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[Revenant/Fantome]
[03]第七話 白き真珠
しおりを挟むクローダスがボードウィン城を出ると、クローダスが来るのを待ち構えていたかのように白銀の鎧を身に纏った人物が現れた。
兜の隙間からのぞかせる茶色い瞳がクローダスを見つめた。
「シルビア。なぜ来るのが遅れた?」
クローダスはそう声をかける。
白銀の鎧を身に纏っているシルビアはクローダスが話に出していた従者だ。
「説明しなくとも貴方様にはお判りでしょう? まだ、ファントムが生きていたからです。」
ファントムを倒しに行く時に限りシルビアは同行しない。
理由を聞いたことがあるが、ついうっかり殺してしまったら大変だろうという事で濁された。
その言葉に少なからず何かが潜み、含まれている言い方で。
その言い回しもずいぶん慣れた。
「それよりも、貴方にしては珍しく怪我を負っていらっしゃいますね。今回のファントムは手強かったのですか?」
クローダスの背中に手をやり、流れ出ている血にそっと触れる。
そして、そのまま上着をめくりあげ、傷の深さを確認する。
「そうでもない。ファントム自体は手強くなかった。ただ、ここの城は異様だ」
怪我の具合を確認したシルビアは、荷物から白い布を取り出すとクローダスの怪我の血をふき取る。
「異様でございますか?」
シルビアはクローダスを治療しながらクローダスの質問に答える。
「俺の超聴覚が消えるなど、異様としか言いようがない」
説明のできない何かをクローダスはシルビアに吐き出す。
「そんな事もあるのですね」
シルビアはそう受け答え、そっと城を見る。
森に佇む白い城。
兜の隙間から覗く瞳が細められる。
「なぁ、シルビア。ボールス=K・ボゥホートという人物を知っているか?」
クローダスは不意にシルビアにそう質問する。
あの肖像画を見てから、気になっていた。
もしかしたら、音が消えたことに何か関係があるのかもしれないとクローダスは考えた。
自分が知らないことをシルビアは知っていることがある。
「はい、知っております。この国では知らぬ者はいないでしょう」
シルビアはさらりと答えた。
残虐な王クローダスと同じように、聖杯探求の騎士ボールスを知らぬ者はいない。
クローダス王が破壊を象徴する者なら、ボールスは再生を象徴する者だ。
全くの正反対の存在だ。
「俺は知っていたのか?」
クローダスの言葉に一瞬、シルビアの動きが止まる。
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