[Revenant/Fantome]

将義双世/マサヨシソウセイ

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[04]第五話 白のあと

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 「……普通の人間なら、な」

クローダスはそう一言漏らすと、押し黙った。

相変わらずクローダスはイベリスの方を向かない。

目線くらいあわせてもいいのにと、少し悲しい気持ちになる。

それに拒絶されているような気持ちにさせられる。

聞いてはいけないことだったのかと思ってしまう。

質問するのをやめようとイベリスが思っていると、クローダスの唇が動いた。

 「俺は耳が良すぎる。それも普通の人間が考えられる範囲以上に、だ」

そう言うと、クローダスは一目だけイベリスの方を見て、すぐに前を向いた。

その一瞬だけ見せたクローダスの瞳は少し寂しそうに見えた。

見上げている状態なのでそう見えただけかもしれない。

黒い瞳がずっと前を見据えている。

音。

遠くの音が聞こえているのだろうか。

だから、ずっと前を向いているのだろうか。

 「もしかして、ボードウィン城の音も聞こえたりするのですか? さっき、騒がしいと言っていましたよね?」

イベリスはクローダスを見つめながら、聞いた。

考えられる範囲以上ならずっと遠くまで聞こえているのだろう。

ボードウィン城の話をした時に確か騒がしいと漏らしたのを覚えていた。

 「お前の話をしている。探している。それで慌ただしい」

クローダスは瞳を一瞬だけ閉じると、イベリスの質問に簡潔に答えた。

耳を澄ましたという事なのだろう。

 「そうなのですか?」

イベリスはそう返しながら眉間にしわを寄せる。

勝手に出てきたのだから心配している事だろう。

飛び出したことを今更ながら後悔した。

残した者の気持ち。

それは痛いほど分かっているのに。

なぜ、同じ苦しみを与えてしまうようなことをしてしまったのだろう。

イベリスがそう考えているのをクローダスは一瞬だけ見て、再び前を向いた。

 「信じないならそれでもいい。普通は信じない。だが、これが俺にとっての普通なのだ」

それを信じられないと受け取った。

表情の些細な動き。

いつも見るような苦い表情。

どうせ、誰も理解しない。

そんな気持ちで前を向いた。

 「それは、信じられない能力であると思います。でも、私は信じます。現に、この馬を見つけてくれました。多分、私だけなら見つけることができなかったでしょう」

イベリスは素直な気持ちでそう言った。

その言葉を聞いたクローダスは驚いた。

嘘やお世辞、取り繕うことのない言葉。

クローダスは相手の言葉を些細な音の振動で嘘かそうでないかを判別できる。

真っ直ぐ返ってきたことは初めてだった。

いや、二回目。

ふと、クローダスは頭の中で言い直した。

一度目は誰が言ったか思い出せなかった。
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