[Revenant/Fantome]

将義双世/マサヨシソウセイ

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[04]第六話 白い鎧

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 「いや、お前なら話してもいいだろう」

ちらついた顔がどことなくイベリスとかぶる。

だからだろうか、話してもいいと思った。

イベリスは不思議そうな顔をしてクローダスの次の言葉を待っていた。

 「俺は、実は記憶がないのだ。名前もクローダス・グレイティルというのはシルビアがそうだと言ったから名乗っているのだ。本当なのか分からない」

クローダスはそう切り出した。

机のそばにあった椅子を持ってきて、そっとイベリスの側に置く。

足を怪我しているイベリスに立ちっぱなしは辛いだろうと差し出したのだ。

話が長くなることを意味している。

 「記憶喪失?」

イベリスはクローダスの優しさに甘え、椅子に座った。

 「俺は俺自身が分からないのだ。だが、俺が俺を取り戻す手段が一つだけ存在する。そいつらが俺の記憶や能力を持って行ったらしい。倒すと取り戻せる。お前も見たはずだ」

 「白い化け物ですか?」

クローダスの話を聞き、イベリスは思い出していた。

白い化け物―ファントムを倒した後にクローダスの剣に煙の様に吸い込まれた白い靄。

 「そう、そいつらは『ファントム』。昨今を騒がしている『モーヴェ』とは違う。あいつらの特徴は白く、倒すと煙の様に消える。そして、このカールスナウトとヨルクスナウトでなければ、正確にはこの俺が倒さなければ、他のものに憑依し、厄を為す」

クローダスは腰のベルトにつないだ双剣を手で軽く叩きながらイベリスに話した。

 「シルビアが言うには、ファントムが持つ記憶や能力が俺のもので他の人間と違うものだからそうなるのだろうと言っていた。そして、憑依されたものを殺さなければそのファントムを取り除けない」

突拍子もない話だが、嘘を吐いている様子ではない。

 「それじゃ、お父様がファントムを倒してしまっていたのなら……」

そして、恐ろしい話にイベリスは驚愕を覚えた。

 「俺がお前の父親を殺す羽目になっただろう」

もし、ファントム退治を成功させていたらヘリンはファントムに憑りつかれてしまっていたことだろう。

クローダスは隠すことなく、ファントムに憑りつかれたものの末路を話した。

残酷な結果を。

 「よかったと思え。俺はできるだけそんな人間を作りたくないと思っている。何せこれは俺が請け負った業なのだから」

 「きゃあぁぁぁ」

クローダスがそう話し終えた瞬間、静けさが支配していた図書室にも聞こえるような断末魔が響いた。

それを聞いたイベリスとクローダスは急いで外に出る。

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