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[Revenant/Fantome]
[05]第三話 白き騎士の娘
しおりを挟むイベリスはそっと手綱を握ると、馬の腹に足を当てて、馬の腹を引き締めた。
こうすることで馬が前方へ進もうとするので、手綱をそっと緩めて、馬に前進を任せた。
城内はヘリンが意識を取り戻したことの報告に喜びにあふれていた。
だからこそ、誰もイベリスが馬で外に出たことに気付かなかった。
ボードウィン城を囲む森を抜け、そっと後ろを振り返る。
緑に囲まれた白き城。
「ヘリンお父様。私は必ず、ヘリンお父様の成し遂げられなかったことを成し遂げてみせます」
民を守りたい気持ちと父を傷つけた化け物を許せないという気持ちがイベリスの中にあった。
そっと、馬を回頭させると、目的の場所へ向かうために馬に拍車をかけた。
ヘリンたちが白い化け物に遭遇した場所へ向かうには数々の森を抜ける。
進軍した時の馬の足跡がまだ残っているから、イベリスはそこをなぞっていけばいずれ白い化け物と遭遇するはずだ。
しばらく、馬を走らせていると、イベリスは周囲が寒くなっていくことに気が付いた。
それは治療をしていた騎士から聞いていた話だった。
突然、空気が寒くなり凍り付いていく。
気が付いたら雪が降っていた。
そして、そう気づいた次の瞬間には、吹雪になり視界を奪われて、方向を見失ったと話をしてくれた。
「もう、ここまで、来ていたのですね」
まだ、半日も馬を進めてはいない。
もうすでに近づいてきていたのだ。
イベリスは馬から降りると厚手のコートに身を包んだ。
寒さで動けなくなるという失態を犯さないためにも。
「お馬さん、ありがとう。ここから先は私一人で向かいます」
馬はイベリスのいう事を理解したのかわからないが、そっと身を引いた。
ゆっくりとイベリスのそばを離れていく。
その背をイベリスは静かに見送った。
「無謀なのかしら?」
そう呟く、イベリスの吐く息が白くなって浮かんだ。
温度が急激に下がった気がした。
いや、実際、下がっているのだ。
イベリスは周囲を見回した。
生えている木々を確認すると、一本の木に背中を付けた。
「(方向感覚を失うというのなら、今、ここに見える木の位置を覚えておく。それを目印に歩いて行き当たれば、方向を見失わないはず)」
そう考えながらも、不安だった。
イベリスは武術の訓練もしたことがない。
それは当然ともいえることだ。
本来なら守られるべき、姫という立場にいるのだから。
それでもイベリスはこっそり武術の訓練をしていた。
父ヘリンの役に立ちたいと考えていたし、何よりも冒険の世界に憧れていた。
祖父ボールスの著書を読んでいたから尚更だ。
男に生まれていればと考えたこともあった。
木に背をつけながら、イベリスは短剣を構えた。
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