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[Revenant/Fantome]
[03]第六話 白い鎧
しおりを挟む無礼な態度をヘリンは気にすることもなく笑う。
「ふふ、そうだな。昔の話だ。それはもはや年寄の杞憂だ」
寛大な王だ。
それでいてお人好しだ。
周囲の人間が愛し、心配するのも分かるというものだ。
「ぜひ、ゆっくりしていってくれたまえ。私は君を歓迎する。イベリスの命の恩人として、そして、この国の危機を救ってくれた事に感謝は言い知れない」
ヘリンはクローダスにそう告げると、柏手を打った。
それは宴の開始を告げる合図だった。
すぐに準備がなされ、宴が開かれる。
騒ぎ、飲めや歌えの祝宴だ。
だが、クローダスには辛いものでしかなかった。
「なぁ、静かなところはないのか? この城はどうしてこんなにうるさいのだ?」
クローダスはイベリスに聞いた。
先ほどの騒がしさも聞こえていたので、クローダスはこの城は終始うるさいものだと思った。
律義に宴の場に居る必要もないとクローダスは感じていた。
誰も、自分が楽しむのに夢中でクローダスの事など気にしていなかったからだ。
「静かなところですか?」
イベリスも宴の席が苦手なようで、壁に張り付いていた。
そんなときにクローダスが話しかけたのだ。
「まぁ、どこに行ってもここの騒がしさは聞こえるだろうからな」
要求しておいて、ないものねだりだとクローダスはふと気づいた。
音はついて回る。
同じ場所なら消えることはない。
「あ、あそこなら、静かですよ。こっちです」
イベリスはクローダスの腕を引っ張る。
静かと言っても、多分、静かではないのだろう。
普通の人間の耳じゃ分からないことなのだろうから、クローダスは仕方ないと諦めた。
「ここです」
イベリスが案内したのは図書室だった。
本が部屋を埋め尽くしているのを見て、普通の図書室だなと思ったが、一歩中に入ると、クローダスは驚いた。
本当に音が消えた。
騒がしさも何もない。
静かなのだ。
こんなことは今までなかった。
同じような図書館に入ったとしても音が消えることはなかった。
不思議で仕方なかった。
「ここは私のおじい様が書斎として使っていた場所なのです。だから、特別な場所なのですよ」
イベリスがそう説明するのをよそにクローダスは机の方へ歩いて行った。
本が重ねられた机。
重ねられた本の間に何かが挟まっているのに気づく。
色褪せているリボン。
元の色は青なのだろうか。
クローダスはそれに触れると、不意に眩暈がした。
何か、誰かの顔が思い出される。
「誰だ……」
声に出して呻いた。
考えると頭が痛い。
ぎりぎりと締め付けられる。
クローダスはリボンから手を離し、机から身を引いた。
「どうしました?」
イベリスが心配そうにクローダスを見ている。
「何でも、ない」
説明するべきか、クローダスは迷った。
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