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[Revenant/Fantome]
[01]第四話 白の中の黒
しおりを挟む周囲の空気がますます、凍り付いていく。
雪が強くなっていく。
「ギギ……ギ」
その時、気味悪い声が吹雪に混じって聞こえてきた。
イベリスは緊張したように背中を伸ばした。
木々をかき分け、鈍い足音が近づいてくる。
「近くに……」
短剣の柄を握りしめる。
そして、深く深呼吸をする。
父でも勝てなかった相手なのだ、自分の剣技が通用するのだろうかと不安になる。
それでも、イベリスはやろうと決めた。
父を国の騎士を苦しめる化け物に一矢報いようと、柄を握る力が強くなる。
「お父様、そしておじい様、どうかお守りください」
胸の前で十字を切り、白い化け物の到来を待つ。
「ギギ、ギニ」
それはもうすでに背後に来ていた。
足音が、真後ろで聞こえた。
次の瞬間、イベリスが背をつけていた木がなぎ倒された。
「きゃあ!」
なぎ倒され、砕かれた木片が吹雪と共に舞う。
イベリスはその衝撃で跳ね飛ばされ、地面に転がる。
白い化け物が近づいていたせいか、すでに雪が積もっていたため、クッションになり叩きつけられることはなかった。
だが、危険な状況であるのには間違いない。
イベリスは気丈にも短剣を手に取ると、白い化け物を見つめた。
獅子のような顔に浮かぶ金色の瞳を見て身震いがした。
白い体躯は雪に消えそうなほどだ。
完成された白のように見えるが、その体躯は所々、褐色に染まっていた。
血。
イベリスはそう認識した。
ヘリンや騎士たちは何もやられていただけではない。
一方的にやられていたのなら、この白い化け物がここまで来るのにこんなに時間をかけるわけがないのだ。
弱らせていたことが見て取れる。
なぜなら、白い化け物の背中に剣が突き刺さっていた。
それはヘリンが使っていた剣だった。
手負いの獣。
最も相手にするのが恐ろしい瞬間だ。
白い化け物はイベリスを認識すると、目の色を変えた。
ここまで自分自身を傷つけた人間に対する怒りを見せつけた。
「ギギガァァァァ」
咆哮を上げ、イベリスに向かってくる。
腕に生えている刃も広げに広げ、突進してくる。
戦い慣れをしていないイベリスは一瞬、その突進に怯んだ。
避けようとした行動が遅れてしまった。
慌てて身を避けるが白い化け物の刃が掠った。
足が斬られて、イベリスの血が雪に散る。
「うぅ……」
それでも逃げなければ、白い化け物の攻撃は続けざまに繰り出されていく。
雪を転がりながら、白い化け物の攻撃を躱していく。
その度に雪にイベリスの血が花の様に舞っていく。
これでは絶体絶命の状況だ。
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