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襲撃3
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シロが起きてからは、とても騒がしかった。
シロは、ヒノデの足元に転がる男を見て、途切れぬ悲鳴をあげたままキイトへと駆けていき、怪我をしていないか四回ほどひっくり返した後、その行為で、キイトが怪我をするのではないかと思うほど、強く抱きしめた。
次いで、飛び込んできたシロの夫・クロに、キイトの口元の血を指摘され、ついにシロは泣き出した。
キイトも泣きたかったが、人を慰める時に、イトムシの自分が泣いてはいけないと思い、ぐっと堪えた。
ヒノデが男を手早く縛り上げ、クロが宮へと走り現状を知らせにいった。
クロが宮守をつれ戻った時、キイトは安堵からか、ウトウトとしていた。
機敏なクロはさらに、守護館まで馬を走らせ館士兵を連れてきた。
宮守と館士兵の話合いの結果、男は守護館へと連れて行かれることになった。
連行の際に、灯りの下で見た男は四十代前後、細身の体で、屈強な館士兵に囲まれると貧相に見えた。しかしその顔はずる賢そうで、残忍さを秘めた目は、素人ではない事を周りに示していた。捕まった男は、シロの後ろにいるキイトを見つけると、ニタリと笑った。
キイトはその黄色い歯を気味悪く感じたが、すぐにシロの前へと出て、口元へと手をやり、いつでも糸を仕掛ける態勢を取った。
シロが素早くキイトの手を抑え、もう一度自分の後ろへと隠す。
「ヒノデ様、詳しく話を聞きたいので、キイト様と一緒に守護館へお願いします」
そう館士兵に言われた時、考え事をしていたヒノデは、珍しく人間を相手に瞬きだけで同意を示した。
○○○○○
三階の出窓から、通りを見下ろす目は鋭く、緊張している。
「ナナフシ、どうしたんだ?」
隣に、寝巻姿のコーダが心配そうに寄って来た。それもそのはず、今は真夜中だ。
教育館の広い寝室には、十四のベッドが並び、子供たちが鼾さえ賑やかに眠っている。しかしそれは年少の子供達だけで、年長の何人かは身を起こし、じっと暗闇の中で、ナナフシを見ていた。
数分前、真夜中の宮の本通りを、馬が駆けて行った。
馬の足音にナナフシは起き上がり、出窓から外を伺っていたのだ。次いで、守護館から館士兵を乗せた馬が駆けて行く。火事かと思ったが、そんな灯りも匂いも感じられない。
夜気を伝える出窓に座り考えていたところ、コーダが起きて来たのだ。
コーダは無言の背中と窓を見比べ、振り返ると、心配そうな仲間たちに片手を上げた。『寝ていろ』と合図をする。彼らは大人しく横にはなったが、ナナフシが窓を離れない限り、眠らないだろう。皆、リーダーに忠誠を誓っているのだ。
「ナナ。病人か何かだろう? 気にするな」
「戻ってきた」
ナナフシが目を凝らす。コーダも出窓から下を覗くと、硝子越しに馬の蹄が静かに響いた、並足だ。行きとは違うが急いでいる。人数は六人、その内二人は館士兵ではない。
一人は両側を馬につながれ、歩かされている男。もう一人は馬上で、白いローブをまとった人物。白はイトムシの識別色だ。よく見ると、ローブに包まれ、腕の中にもう一人がいた。
「あれ? あの二人乗り、キイトじゃねぇか」
コーダがそう呟くと、ナナフシが出窓からさっと降り、大きな欠伸をした。
「寝るぞ」
「いいのか? おい、気に入りのイトムシだろ」
「何があったか知らねぇが、大丈夫だろ」
ナナフシはベッドへ戻ると、夏掛けを引っ張り、寝る態勢へと入ってしまった。
「あいつには強い母ちゃんが付いている。何の心配もねぇよ」
シロは、ヒノデの足元に転がる男を見て、途切れぬ悲鳴をあげたままキイトへと駆けていき、怪我をしていないか四回ほどひっくり返した後、その行為で、キイトが怪我をするのではないかと思うほど、強く抱きしめた。
次いで、飛び込んできたシロの夫・クロに、キイトの口元の血を指摘され、ついにシロは泣き出した。
キイトも泣きたかったが、人を慰める時に、イトムシの自分が泣いてはいけないと思い、ぐっと堪えた。
ヒノデが男を手早く縛り上げ、クロが宮へと走り現状を知らせにいった。
クロが宮守をつれ戻った時、キイトは安堵からか、ウトウトとしていた。
機敏なクロはさらに、守護館まで馬を走らせ館士兵を連れてきた。
宮守と館士兵の話合いの結果、男は守護館へと連れて行かれることになった。
連行の際に、灯りの下で見た男は四十代前後、細身の体で、屈強な館士兵に囲まれると貧相に見えた。しかしその顔はずる賢そうで、残忍さを秘めた目は、素人ではない事を周りに示していた。捕まった男は、シロの後ろにいるキイトを見つけると、ニタリと笑った。
キイトはその黄色い歯を気味悪く感じたが、すぐにシロの前へと出て、口元へと手をやり、いつでも糸を仕掛ける態勢を取った。
シロが素早くキイトの手を抑え、もう一度自分の後ろへと隠す。
「ヒノデ様、詳しく話を聞きたいので、キイト様と一緒に守護館へお願いします」
そう館士兵に言われた時、考え事をしていたヒノデは、珍しく人間を相手に瞬きだけで同意を示した。
○○○○○
三階の出窓から、通りを見下ろす目は鋭く、緊張している。
「ナナフシ、どうしたんだ?」
隣に、寝巻姿のコーダが心配そうに寄って来た。それもそのはず、今は真夜中だ。
教育館の広い寝室には、十四のベッドが並び、子供たちが鼾さえ賑やかに眠っている。しかしそれは年少の子供達だけで、年長の何人かは身を起こし、じっと暗闇の中で、ナナフシを見ていた。
数分前、真夜中の宮の本通りを、馬が駆けて行った。
馬の足音にナナフシは起き上がり、出窓から外を伺っていたのだ。次いで、守護館から館士兵を乗せた馬が駆けて行く。火事かと思ったが、そんな灯りも匂いも感じられない。
夜気を伝える出窓に座り考えていたところ、コーダが起きて来たのだ。
コーダは無言の背中と窓を見比べ、振り返ると、心配そうな仲間たちに片手を上げた。『寝ていろ』と合図をする。彼らは大人しく横にはなったが、ナナフシが窓を離れない限り、眠らないだろう。皆、リーダーに忠誠を誓っているのだ。
「ナナ。病人か何かだろう? 気にするな」
「戻ってきた」
ナナフシが目を凝らす。コーダも出窓から下を覗くと、硝子越しに馬の蹄が静かに響いた、並足だ。行きとは違うが急いでいる。人数は六人、その内二人は館士兵ではない。
一人は両側を馬につながれ、歩かされている男。もう一人は馬上で、白いローブをまとった人物。白はイトムシの識別色だ。よく見ると、ローブに包まれ、腕の中にもう一人がいた。
「あれ? あの二人乗り、キイトじゃねぇか」
コーダがそう呟くと、ナナフシが出窓からさっと降り、大きな欠伸をした。
「寝るぞ」
「いいのか? おい、気に入りのイトムシだろ」
「何があったか知らねぇが、大丈夫だろ」
ナナフシはベッドへ戻ると、夏掛けを引っ張り、寝る態勢へと入ってしまった。
「あいつには強い母ちゃんが付いている。何の心配もねぇよ」
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