【完結】悲劇の悪役令嬢

詩河とんぼ

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後編

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「シャウラ・ロベリア!!お前は、このミラク・レヴィ子爵令嬢に対して傷害事件を起こした!その他嫌がらせ行為なども確認できた。よってミラクへ謝罪し――」

「お待ちください、シリウス様」

 私は臆せずという様子でシリウス様の言葉を止めましたわ。

「なんだ?申し開きでもあるのか?」

 フンッとシリウス様は私を鼻で笑いました。それを見たギャラリー生徒たちからは断罪かなどクスクスと笑いが漏れました。

「ええ。それ、嘘ですもの。謝罪なんてまっぴらごめんですわ」

「シャウラ様!もう全て罪を認めて楽になりましょう?今なら許してあげますわ」

 来賓の方々からはなんだあの小娘は……と、生徒たちの方からはミラク様……なんてお優しいと意見が二分していました。
 チラッとレヴィ子爵をみると、顔を青ざめさせ、固まっておりました。
 報告にもあった通り、何も知らされていないようでした。

「ああ……なんてミラクは優しいんだ……罪を認めないなら今からやったことを言ってやろう!」

 そう言ってシリウス様は私の罪(?)を読み上げ始めました。

 読み終わるころになると、来賓の方々からも私は疑いの目を向けられはじめました。

「まさか……本当にロベリア公爵家の令嬢が!?」
 
 早く終わらせようかしら。

「全て私ではありません。事実無根ですわ」

 私は無実を訴える。
 すると――

「そういうと思って証人を呼んだ。来い」

「……ナルミア様」

 ガタガタと震えながら次期騎士団長候補のエレア様の婚約者のナルミア嬢が壇上へ上がってきました。

「ナルミア・チューゼ伯爵令嬢!今読み上げたことに誤りはないか!」

 ナルミア嬢はこちらを申し訳なさそうに見て、

「は、はい……」

 と答えました。シリウス様はそれに満足そうにうなずくと、

「お前と仲が良いナルミア嬢のこの回答を聞いても認めないのか」

「私がそちらの誤りを指摘して差し上げますわ、レベッカ」

 私がその名前を言うとミラクは大きく目を見開きました。

「え……?」

「はい。シャウラ様」

 こちらに礼をするミラクと仲が良かったはずの、レベッカ・カートリー子爵令嬢。

「あら?ミラク。知らなかったようね、レベッカの家のカートリー家はロベリア家うちに恩があるのよ?ねぇ」

「はい。ロベリア公爵家の援助のおかげで学園へ入学したり、家の存続が出来ております」

 そう。カートリー家はこの当時の数年前、財政が悪化し没落貴族の一歩手前までいってしまったのです。その時に助けたのがロベリア家。以降カートリー家はロベリア家に少しでも恩を返せるようにと頑張っていました。それを知っていてティアンナ嬢はレベッカが私にそんな口を特に聞いてはいけないと焦っていたのでした。

「それで、ミラクが言っていたことを教えてくれないかしら」

「はい。ミラク・レヴィ子爵令嬢はここ最近゛もうすぐ地位も権力も金も手に入るの!゛と楽しそうに私やティアンナ・ハット男爵令嬢に言っていました」

「どうかしら?ミラク」

 ミラクを見ると一瞬ギロッとこちらを睨んできましたの。
 そして、

「ひどいわ……レベッカにそう脅して言わせて……シャウラ様……見苦しいです」

 と泣き始めました。

「そ、そうだミラクがそんなことをいうわけないだろう!それにミラクの傷のことはどう説明するんだ!まさかミラクが自分でやったとか言うのではないだろうな」

 シリウス様がミラクの傷をギャラリーに見せながら言います。

「ええ。そのまさかですわ。これを聞いて下されば分かると思いますわ」

 私はポケットから小型の録音機を取り出します。普通の録音機は大きいのですが、これは小型なので、いいお値段しました。
 そして再生のボタンを押します。

『あ!シャウラ様!ご苦労様です~私たちの分の仕事もやってもらって~』

 ハッ!という顔を見せたミラクはすぐにいつとられたものなのか分かったようです。
 
『ええ。皆さま、卒業パーティーという大きいパーティーがあるのに、とってもお忙しそうだったので私、頑張ったの。まさに猫の手も借りたかったわ』

『あっはは!そんなのより私の方が大切だもの!あったりまえですよ~!』

「ねぇ!やめて!」

 ミラクはそうわめき始めましたが、もう遅いですわ。
 
『大変大変。私のを忘れるところでした』

『ちょっと、ミラクそれは私のハサミよ。よく切れるし危ないから早く返しなさい』

『あはははは!!今からあなたは私に殺・さ・れ・る・んですよ!社会的に……ねっ!!』

『きゃあぁぁぁ!!』

『きゃぁ』

 録音はここで途切れていました。

「なんで……なんで……」

 ミラクはそう聞いてきました。

「護身用ですわ」

 とぼけた顔をしてそういえば何も追及できないでしょう。

「……シリウス!ねぇ皆も……信じてくれるよね!?」

 ミラクは顔を青ざめながら自分の生徒会の子息たち取り巻きたちに問いかけます。

「……あ、ああ」

「……う、うん」

「………」 

 いくら薬を使ってももう戻れないくらいに間違ってしまったようね。
 それを確認すると、私は指をくるっと一回、回しました。

「俺は……いったい何を?」

「!?」

「……?」

 なんてタイミングの良いことでしょう!生徒会のご子息たちは正気に戻り始めました。
 
「え……ど、どうしたの?」

 もう詰みなのよ、ミラク。

「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……。薬はいつも使ってた!!なんで今……」

 私はぶつぶつと小声で独り言をつぶやいているミラクに近づき、

「抗体でも出来たのではないですか?今一斉に」

 と耳元で囁くと、

「こんの、アマァァ!!」

 と殴り掛かられそうになりました。なにもせず殴られようと突っ立っていると、ミラクを衛兵たちが抑え、舞台から降りさせました。
 どうやら、国王陛下が指示を出したようです。
 ざわざわとどよめく中、

「皆のもの。この件の口外は正式な発表があるまで禁止とする」

 その言葉で卒業パーティーは幕を閉じました。
 せっかく頑張ったのになぁ。



 あの後、ナルミア嬢から深いお詫びがありました。
 なんと家の存続を脅されたのだとか。私はそれを信じることにしましたの。だって知っていますもの。

 また、私はシリウス様から正式な謝罪がありました。
 薬の効果が切れた後はしばらく記憶がなかったようですが、数日後には自分の行いを全て思い出したようでした。私がシリウス様と会ったのは一週間後でした。それまで国王陛下や王妃様、その他の方から雷が落とされていたようです。

「本当に申し訳ない、こんなことで許してもらえるとはつゆほど考えていない。一生をかけて君に償わさせてもらえないかっ」

「いえ、シリウス様は薬を飲まされたのでしょう?それになにかおかしいと思っていたのです。シリウス様が元に戻っただけで私は嬉しいですわ」

私は笑顔でそう言いました。

「ああ……君は……」

 シリウス様は涙を流されました。
 国王陛下から正式に事の顛末が開かされたのはあの卒業パーティーから2日経った後でした。それにより、私は沢山の同情を得ました。
 そうして私は悲劇の悪役令嬢ヒロインと呼ばれるようになり、支持があつい王妃となったのでした。めでたしめでたし。



 とても良いお話でしょう!

 今は私王妃となって、可愛い子供も三人も授かることが出来ました。ちなみに、レイラ達といったあの時の令嬢達とは今でもたまに遊んだりと仲がいいのです。子育ては大変ですが、休む暇はありません。公務もシリウス様より多くやることがありますもの。
 あの一件でたくさんの支持を得ることができたのです。例えば前国王陛下や前王妃様とか。

 え?ミラクは何故おかしくなっていったか? 
 なんでミラクは護衛の目をかいくぐってシリウス様に薬を飲ませられたか?またそれを手に入れられたか?
 そして私は何故見ていない、見れないはずの部分があるのにそれをまるで実際に話すことができるのか?

 ……気づかなくてよいこともあるのですよ?
 ……しょうがないですね、1つだけ教えて差し上げましょう。
 ミラクと初めて話した時、差し出したハンカチは幼いころシリウス様から頂いたとても大切なものでした。それをゴミをみるような目で一瞬彼女は見ました。それだけでなく、シリウス様に気があるようでしたの。
 すこし頭に来ましたが私は寛大なので、逆にすこーしをしたり、シリウス様とミラクがしゃべれるようにしてあげたのですよ?そしたらミラクが勝手にやったことで、私は知らなかったのです!!我が儘ではないと思いますわよ?私は。

 あ、ミラクのその後は知りません。興味がないので。

 とまあお話はここまでにいたしましょうか。もう少しお話したかったのですが、呼ばれてしまいました……。頼られているのですよ、私。

 それでは、さようなら。また会う日まで!
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みんなの感想(1件)

おじちゃん
2025.09.23 おじちゃん

お節介ながら…「主席」ではなく「首席」かと、「首位」と同じ使い方なので。他の作家さんもよく間違えておいでですが、共産圏のトップみたいで違和感あります。

2025.09.26 詩河とんぼ

ご指摘ありがとうございます。共産圏のトップ……違和感しかないですね……知りませんでした。以後気をつけていきます!

解除

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