23 / 37
川西美和子の場合
川西美和子、異世界人に提案されます
しおりを挟む
ケイと自宅で会うようになって2日目。
家に帰って数時間もすればケイと会うことができると思うと楽しみで、仕事のだるさなんかも気にならなくなる。
家に自分以外の人がいると、それだけで明るく感じるのは何故だろう?
一人暮らしの寂しさが軽減される気がする。
昨日と同じ時間にケイが来た。
今日は渉さんも言っていた通り1人だ。
「こんばんは。ミワコ」
「ふふ、こんばんは。さ、どうぞ」
「うん。神社に行った時も思ったんだけど、ミワコの世界は靴を脱ぐのが面白いね」
そう言ってケイは興味深そうに玄関を眺めている。
「世界がというよりは日本が靴を脱ぐ文化なんだよ。ケイの国は脱がないの?」
「そうなんだね。うん、脱がないよ」
「へぇー! あ、昨日と同じようにソファに座ってて。お茶入れてくるからね」
「うん。ありがと」
ケイを部屋に残して、お茶の準備をしてから戻ると、ケイが昨日も触れた紫のぬいぐるみを触って遊んでいた。
耳とお腹をもみもみしているようだ。可愛い……。
「はい。どうぞ、今日も昨日と同じカフェインレスコーヒーにしてみたよ。お茶請けは美味しそうだったから買ってみたチョコチップクッキー」
「ありがとう。いただきます」
クッキーを摘まみながら、今日あった出来事を話す。私の話は主に仕事のことが多くなった。
ケイはとても聞き上手だ。
相槌を打ちながら聞いてくれて、時には話を広げてくれるから、とても話しやすい。
「――ってことがあって、職場に警報が鳴り響いて大騒ぎになってね」
「ふふふ。大変だったんだね」
「ほんと。ガス警報器がアルコールに反応しちゃうとは思わなかったからびっくりしちゃったよー」
今日のネタは、職場であったゴキブリ撃退によるガス警報器の誤作動大事件の話だ。
厨房の警報器は、とても敏感に作られているらしい。
「ケイは普段どんな仕事をしているの?」
「うーん。主にコンピューターのプログラムを開発したり、会社とかのシステムの調整を受け付けたりしてるかな」
「すごいね! こっちの世界でもそういう仕事あるけど、私プログラミングとか全然分からないや」
「『あえ~る』のシステムにも関わってるよ。ミワコの使っている『キューピッドくん』も僕達が作ったんだ」
「そうなんだ! いつもお世話になってます」
「どういたしまして」
はにかむケイが、可愛らしい。
もっと綺麗な瞳が見たい、ふとそう思って提案してみた。
「ねぇケイ。家の中では前みたいに前髪上げておかない? 私、ケイの目を見て話したいな」
「いいよ……僕も、ミワコの可愛い顔をもっと見たい」
「ありがとう。私がケイの髪を結んであげるね。っていうか触らせてください」
「いいよ」
飾りのついていないヘアゴムを取ってきて、ケイの前に座る。
ケイの前髪を指で掬って束ね、ヘアゴムでくくった。
どさくさに紛れてふわふわの髪をなでなでしておく。
柔らかくて猫のお腹をさすっているみたい!
ずっと触っていたくなる触り心地だ。
くくったところをそのままにしておくと、ちょんまげみたいになるのでヘアピンで後ろへ流すように留める。
うん、相変わらず綺麗なアメジスト色の瞳だ。
ケイは自分の髪がどうなっているのか分からないようで、触って確かめようとするので、自分の前髪を同じようにピンで留めてみた。
「どうかな? 見やすくなった? お揃いだよ」
そう言ってケイの前で頭を左右に振ってみる。
「お揃い! ミワコ、可愛い……」
「ケイも似合ってるよ」
鏡を取ってきて、2人で映る。
お互いに褒め合って、にこにこ笑い合って、これが平和か、なんて思う。
「あ! そうだ。ミワコにお願いがあったんだった」
「ん? なあに?」
「僕にミワコの母国語を教えて欲しいんだ。ミワコの国の言葉で話せるようになりたい。今はネックレスに頼っているけど、翻訳がなくてもミワコと話せるようになりたいから、お願い」
ケイは必殺、上目遣いを使った。私には効果は抜群だ。
――まぁ元々教えることには反対もしていないので、特に障害も無いけれど。
「いいよ。上手く教えられるか分からないけど、ケイが覚えたいなら教える。明日は準備しとくね」
「ありがとう」
ケイが笑って言った。
ぱぁっと花が咲きそうなぐらい嬉しそうにされると、こちらも答えたくなるし嬉しくなる。
ケイと話している時間は楽しくて、あっという間に終わってしまう。
その後暫く、我が国の代表的な害虫、ゴキブリとは何かをケイに説明しているうちに時間が来てしまって、ケイは自分の世界へ帰って行った。
なんだかケイはシンデレラみたい。
そして、今日も帰り際にケイが言ってくれた「おやすみ」の一言はちょっと嬉しい。
1人では絶対言わない言葉だから。
また明日、ケイと会うのが楽しみになった。
けれど、楽しい時間が終わると寂しさは膨らむ。
歯磨きしてる時や布団に入った後、ふとした瞬間にアキラの事を思い出してしまった。
アキラはケイみたいにボディタッチが多いタイプではなかった。
男の子らしい鈍さもあるが、気遣ってくれる優しさがあり、憎めない明るさがあって、人懐っこく、適度な距離感を維持して話してくれていた気がする。
ケイとアキラの違うところを思い浮かべては、比べてしまう自分が嫌になって、今日も思考を放棄するように眠りについた。
家に帰って数時間もすればケイと会うことができると思うと楽しみで、仕事のだるさなんかも気にならなくなる。
家に自分以外の人がいると、それだけで明るく感じるのは何故だろう?
一人暮らしの寂しさが軽減される気がする。
昨日と同じ時間にケイが来た。
今日は渉さんも言っていた通り1人だ。
「こんばんは。ミワコ」
「ふふ、こんばんは。さ、どうぞ」
「うん。神社に行った時も思ったんだけど、ミワコの世界は靴を脱ぐのが面白いね」
そう言ってケイは興味深そうに玄関を眺めている。
「世界がというよりは日本が靴を脱ぐ文化なんだよ。ケイの国は脱がないの?」
「そうなんだね。うん、脱がないよ」
「へぇー! あ、昨日と同じようにソファに座ってて。お茶入れてくるからね」
「うん。ありがと」
ケイを部屋に残して、お茶の準備をしてから戻ると、ケイが昨日も触れた紫のぬいぐるみを触って遊んでいた。
耳とお腹をもみもみしているようだ。可愛い……。
「はい。どうぞ、今日も昨日と同じカフェインレスコーヒーにしてみたよ。お茶請けは美味しそうだったから買ってみたチョコチップクッキー」
「ありがとう。いただきます」
クッキーを摘まみながら、今日あった出来事を話す。私の話は主に仕事のことが多くなった。
ケイはとても聞き上手だ。
相槌を打ちながら聞いてくれて、時には話を広げてくれるから、とても話しやすい。
「――ってことがあって、職場に警報が鳴り響いて大騒ぎになってね」
「ふふふ。大変だったんだね」
「ほんと。ガス警報器がアルコールに反応しちゃうとは思わなかったからびっくりしちゃったよー」
今日のネタは、職場であったゴキブリ撃退によるガス警報器の誤作動大事件の話だ。
厨房の警報器は、とても敏感に作られているらしい。
「ケイは普段どんな仕事をしているの?」
「うーん。主にコンピューターのプログラムを開発したり、会社とかのシステムの調整を受け付けたりしてるかな」
「すごいね! こっちの世界でもそういう仕事あるけど、私プログラミングとか全然分からないや」
「『あえ~る』のシステムにも関わってるよ。ミワコの使っている『キューピッドくん』も僕達が作ったんだ」
「そうなんだ! いつもお世話になってます」
「どういたしまして」
はにかむケイが、可愛らしい。
もっと綺麗な瞳が見たい、ふとそう思って提案してみた。
「ねぇケイ。家の中では前みたいに前髪上げておかない? 私、ケイの目を見て話したいな」
「いいよ……僕も、ミワコの可愛い顔をもっと見たい」
「ありがとう。私がケイの髪を結んであげるね。っていうか触らせてください」
「いいよ」
飾りのついていないヘアゴムを取ってきて、ケイの前に座る。
ケイの前髪を指で掬って束ね、ヘアゴムでくくった。
どさくさに紛れてふわふわの髪をなでなでしておく。
柔らかくて猫のお腹をさすっているみたい!
ずっと触っていたくなる触り心地だ。
くくったところをそのままにしておくと、ちょんまげみたいになるのでヘアピンで後ろへ流すように留める。
うん、相変わらず綺麗なアメジスト色の瞳だ。
ケイは自分の髪がどうなっているのか分からないようで、触って確かめようとするので、自分の前髪を同じようにピンで留めてみた。
「どうかな? 見やすくなった? お揃いだよ」
そう言ってケイの前で頭を左右に振ってみる。
「お揃い! ミワコ、可愛い……」
「ケイも似合ってるよ」
鏡を取ってきて、2人で映る。
お互いに褒め合って、にこにこ笑い合って、これが平和か、なんて思う。
「あ! そうだ。ミワコにお願いがあったんだった」
「ん? なあに?」
「僕にミワコの母国語を教えて欲しいんだ。ミワコの国の言葉で話せるようになりたい。今はネックレスに頼っているけど、翻訳がなくてもミワコと話せるようになりたいから、お願い」
ケイは必殺、上目遣いを使った。私には効果は抜群だ。
――まぁ元々教えることには反対もしていないので、特に障害も無いけれど。
「いいよ。上手く教えられるか分からないけど、ケイが覚えたいなら教える。明日は準備しとくね」
「ありがとう」
ケイが笑って言った。
ぱぁっと花が咲きそうなぐらい嬉しそうにされると、こちらも答えたくなるし嬉しくなる。
ケイと話している時間は楽しくて、あっという間に終わってしまう。
その後暫く、我が国の代表的な害虫、ゴキブリとは何かをケイに説明しているうちに時間が来てしまって、ケイは自分の世界へ帰って行った。
なんだかケイはシンデレラみたい。
そして、今日も帰り際にケイが言ってくれた「おやすみ」の一言はちょっと嬉しい。
1人では絶対言わない言葉だから。
また明日、ケイと会うのが楽しみになった。
けれど、楽しい時間が終わると寂しさは膨らむ。
歯磨きしてる時や布団に入った後、ふとした瞬間にアキラの事を思い出してしまった。
アキラはケイみたいにボディタッチが多いタイプではなかった。
男の子らしい鈍さもあるが、気遣ってくれる優しさがあり、憎めない明るさがあって、人懐っこく、適度な距離感を維持して話してくれていた気がする。
ケイとアキラの違うところを思い浮かべては、比べてしまう自分が嫌になって、今日も思考を放棄するように眠りについた。
0
あなたにおすすめの小説
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
行き遅れ令嬢の再婚相手は、ダンディな騎士団長 ~息子イケメンの禁断の守護愛~
柴田はつみ
恋愛
貧乏貴族の行き遅れ令嬢リアナは、28歳で社交を苦手とする大人しい性格ゆえに、結婚を諦めかけていた。
そんな彼女に王宮から政略結婚の命令が下る。再婚相手は、妻を亡くしたダンディな騎士団長ギルバート。
クールで頼れる40代のイケメンだが、リアナは「便利な道具として選ばれただけ」と誤解し、切ない想いを抱く。
さらに、ギルバートの息子で爽やかイケメンのエリオット(21歳)が義理の息子となる。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる