力を上げるために体をひねり、剣を水平に走らせる。

斬りつける。

その目的にだけ特化した剣。

だが、白い化け物の背中の翼が突然広がった。

広がると同時に風圧がヘリンの体に当る。

ヘリンの体に突き刺さるように雪が降り注ぐが、剣を止めるわけにはいかなかった。

背中に剣を当てるが、威力が殺された剣では刃が通らなかった。

弾かれた剣は白い化け物に己を攻撃する敵の存在を認識させるという最悪な結果に陥らせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...