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[Revenant/Fantome]

[02]第七話 白き真珠

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赤が流れたかと思うと、その体は倒れ、白い煙となってクローダスの持つカールスナウトに吸い込まれた。

クローダスは深く息を吸い込み、そして吐き出した。

その時、クローダスの耳に見知った足音が近づいてくるが聞こえた。

遅いんだと悪態をつきたくなったが、ぼやく気にもなれない。

 「クローダスさん、大丈夫ですか?」

イベリスが駆け寄って、クローダスの背中に目を向ける。

 「俺よりもお前の父親を見てやれ。俺はお前の所の家臣を殺したんだぞ」

非難されることはあっても、心配されることはない。

クローダスは割り切っていた。

 「詳しい事情は分かりません。でも、クローダスさんはこの城を、お父様を守ってくれました。アルフレッドは…」

イベリスはボロボロと涙を流した。

割り切れないなら切り捨てろと思った。

面倒くさい。

どちらとも取れぬ感情は重苦しい。

煩わしい。

 「安心しろ。俺はすぐにここを去る。ただ、一つだけ答えてくれ」

クローダスは剣をしまいながら、イベリスに聞いていた。

 「あの絵の人物は誰だ?」

突然聞かれ、イベリスは驚いて涙が止まった。

クローダスの指す方向を見る。

そして、クローダスに向き直る。

 「私のおじい様。ボールス=K・ボゥホートです」

名前がクローダスの中に入り込んでくる。

深く、刻まれるその名前はクローダスの胸をかき乱す。

 「ボールス=K・ボゥホート」

クローダスは静かに呟くと、イベリスに背を向けた。

 「俺は、知っている……?」

そして、瓦礫をかき分け、ボードウィン城を出て行った。

イベリスは放心した様にクローダスの背中を見つめていた。

 「ボールスおじい様を知っている?」

クローダスの残した呟きが異様に頭に残った。



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