異世界対応型婚活システムーあえ~るー 川西美和子の場合

七戸 光

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川西美和子の場合

川西美和子、モヤモヤします

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 ケイからの連絡が3日に1回という頻度になったことに、私は大きな衝撃を受けた。
 動物園に行った翌日から連絡が来なくなり、もしかしてブロック的なことをされてしまったのかと不安になっていた3日後に連絡が来た。
 しかもとても変な文章で。

【美和子様

 返事が遅くなり申し訳ありません。
 今、私は多忙を極めており、いつものように返事を送る事すらままなりません。どうかしばらくの間、3日に1度の 連絡になることをお許し下さい。  ケイ・ヨ・ルー】

 最近はケイからのメッセージの違和感はほとんどなくなっていたから、このタイミングでこんな文章が来ることにとても驚いた。
 また心の距離が開いたみたい。
 いや、もはやこれは心の距離とか言うレベルじゃないよね。
 これは今まで会ってたケイとは完全に別人じゃないかな……ん? 別人?
 ふと、ケイと初めて会った日に退室を渋った付き人さんの顔が頭をよぎる。。
 天然パーマだろう波打つ黒髪の長髪を後ろで束ねた、気の強そうなイケメンだった。
 確か、セントさんだったか。

「――いや、まさかね」

 とりあえずこちらは今まで通りの姿勢で返事を書く。

【ケイ

 お返事ありがとう。忙しいなら無理しないでね。
 返信の速度が遅くなっても気にしないからね。返事をくれるだけで十分嬉しいから。
 お仕事大変なの?何か悩んでいることがあったら、相談してほしいな。   美和子】

 メッセージを書きながら今の状況をもう一度考え直してみると、先ほどまで感じていたケイが離れていくような不安感は少なくなっていた。
 そもそも社会人なのにメッセージに即返信できる環境が特殊なんだ。
 忙しいのは当たり前だし、むしろ3日に1回の頻度は十分あり得るだろう。
 それでも私の心は明るくならない。
 どうしてだろう? 
 不安……とは違う気がする。

 ふとケイにもらったぬいぐるみが目に入った。
 ケイと同じ色合いのぬいぐるみは本棚の上に写真と一緒に飾ってある。
 あの時どんな気持ちでこの子をくれたのだろうか。ケイの緊張した顔を思い出すと、思わず口元が緩んだ。
 それに考えるべきことは他にもある。
 アキラとのことだ。
 心情としては、『真剣に考えて欲しい』と言われたことに向き合いたいと思っていた。
 正直なところ元カレから庇ってくれたアキラに、私は少なからず好感を抱いている。

「はぁ」

 タメ息が漏れる。
 アキラとの連絡頻度は相変わらずで、会話の内容は少しだけ深くなった。
 家族や周りの交友関係をより深く話してくれるようになっていた。
 未だ元カノの話だけは聞いていないが。
 そして質問してくることが増え、今までより私の話を聞きたいと言ってくれるようになった。
 だから、私も自分のことをより深く話すようにした。
 考え方や価値観等、私を理解しようとして、知ろうと思ってくれることはとても幸せなことだと思う。
 もやもやと悩んだときは渡瀬神社で一室を借り、やたちゃん先輩と報告会をすることにしている。

 今回もガッツリ悩みまくりである。
 またしても縁側で1人と1匹の井戸端会議だ。
 アキラとの2回目のデートでドキドキしたこと。
 実はちょっと忘れかけていた、元カレ乱入事件。
 もやもやしたまま迎えたケイとのデートで、きゅんきゅんすることが沢山あった。
 最後はプレゼントをもらって、アキラと会っていることに気付かれてしまった。
 それでケイを傷つけたかもしれないこと。
 ケイの連絡頻度が遅くなり、メッセージの違和感が復活してきたこと等々……。
 ここ最近の濃い出来事を報告する。
 私の話を聞き終わったやたちゃん先輩は、止まり木の上で首をひねっている。

「ほ~。よくそんなにたった数日で急展開を迎えるな。それにしても元カレがクズすぎだろう。過去のお嬢ちゃんは男を見る目がなかったのか」

「ホントに!! 自分でも正直そう思います。元カレはもう私、ホントに、私の見る目がなかったんだってことが良く分かりました」

「まぁ、次があるさ。今回の2人はどっちも真面目そうだしいいんじゃないか? 正直に誠意で返す。真面目なお嬢ちゃんにはピッタリだろ」

「……そうですね。アキラに言われて、実際の文化の違いとか、家族の事とか、現実的なことを考えるようにもなったと思います。ケイに関しては、自惚れてるかもしれませんが、初めて会ってからずっと、私のことを特別に想ってくれていると感じてて。それが、その、嬉しいみたいなんです。でも……」

 ケイの気持ちを信じたいと思っている。
 けれど、信じきれないところがある。
 まるで水に一滴の黒いインクを垂らしたみたい。ジワリと広がって、影を落とす。

「そうか。でもお嬢ちゃんは……まぁいいんじゃないか? どっちを選んでもお嬢ちゃんが後悔しないようにな」

 やたちゃん先輩は優しく諭すようにそう言った。

「はい。後悔しない様に頑張ります」

 私も緑茶を飲む。温かい飲み物が染み渡って、ほっと息が漏れた。

「うんうん。まぁケイはこれから少し忙しいんだろ? 次、会う予定はまだ決まってないんだったな。アキラの方はある意味順調そうだが、予定は決まったのか?」

「あ、それは決まりました。今度の週末に私がアキラの世界に行く予定です」

「そうか、ほかの世界も楽しんで来いよ! それにしても、ケイのメッセージの違和感は何なんだろうな」

 首をひねり、目をぱちぱちさせるやたちゃん先輩がカラスに見える。まあカラスなんだけれど。

「そうなんですよ。会ってみると、あのメッセージの違和感が益々大きくなるんですよね。ホントに不思議。だって今日、紬さんに聞いたんですけど、『キューピッドくん』って渡された本人しか使えないようになってるらしいです。だから、別人が書くことは出来ないらしいんですよ」

 やたちゃん先輩は左右の翼を逞しい鳩胸の前で組み、首をかしげている。

「そうなのかー。確かに、エレクタラの技術力は凄いからなー。そんなセキュリティが掛かってるなら本人が書いたのかもしれねぇな」

「そんなにエレクタラの技術ってすごいんですか?」

「そうらしいぞ。おじさんは渉の話で聞いただけだが、地球版『あえ~る』の作成や『キューピッドくん』の作成に協力してもらってるらしいぞ。今回のテストケースが予定より早まったのも、その技術が高くて開発スピードが上がったかららしい。だから、全国公募で集める予定だったテストケースの体験者を、紬たちが自分でスカウトすることになったんだ」

 そんな裏話があったのか。全国公募で選んでいたら、応募はたくさん来てきっと私なんか当たらなかっただろう。
 今の現状はそんな偶然の中で起きた奇跡なのか。凄いことだなぁ。
 だからこそこの出会いを大切にしなければ、改めてそんな決意をするのだった。
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