36 / 42
[Revenant/Fantome]
[04]第六話 白い鎧
しおりを挟む「いや、お前なら話してもいいだろう」
ちらついた顔がどことなくイベリスとかぶる。
だからだろうか、話してもいいと思った。
イベリスは不思議そうな顔をしてクローダスの次の言葉を待っていた。
「俺は、実は記憶がないのだ。名前もクローダス・グレイティルというのはシルビアがそうだと言ったから名乗っているのだ。本当なのか分からない」
クローダスはそう切り出した。
机のそばにあった椅子を持ってきて、そっとイベリスの側に置く。
足を怪我しているイベリスに立ちっぱなしは辛いだろうと差し出したのだ。
話が長くなることを意味している。
「記憶喪失?」
イベリスはクローダスの優しさに甘え、椅子に座った。
「俺は俺自身が分からないのだ。だが、俺が俺を取り戻す手段が一つだけ存在する。そいつらが俺の記憶や能力を持って行ったらしい。倒すと取り戻せる。お前も見たはずだ」
「白い化け物ですか?」
クローダスの話を聞き、イベリスは思い出していた。
白い化け物―ファントムを倒した後にクローダスの剣に煙の様に吸い込まれた白い靄。
「そう、そいつらは『ファントム』。昨今を騒がしている『モーヴェ』とは違う。あいつらの特徴は白く、倒すと煙の様に消える。そして、このカールスナウトとヨルクスナウトでなければ、正確にはこの俺が倒さなければ、他のものに憑依し、厄を為す」
クローダスは腰のベルトにつないだ双剣を手で軽く叩きながらイベリスに話した。
「シルビアが言うには、ファントムが持つ記憶や能力が俺のもので他の人間と違うものだからそうなるのだろうと言っていた。そして、憑依されたものを殺さなければそのファントムを取り除けない」
突拍子もない話だが、嘘を吐いている様子ではない。
「それじゃ、お父様がファントムを倒してしまっていたのなら……」
そして、恐ろしい話にイベリスは驚愕を覚えた。
「俺がお前の父親を殺す羽目になっただろう」
もし、ファントム退治を成功させていたらヘリンはファントムに憑りつかれてしまっていたことだろう。
クローダスは隠すことなく、ファントムに憑りつかれたものの末路を話した。
残酷な結果を。
「よかったと思え。俺はできるだけそんな人間を作りたくないと思っている。何せこれは俺が請け負った業なのだから」
「きゃあぁぁぁ」
クローダスがそう話し終えた瞬間、静けさが支配していた図書室にも聞こえるような断末魔が響いた。
それを聞いたイベリスとクローダスは急いで外に出る。
0
あなたにおすすめの小説
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる