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[Revenant/Fantome]
[05]第五話 白のあと
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「騎士ならそれは雑作もないだろうが、な」
イベリスの言葉にそう返すと、さらに馬に拍車をかけた。
馬が走る速度を上げる。
しばらく走り続けると、森に建つ白亜の城が見えてきた。
ボードウィン城だ。
あと少し、駆ければ着くという所で不意に馬を止められる。
槍を持った兵士がクローダスに向かって叫んだ。
「イベリス姫様! 貴様、姫を浚うなどと不届きものめ!」
その声がクローダスは耳障りだった。
「早く、姫様を放すのだ!」
兵士は槍をクローダスに向けたままもう一度叫ぶ。
黙らせてやりたい。
クローダスはこの叫び声が嫌いで仕方なかった。
そんなに怒鳴らなくても聞こえている。
静かに話せないのかと思った。
黙らせれば楽になる。
そう考えに至ると、剣の柄に手を回す。
「待ってください。私が勝手に、白い化け物を倒そうと思って出て行ったのです。この方は私を助けてくれた恩人です。丁重にもてなし、恩赦を与えてください」
イベリスが兵士に向かって話しかけた。
それが一瞬でも遅ければ兵士はクローダスに斬りつけられていたかもしれない。
まさに絶妙なタイミングだった。
「な、姫様、嘘を吐いているのではないのですか? こんな少年を庇うことなどないのですよ」
イベリスがそう言っても兵士は槍をクローダスに向けたままだった。
姫であるイベリスが白い化け物を倒そうと思って出ていくなどという事は考えにくい。
それにイベリスは誰にでも分け隔てなく優しい。
賊ですら庇う事もあるかもしれない。
訝しげに兵士はクローダスを睨みつける。
「嘘なんてついていません」
イベリスは懸命にそう伝えるが、信頼してもらえない。
「御もてなししなさい。イベリス様が言っていることは本当ですから」
不意にその問答を制止する言葉が降ってきた。
草木をかき分け、その人物は現れた。
「あ、アルフレッド様」
兵士は慌てて、槍を下し、騎士礼を取る。
それを確認したアルフレッドは礼を解くようにと手で合図をする。
「アルフレッド! 無事だったのですね」
アルフレッドの姿を確認したイベリスはそう喜んだ。
あの白い化け物を倒すために遠征したものの中でアルフレッドだけが戻っていなかった。
ヘリンを逃がすためにおとりとなったと聞いていた。
最悪のケースを考えていた。
だから、こうして戻ってきてくれたことに喜びを感じ得ない。
「少々、帰りが遅くなりました。私はこの通り無事にございます。ヘリン様はご無事ですか?」
「はい、無事です」
アルフレッドの質問にイベリスはそう答えた。
「よかった。私はそれだけが心配だったのです」
口元を緩め、安心したように胸を撫で下ろす。
イベリスの言葉にそう返すと、さらに馬に拍車をかけた。
馬が走る速度を上げる。
しばらく走り続けると、森に建つ白亜の城が見えてきた。
ボードウィン城だ。
あと少し、駆ければ着くという所で不意に馬を止められる。
槍を持った兵士がクローダスに向かって叫んだ。
「イベリス姫様! 貴様、姫を浚うなどと不届きものめ!」
その声がクローダスは耳障りだった。
「早く、姫様を放すのだ!」
兵士は槍をクローダスに向けたままもう一度叫ぶ。
黙らせてやりたい。
クローダスはこの叫び声が嫌いで仕方なかった。
そんなに怒鳴らなくても聞こえている。
静かに話せないのかと思った。
黙らせれば楽になる。
そう考えに至ると、剣の柄に手を回す。
「待ってください。私が勝手に、白い化け物を倒そうと思って出て行ったのです。この方は私を助けてくれた恩人です。丁重にもてなし、恩赦を与えてください」
イベリスが兵士に向かって話しかけた。
それが一瞬でも遅ければ兵士はクローダスに斬りつけられていたかもしれない。
まさに絶妙なタイミングだった。
「な、姫様、嘘を吐いているのではないのですか? こんな少年を庇うことなどないのですよ」
イベリスがそう言っても兵士は槍をクローダスに向けたままだった。
姫であるイベリスが白い化け物を倒そうと思って出ていくなどという事は考えにくい。
それにイベリスは誰にでも分け隔てなく優しい。
賊ですら庇う事もあるかもしれない。
訝しげに兵士はクローダスを睨みつける。
「嘘なんてついていません」
イベリスは懸命にそう伝えるが、信頼してもらえない。
「御もてなししなさい。イベリス様が言っていることは本当ですから」
不意にその問答を制止する言葉が降ってきた。
草木をかき分け、その人物は現れた。
「あ、アルフレッド様」
兵士は慌てて、槍を下し、騎士礼を取る。
それを確認したアルフレッドは礼を解くようにと手で合図をする。
「アルフレッド! 無事だったのですね」
アルフレッドの姿を確認したイベリスはそう喜んだ。
あの白い化け物を倒すために遠征したものの中でアルフレッドだけが戻っていなかった。
ヘリンを逃がすためにおとりとなったと聞いていた。
最悪のケースを考えていた。
だから、こうして戻ってきてくれたことに喜びを感じ得ない。
「少々、帰りが遅くなりました。私はこの通り無事にございます。ヘリン様はご無事ですか?」
「はい、無事です」
アルフレッドの質問にイベリスはそう答えた。
「よかった。私はそれだけが心配だったのです」
口元を緩め、安心したように胸を撫で下ろす。
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