異世界対応型婚活システムーあえ~るー 川西美和子の場合

七戸 光

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川西美和子の場合

川西美和子、異世界人に提案されます

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 ケイと自宅で会うようになって2日目。
 家に帰って数時間もすればケイと会うことができると思うと楽しみで、仕事のだるさなんかも気にならなくなる。
 家に自分以外の人がいると、それだけで明るく感じるのは何故だろう?
 一人暮らしの寂しさが軽減される気がする。



 昨日と同じ時間にケイが来た。
 今日は渉さんも言っていた通り1人だ。

「こんばんは。ミワコ」

「ふふ、こんばんは。さ、どうぞ」

「うん。神社に行った時も思ったんだけど、ミワコの世界は靴を脱ぐのが面白いね」

 そう言ってケイは興味深そうに玄関を眺めている。

「世界がというよりは日本が靴を脱ぐ文化なんだよ。ケイの国は脱がないの?」

「そうなんだね。うん、脱がないよ」

「へぇー! あ、昨日と同じようにソファに座ってて。お茶入れてくるからね」

「うん。ありがと」

 ケイを部屋に残して、お茶の準備をしてから戻ると、ケイが昨日も触れた紫のぬいぐるみを触って遊んでいた。
 耳とお腹をもみもみしているようだ。可愛い……。

「はい。どうぞ、今日も昨日と同じカフェインレスコーヒーにしてみたよ。お茶請けは美味しそうだったから買ってみたチョコチップクッキー」

「ありがとう。いただきます」

 クッキーを摘まみながら、今日あった出来事を話す。私の話は主に仕事のことが多くなった。
 ケイはとても聞き上手だ。
 相槌を打ちながら聞いてくれて、時には話を広げてくれるから、とても話しやすい。

「――ってことがあって、職場に警報が鳴り響いて大騒ぎになってね」

「ふふふ。大変だったんだね」

「ほんと。ガス警報器がアルコールに反応しちゃうとは思わなかったからびっくりしちゃったよー」

 今日のネタは、職場であったゴキブリ撃退によるガス警報器の誤作動大事件の話だ。
 厨房の警報器は、とても敏感に作られているらしい。

「ケイは普段どんな仕事をしているの?」

「うーん。主にコンピューターのプログラムを開発したり、会社とかのシステムの調整を受け付けたりしてるかな」

「すごいね! こっちの世界でもそういう仕事あるけど、私プログラミングとか全然分からないや」

「『あえ~る』のシステムにも関わってるよ。ミワコの使っている『キューピッドくん』も僕達が作ったんだ」

「そうなんだ! いつもお世話になってます」

「どういたしまして」

 はにかむケイが、可愛らしい。
 もっと綺麗な瞳が見たい、ふとそう思って提案してみた。

「ねぇケイ。家の中では前みたいに前髪上げておかない? 私、ケイの目を見て話したいな」

「いいよ……僕も、ミワコの可愛い顔をもっと見たい」

「ありがとう。私がケイの髪を結んであげるね。っていうか触らせてください」

「いいよ」

 飾りのついていないヘアゴムを取ってきて、ケイの前に座る。
 ケイの前髪を指で掬って束ね、ヘアゴムでくくった。
 どさくさに紛れてふわふわの髪をなでなでしておく。
 柔らかくて猫のお腹をさすっているみたい!
 ずっと触っていたくなる触り心地だ。
 くくったところをそのままにしておくと、ちょんまげみたいになるのでヘアピンで後ろへ流すように留める。
 うん、相変わらず綺麗なアメジスト色の瞳だ。
 ケイは自分の髪がどうなっているのか分からないようで、触って確かめようとするので、自分の前髪を同じようにピンで留めてみた。

「どうかな? 見やすくなった? お揃いだよ」

 そう言ってケイの前で頭を左右に振ってみる。

「お揃い! ミワコ、可愛い……」

「ケイも似合ってるよ」

 鏡を取ってきて、2人で映る。
 お互いに褒め合って、にこにこ笑い合って、これが平和か、なんて思う。

「あ! そうだ。ミワコにお願いがあったんだった」

「ん? なあに?」

「僕にミワコの母国語を教えて欲しいんだ。ミワコの国の言葉で話せるようになりたい。今はネックレスに頼っているけど、翻訳がなくてもミワコと話せるようになりたいから、お願い」

 ケイは必殺、上目遣いを使った。私には効果は抜群だ。 
 ――まぁ元々教えることには反対もしていないので、特に障害も無いけれど。

「いいよ。上手く教えられるか分からないけど、ケイが覚えたいなら教える。明日は準備しとくね」

「ありがとう」

 ケイが笑って言った。
 ぱぁっと花が咲きそうなぐらい嬉しそうにされると、こちらも答えたくなるし嬉しくなる。
 ケイと話している時間は楽しくて、あっという間に終わってしまう。
 その後暫く、我が国の代表的な害虫、ゴキブリとは何かをケイに説明しているうちに時間が来てしまって、ケイは自分の世界へ帰って行った。
 なんだかケイはシンデレラみたい。
 そして、今日も帰り際にケイが言ってくれた「おやすみ」の一言はちょっと嬉しい。
 1人では絶対言わない言葉だから。
 また明日、ケイと会うのが楽しみになった。

 けれど、楽しい時間が終わると寂しさは膨らむ。
 歯磨きしてる時や布団に入った後、ふとした瞬間にアキラの事を思い出してしまった。
 アキラはケイみたいにボディタッチが多いタイプではなかった。
 男の子らしい鈍さもあるが、気遣ってくれる優しさがあり、憎めない明るさがあって、人懐っこく、適度な距離感を維持して話してくれていた気がする。
 ケイとアキラの違うところを思い浮かべては、比べてしまう自分が嫌になって、今日も思考を放棄するように眠りについた。
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