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川西美和子の場合
川西美和子、ご両親に会います
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ジンさんに連れられてエレクタラの王宮へ入る事になってしまった私。
何でこんなことに……私はケイに自分の気持ちを伝えるために探していただけなのに。
それより、今日は渡瀬神社に行った時の普段着のままで金属の国に行ったわけだ。
つまり、今から普段着でケイのご両親、王族の方に会うのだ。
せめて化粧直しがしたかった……せめてもうちょっと小奇麗な服で……はぁ。
私が現実逃避しながら付いて行っていたので、ジンさんに「ついたぞ」と言われるまで、止まったことにすら気付かなかった。
どこを通ったのかも分からないし、あんなに気になっていたこの城の内部構造も全く覚えていない。
目の前にあるのはキリンが通れそうなほど高いところまである白い扉だ。
白いベルベットの様な布が飾られていて、扉自体にも精巧な彫り物がしてある。
花の模様のようだ。薔薇に似ているだろうか。
それにしてもいざ、扉の前に立つと緊張が激しすぎて、呼吸が苦しくなってきた。
体中の汗腺から何か噴出しているような気がしてならない。
もうホントになんなんだ。今日は。
キイ――
「!!」
ジンさんが扉を開けた。大きな扉にもかかわらず、開いた音は驚くほど静かで心地よい。
私はショックで目を見開いてジンさんを見た。
私の心の準備が途中だったにもかかわらず! ジンさん!
ジンさんは私の反応など、どこ吹く風といった様子で、早く入るよう促してくる。
おずおずと一歩、室内へ足を踏み入れた。
背後で扉が閉まる音がする。
正面に見えるのは玉座と演説で見た男性。ハク陛下だ。
やっぱりケイと似ている。
めちゃくちゃ憂いのある色っぽい人だ。
ケイに渋みと色気が加わるとこうなるのだろうか?
玉座の周囲に沢山の人。
ドレスを着たマダムから小学生ぐらいの子供まで、いろんな人がいる。
皆様素晴らしい高級そうな身なりだ……胃、痛い。
ジンさんが私の前に出て、礼の姿勢をとった。
とたんに陛下の後ろから小さなクスクス笑いがちらほら上がった。
「父上、ミワコ嬢をお連れしました」
「寄れ」
「はっ」
また漏れるクスクス笑い。
好きな人のご両親やご家族に会っているのに、私の格好が……恥ずかしくて涙が出そうだ。
ジンさんが立ち上がり、こちらを見て「行くぞ」と訴えている。
私の顔色は最悪だろうが、ケイの所に一刻も早くたどり着くためと心を無にするつもりで進み出た。
玉座へ一歩一歩進む。
王族の方の顔を見ることが出来なくて、少し先の床を見続けていた。
大理石のような白い床が長い。
ケイのご家族から2mほどの位置まで進んだ所でジンさんが跪いたので、私もそれに倣う。
クスクス笑いは収まらない。
「……お前たち、お客人の前だ。ちょっと黙っていなさい」
途端に辺りが静かになった。
「煩くてすまないな。あまりに普段のジンからは想像できない振る舞いが、私の家族にとって面白いだけだ。異界のお嬢さん、頭を上げなさい。ジンお前もだ」
それを聞いて張りつめていた緊張と恐怖感がほぐれ、安心にすり替わって、とてつもなくホッとした。
そして、ジンさんの普段の様子が気になった。
国王陛下に礼をしただけで笑いが漏れるような振る舞いって何?
「ようこそエレクタラへ。ミワコ・カワニシ嬢。私はケイの父、ハク・キューという。こちらがケイの実母テルだ」
陛下のすぐ右隣にいた女性が前に進み出た。
淡いミルクティーブラウンの長い髪が美しい、優し気な女性だ。
微笑んでいる顔や雰囲気はケイとよく似ている。
慌てて日本式だが礼をする。テル様はニッコリ笑って頷いてくれた。
「先ずは君に謝罪せねばならない。君が『あえ~る』を用いて連絡を取っていた相手を、セントが妨害したことについてだ」
陛下がそう言うと、たちまちその場の空気が張り詰める。
そして、ハク陛下が語ったことは今回のハッキング事件と追放騒動についての真相だった。
「この国は情報を集めて発展してきた。故に他国に技術力を貸すときは、必ずハッキング出来る細工を施す。これは情報を集めることと、万一、この国に外部の毒が入り込んだ場合、他国に国民を逃がすための転移に必要だからだ」
突然のカミングアウトに人生で一番驚いたかもしれない。
一国の王が国ぐるみでのハッキングを認めるなんて。
国の内情を異世界人の私に話すことにも驚いた。
しかし、陛下は特に表情を変えることもなく話を続ける。
「ただし、ハッキングの個人使用は大罪としていた。今回セントは、自分の意志で個人的に君の端末へハッキングを仕掛けた。これについてケイから報告を受け、セントは地下牢に幽閉する事となった。そして、セントに行動を起こさせた原因は、ケイ自身だということでケイからセントの幽閉期間に関して打診があり、期間を短くする代わりにケイにも罰則を与えることになった」
まさか。
冷汗が背筋をつぅっと伝った。
「国外追放……ですか?」
恐る恐る口にした言葉に、陛下は何故か驚いた顔をしていた。
「追放? 嫌、『あえ~る』使用の禁止だ。ジンから聞かなかったか?」
そう言えばさっきジンさんが言ってた。『あえ~る』が使えなくなることが重い刑罰だって。
「……聞きました。すみません」
「ふむ。どうやらケイは、最も君に言わなければならない事を伝えなかったらしい」
陛下がコホンと咳払いをした。
何か大事なことを言われるのかと、私の背筋もピンと伸びる。
陛下が一時の間をおいて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「ひとつ聞いておきたい。ミワコ嬢、ケイを好きか? 受け入れる覚悟はあるか? 言っては何だが異世界人同士だ。王族の一夫多妻も、文化も君には驚くべきことだっただろう。価値観の違うものを受け入れるのは難しい。大切なことを言わずに逃げる息子だ。今までもケイに泣かされてきただろう? ケイといて幸せになれるのか?」
確かに、文化や価値観では驚いたこと、ケイの煮え切らない態度や何も説明してくれなかったことに、何度も悩んできた。
『あえ~る』を始める前の目標だった、『普通の幸せ』は、いつの間にか『ケイと幸せになること』に姿を変えていた。
一緒に幸せになりたいと思えたからこそ、こうして国王陛下の前に立っている。
自分の行動力に驚いているが、私は正直な気持ちを口にする。
「――好きなんです。ケイが、大好きなんです。ケイが私だけを愛していたいと言ってくれるなら! けど、私が幸せにしたい!! 私がケイの夢を叶えたいんです!!!」
突然の大絶叫に静まる室内。
次の瞬間、どっと沸き起こる大歓声。
「おねー様すてきー!!」
「お姉さま、頑張ってー!!!!」
「かっこいいー!!!!」
「あら、ケイったら……」
呆然としているうちに、王族の皆様に取り囲まれてもみくちゃにされる。
自己紹介やら、姉と呼んでいいかやら好き放題言っている。
まさか本人にも告白してないのに家族の前で気持ちの公開をする羽目になるとは。
そして、こんなにも歓迎されるとは。
信じられない。頬がおのずと緩んだ。
ケイの家族に歓迎された事実を噛み締め、じわじわと嬉しさがこみ上げる。
「静かに!!」
またしても、陛下の一声で室内は静まり、私をもみくちゃにしていた皆様はすすっと元の場所に戻っていった。
「良く言ったミワコ嬢。我が王家は、代々一夫多妻制を貫くため、国内の者を娶ってきた。王家の人間が異世界人と婚約するためには、王家を抜け、他国籍になる必要がある。ケイは君に惚れた時点で、籍を抜き、国を出ることを決めて行動していた。しかし、君の負担になるからと君には、その事実を伏せたままだったようだな」
「え!? じゃあ追放の話は」
「元々決まっていた事で、追放というか、籍がなくなるという話だ。君がケイを選ばなければ、どうなっていたことか」
そう陛下に言われ、ぞっとした。嘘でしょ、ケイ!
何でそれを言わないの!!
「ケイの籍がなくなることを危惧したセントが、君の連絡を取っていた相手を妨害したというのが今回の真相だ」
は~。
陛下の言葉にタメ息が漏れそうだ。
今初めて私は本当の意味で、セントさんの必死さが理解できた気がした。
「そろそろケイの所に行ってやった方がいい。庭園への入場を許可する。ジンに案内を」
「ありがとうございます。失礼します」
陛下やご家族の皆さんに礼をして、ジンさんと一緒にその場を去る。
帰りは、扉横にある半透明のパネルにジンさんが触れた瞬間、城の門の外だった。
そこからは、ジンさんに案内されながらE-1地区を走って、庭園を目指す。
5分くらいで別のゲートがあり、それを潜ると、真っ白な壁と巨大な金門が見えた。
門の隙間からは農業地帯で見たような真っ白のハウスが見えた。
こちらの方がもっと曲線的で王宮に似た造形だから、よりオシャレに見える。
私たちはハウスの前までくると、扉を開けて、中へ入った。
中はいくつかの部屋に分かれており、各部屋にお茶をたしなむ東屋の様なものがある。
この世界では見たことのない美しい生花と土の匂いがする。
美しいピンクの花やオレンジの花、光る花、沢山の植物がそれぞれの適温や雰囲気に合わせた植え方で植えられており、とても綺麗な温室だ。
暫く花の間を歩き続ける。
白い小さな花がたくさんついた背の高い植物の生い茂った区画の向こうに扉が現れた。
大きな南京錠とこの国でよく見かけるタッチパネルが付いている。
「ケイはこの向こうだ。この国の国花、ショコティアがある」
ジンさんがパネルに手を乗せ、指紋認証をクリアした上で、パスワードの入力を5回繰り返す。
最後に大きな南京錠を外した。
ジンさんと目が合うと、彼は軽く頷く。
私は両手を扉に添えて、ふぅと息を吐く。
大丈夫。
そう言い聞かせて、そして力を込めた。
何でこんなことに……私はケイに自分の気持ちを伝えるために探していただけなのに。
それより、今日は渡瀬神社に行った時の普段着のままで金属の国に行ったわけだ。
つまり、今から普段着でケイのご両親、王族の方に会うのだ。
せめて化粧直しがしたかった……せめてもうちょっと小奇麗な服で……はぁ。
私が現実逃避しながら付いて行っていたので、ジンさんに「ついたぞ」と言われるまで、止まったことにすら気付かなかった。
どこを通ったのかも分からないし、あんなに気になっていたこの城の内部構造も全く覚えていない。
目の前にあるのはキリンが通れそうなほど高いところまである白い扉だ。
白いベルベットの様な布が飾られていて、扉自体にも精巧な彫り物がしてある。
花の模様のようだ。薔薇に似ているだろうか。
それにしてもいざ、扉の前に立つと緊張が激しすぎて、呼吸が苦しくなってきた。
体中の汗腺から何か噴出しているような気がしてならない。
もうホントになんなんだ。今日は。
キイ――
「!!」
ジンさんが扉を開けた。大きな扉にもかかわらず、開いた音は驚くほど静かで心地よい。
私はショックで目を見開いてジンさんを見た。
私の心の準備が途中だったにもかかわらず! ジンさん!
ジンさんは私の反応など、どこ吹く風といった様子で、早く入るよう促してくる。
おずおずと一歩、室内へ足を踏み入れた。
背後で扉が閉まる音がする。
正面に見えるのは玉座と演説で見た男性。ハク陛下だ。
やっぱりケイと似ている。
めちゃくちゃ憂いのある色っぽい人だ。
ケイに渋みと色気が加わるとこうなるのだろうか?
玉座の周囲に沢山の人。
ドレスを着たマダムから小学生ぐらいの子供まで、いろんな人がいる。
皆様素晴らしい高級そうな身なりだ……胃、痛い。
ジンさんが私の前に出て、礼の姿勢をとった。
とたんに陛下の後ろから小さなクスクス笑いがちらほら上がった。
「父上、ミワコ嬢をお連れしました」
「寄れ」
「はっ」
また漏れるクスクス笑い。
好きな人のご両親やご家族に会っているのに、私の格好が……恥ずかしくて涙が出そうだ。
ジンさんが立ち上がり、こちらを見て「行くぞ」と訴えている。
私の顔色は最悪だろうが、ケイの所に一刻も早くたどり着くためと心を無にするつもりで進み出た。
玉座へ一歩一歩進む。
王族の方の顔を見ることが出来なくて、少し先の床を見続けていた。
大理石のような白い床が長い。
ケイのご家族から2mほどの位置まで進んだ所でジンさんが跪いたので、私もそれに倣う。
クスクス笑いは収まらない。
「……お前たち、お客人の前だ。ちょっと黙っていなさい」
途端に辺りが静かになった。
「煩くてすまないな。あまりに普段のジンからは想像できない振る舞いが、私の家族にとって面白いだけだ。異界のお嬢さん、頭を上げなさい。ジンお前もだ」
それを聞いて張りつめていた緊張と恐怖感がほぐれ、安心にすり替わって、とてつもなくホッとした。
そして、ジンさんの普段の様子が気になった。
国王陛下に礼をしただけで笑いが漏れるような振る舞いって何?
「ようこそエレクタラへ。ミワコ・カワニシ嬢。私はケイの父、ハク・キューという。こちらがケイの実母テルだ」
陛下のすぐ右隣にいた女性が前に進み出た。
淡いミルクティーブラウンの長い髪が美しい、優し気な女性だ。
微笑んでいる顔や雰囲気はケイとよく似ている。
慌てて日本式だが礼をする。テル様はニッコリ笑って頷いてくれた。
「先ずは君に謝罪せねばならない。君が『あえ~る』を用いて連絡を取っていた相手を、セントが妨害したことについてだ」
陛下がそう言うと、たちまちその場の空気が張り詰める。
そして、ハク陛下が語ったことは今回のハッキング事件と追放騒動についての真相だった。
「この国は情報を集めて発展してきた。故に他国に技術力を貸すときは、必ずハッキング出来る細工を施す。これは情報を集めることと、万一、この国に外部の毒が入り込んだ場合、他国に国民を逃がすための転移に必要だからだ」
突然のカミングアウトに人生で一番驚いたかもしれない。
一国の王が国ぐるみでのハッキングを認めるなんて。
国の内情を異世界人の私に話すことにも驚いた。
しかし、陛下は特に表情を変えることもなく話を続ける。
「ただし、ハッキングの個人使用は大罪としていた。今回セントは、自分の意志で個人的に君の端末へハッキングを仕掛けた。これについてケイから報告を受け、セントは地下牢に幽閉する事となった。そして、セントに行動を起こさせた原因は、ケイ自身だということでケイからセントの幽閉期間に関して打診があり、期間を短くする代わりにケイにも罰則を与えることになった」
まさか。
冷汗が背筋をつぅっと伝った。
「国外追放……ですか?」
恐る恐る口にした言葉に、陛下は何故か驚いた顔をしていた。
「追放? 嫌、『あえ~る』使用の禁止だ。ジンから聞かなかったか?」
そう言えばさっきジンさんが言ってた。『あえ~る』が使えなくなることが重い刑罰だって。
「……聞きました。すみません」
「ふむ。どうやらケイは、最も君に言わなければならない事を伝えなかったらしい」
陛下がコホンと咳払いをした。
何か大事なことを言われるのかと、私の背筋もピンと伸びる。
陛下が一時の間をおいて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「ひとつ聞いておきたい。ミワコ嬢、ケイを好きか? 受け入れる覚悟はあるか? 言っては何だが異世界人同士だ。王族の一夫多妻も、文化も君には驚くべきことだっただろう。価値観の違うものを受け入れるのは難しい。大切なことを言わずに逃げる息子だ。今までもケイに泣かされてきただろう? ケイといて幸せになれるのか?」
確かに、文化や価値観では驚いたこと、ケイの煮え切らない態度や何も説明してくれなかったことに、何度も悩んできた。
『あえ~る』を始める前の目標だった、『普通の幸せ』は、いつの間にか『ケイと幸せになること』に姿を変えていた。
一緒に幸せになりたいと思えたからこそ、こうして国王陛下の前に立っている。
自分の行動力に驚いているが、私は正直な気持ちを口にする。
「――好きなんです。ケイが、大好きなんです。ケイが私だけを愛していたいと言ってくれるなら! けど、私が幸せにしたい!! 私がケイの夢を叶えたいんです!!!」
突然の大絶叫に静まる室内。
次の瞬間、どっと沸き起こる大歓声。
「おねー様すてきー!!」
「お姉さま、頑張ってー!!!!」
「かっこいいー!!!!」
「あら、ケイったら……」
呆然としているうちに、王族の皆様に取り囲まれてもみくちゃにされる。
自己紹介やら、姉と呼んでいいかやら好き放題言っている。
まさか本人にも告白してないのに家族の前で気持ちの公開をする羽目になるとは。
そして、こんなにも歓迎されるとは。
信じられない。頬がおのずと緩んだ。
ケイの家族に歓迎された事実を噛み締め、じわじわと嬉しさがこみ上げる。
「静かに!!」
またしても、陛下の一声で室内は静まり、私をもみくちゃにしていた皆様はすすっと元の場所に戻っていった。
「良く言ったミワコ嬢。我が王家は、代々一夫多妻制を貫くため、国内の者を娶ってきた。王家の人間が異世界人と婚約するためには、王家を抜け、他国籍になる必要がある。ケイは君に惚れた時点で、籍を抜き、国を出ることを決めて行動していた。しかし、君の負担になるからと君には、その事実を伏せたままだったようだな」
「え!? じゃあ追放の話は」
「元々決まっていた事で、追放というか、籍がなくなるという話だ。君がケイを選ばなければ、どうなっていたことか」
そう陛下に言われ、ぞっとした。嘘でしょ、ケイ!
何でそれを言わないの!!
「ケイの籍がなくなることを危惧したセントが、君の連絡を取っていた相手を妨害したというのが今回の真相だ」
は~。
陛下の言葉にタメ息が漏れそうだ。
今初めて私は本当の意味で、セントさんの必死さが理解できた気がした。
「そろそろケイの所に行ってやった方がいい。庭園への入場を許可する。ジンに案内を」
「ありがとうございます。失礼します」
陛下やご家族の皆さんに礼をして、ジンさんと一緒にその場を去る。
帰りは、扉横にある半透明のパネルにジンさんが触れた瞬間、城の門の外だった。
そこからは、ジンさんに案内されながらE-1地区を走って、庭園を目指す。
5分くらいで別のゲートがあり、それを潜ると、真っ白な壁と巨大な金門が見えた。
門の隙間からは農業地帯で見たような真っ白のハウスが見えた。
こちらの方がもっと曲線的で王宮に似た造形だから、よりオシャレに見える。
私たちはハウスの前までくると、扉を開けて、中へ入った。
中はいくつかの部屋に分かれており、各部屋にお茶をたしなむ東屋の様なものがある。
この世界では見たことのない美しい生花と土の匂いがする。
美しいピンクの花やオレンジの花、光る花、沢山の植物がそれぞれの適温や雰囲気に合わせた植え方で植えられており、とても綺麗な温室だ。
暫く花の間を歩き続ける。
白い小さな花がたくさんついた背の高い植物の生い茂った区画の向こうに扉が現れた。
大きな南京錠とこの国でよく見かけるタッチパネルが付いている。
「ケイはこの向こうだ。この国の国花、ショコティアがある」
ジンさんがパネルに手を乗せ、指紋認証をクリアした上で、パスワードの入力を5回繰り返す。
最後に大きな南京錠を外した。
ジンさんと目が合うと、彼は軽く頷く。
私は両手を扉に添えて、ふぅと息を吐く。
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そう言い聞かせて、そして力を込めた。
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