異世界対応型婚活システムーあえ~るー 川西美和子の場合

七戸 光

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川西美和子の場合

川西美和子、決着をつけます

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 それからの渉さんの行動は早く、あっという間にアキラと会う手筈が整っていて、私は涙をぬぐう暇もなく、金属の国アルミニアムの赤土の大地を踏みしめていた。
 緊急のため、あまり時間は取れないらしいが、それは現状を考えるとむしろ好都合のような気もしている。
 私としては気まずすぎて、何を言っていいか分からない。
 アキラが会うと言わなければ、正直逃げたい気持ちでいっぱいだ。
 金属の国のアーチと女神像の傍、人の少ない空き地で簡易的に会うことになった。
 私がアーチを潜って到着した時には既にアキラは待っていたので、心の準備も何も出来ないままだ。

「ミワコ!」

「……アキラ」

 アキラに重なるように、オモチャを加えた犬が尻尾を振りながら向かってくる幻覚が見える。
 嬉しそうに笑うアキラに心が痛い。
 軽く現状から逃避してしまいそうだが、何とか意識を取り戻す。
 口火を切ったのはアキラの方だった。

「……ゴメン! 俺が誤解させた!」

「え? いやいや、私の連絡取ってる人が、ハッキングしたんだからアキラは何も悪くないよ!」

 シュンとした顔でアキラが頭を下げた。

「でも! 俺が送ったメッセージの内容で誤解させたのはホントだろ? 随分泣かせたって聞いた」

 悲し気に眉をひそめたアキラの手が伸びてきて頬を撫でる。
 無意識だったが、反射的に後ろに下がってしまった。
 アキラはとても驚いたようで、そのまま手を下ろした。その顔に罪悪感が募る。

「――悪い、急に触った」

「……ううん。ごめんなさい」

 今まででは考えられないような沈黙が流れる。
 暫くして口火を切ったのはアキラだった。
 アキラは大きく息を吸い込んで吐き出す。

「――ふぅ。なぁ、ミワコ、俺、ミワコが好きだ。この国で一緒に生きて欲しい……ってあの日、この国に来てくれた時に、言おうと思ってたんだ。仕事に駆り出されて言えなかったけど」

 アキラは困ったように笑っている。

「だけど、遅かったな……」

 にっかり笑ったアキラが言った。

「ミワコ、幸せになれよ」

 アキラを見ていたはずの視界がゆがむ。
 事前に仲人さんから話はいっていたはずだから、アキラは私がケイを好きになったことも、私とアキラの連絡を遮断した原因が彼かもしれないことも分かっていて、会いたいと言ってくれたのだろう。
 怒ることもなく、笑って、背中を押してくれる本当に優しい人だ。
 私が考えていたより、ずっとずっとアキラは大人で、おおらかで、私の事を想ってくれている、所謂『いい男』だった。

「ごめん……」

「謝るなよ。現実で普通に恋愛したって三角関係とかライバルの妨害なんてよくある事だろ。俺がちゃんとミワコに気持ちを伝えなかったからこうなったんだ。ミワコのせいじゃない」

 この人は、謝らせてもくれないのか。
 その優しさがとても辛い。
 ぽたぽたと私の頬を伝う涙に、アキラは一瞬手を伸ばしかけたが、途中で止まりそのまま手を下ろした。

「もう行けよ。好きな男に確認しないといけないことがあるんだろ?」

 そうだ。ケイに会わなきゃいけない。いや、会いたい!
 会って、好きって言わなきゃ、何でこんなことしたのか聞かなきゃ。でも……。
 急に不安がこみ上げる。

「でも、告白聞いてもらえなかった……好きって言うくせに、私の気持ちは聞いてくれなかったの……」

 私の気持ちが迷惑になるから? 嫌われたらどうしよう?
 そんな思いで一杯になって、俯いてしまう。
つい、アキラに愚痴をこぼしてしまった。

「……俺が相手の男なら、自分で自分の決着をつけたいって考えたと思う。それは男のプライドみたいなもんだから、ミワコにはわかんないかもしれないけど……俺はちょっとそいつの気持ちが分かる」

 アキラはどこか遠くを見ながら話しているようだった。

「だから」

 暫く視線をそらしていたアキラと目が合った。

「ミワコは気にせず、自分の気持ちを言ってやればいい。そういうときの男のプライドは、大抵貫いたってろくなことがないような些細なことだったりするから。大事なものを見失うよりよっぽどいい」

 アキラの言葉でストンと胸のつっかえが取れたような気がした。
 そしたらだんだんケイに腹が立ってくる。
 勝手に、私の気持ちも聞かないで、こんなことになって、説明もないなんて。
 絶対好きって言ってやる。
 日本語の好きを勉強したいんじゃなかったの? 私まだ教えてないけど!
 言ってくれるんじゃないの!?
 腹立たしくなったら、一度ガツンと言ってやらないといけない気がしてきて、いてもたってもいられなくなって、すぐにケイに会いたくなった。

「アキラ! ありがとう!! 私帰るね!」

「あぁ。元気でな」

「うん……本当にありがとう」

 私は踵を返し、すぐさま走って少し離れたところにいてくれた紬さんと合流する。
 そして、来た時と同じように女神像の方へアーチを潜った。
 元の世界に戻るまで、私は一度も振り返ることはなかった。
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