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[Revenant/Fantome]
[02]第二話 白の化け物
しおりを挟む馬が逃げても、確実にモーヴェは近づいてくる。
ヘリンは、近くにあった樹の陰へと姿を隠す。
息を殺して、様子を窺う。
近づいてくる。
重みのある足音。
雪が降り積もっているはずなのに、存在感のある音。
そっと、樹の陰からその足音の主を覗き込んだ。
その姿を確認し、ヘリンは再び木の陰に隠れた。
「(なんっ、何だ、こいつは)」
呼吸が荒くなるのを感じた。
その度に、白い息が吐き出されるが、雪の白に混じって消える。
ヘリンが見たもの、それは獅子のような頭を持ち、女性のような胸部、腕には鳥の羽の様に金属の刃がついていた。
その手足は頭部と同じように獅子のものだった。
それよりも何よりもこの雪だというのに、際立っていた白い体躯が特徴的だった。
間違いなく、この雪を起こしているのはこの白い化け物であるとヘリンは感じた。
「(こんなモーヴェが、なぜこんな辺境に……)」
身震いがした。
感じたこともない恐怖。
情けない話だが、ヘリンにはどうすることもできないと分かってしまった。
明らかな戦力差。
こんな化け物が居るなんて。
ヘリンの頭は恐怖で彩られた。
だが、そんな中で不意にイベリスの事を思い出す。
「(そうだ。守らなければ。こいつを野放しにしていたら、もっと被害が広がる。それに見逃してしまえば、私は戦えなくなる)」
そう考えながら、ヘリンは強く剣を握りしめた。
少しでも生存の可能性を考えるなら、奇襲をかけるしかない。
ヘリンは息を吸った。
冷たく凍るような空気が肺の中を巡る。
それでも、気を落ち着かせるために呼吸を何度か繰り返す。
足音がヘリンのそばを横切る。
体躯は約3メートル。
巨大とは言い難い。
だが、ひしひしと伝わってくるその存在感。
息を殺して、通り過ぎるのを待つ。
通り過ぎたら、その背に剣を突き立てる。
うまくいけば、倒せる。
いや、倒さなければならない。
足音が通り過ぎる。
ヘリンは瞬間、雪の中を駆ける。
剣を構え、雪を蹴り上げ、白い化け物の背中へと跳躍する。
「一撃で! 終わってくれ!」
剣撃の威力を上げるために体をひねり、剣を水平に走らせる。
斬りつける。
その目的にだけ特化した剣。
だが、白い化け物の背中の翼が突然広がった。
広がると同時に風圧がヘリンの体に当る。
ヘリンの体に突き刺さるように雪が降り注ぐが、剣を止めるわけにはいかなかった。
背中に剣を当てるが、威力が殺された剣では刃が通らなかった。
弾かれた剣は白い化け物に己を攻撃する敵の存在を認識させるという最悪な結果に陥らせた。
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