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参内1
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○○○○○
翌朝、宮からイトムシ館へと、儀礼用の服がきちんと届いた。
儀礼用ドレスに身を包んだ美しい母を、キイトは眺めた。ドレスは下に向かうほど、濃い青灰色で、裾には白い蝶がぐるりと舞っている。袖口と帯には、控えめに金色の刺繍があり、動くと、隠しに縫い付けられた小さな鈴が、チリンと鳴った。
ヒノデは、ドレスの上にイトムシの真白い上着を着て、椅子へと腰かけていた。シロに髪を結ってもらう最中、服の鈴がチリチリと鳴る。
「シロさん知っている? 猫に鈴を付けると、ネズミを捕れなくなるって」
「ふふ、少しの我慢よ、ヒノデちゃん。今日は色々な人に会うのだから、持前の美しさを存分に見せつけなくちゃ。国王様に宮臣様、それに水館の女主人。今日は大忙しだわ!」
陽気なシロとは対照的にヒノデが言う。
「なんだか気が重いわ。私はキイトと一緒に過ごしたいのに」
そろいの儀礼用の服を着たキイトは、近くの椅子へと腰かけると、嬉しそうに足を揺らした。
「本糸の使い方を覚えさせないと。それに宮の作法とイトムシの作法」
それを聞き、キイトは足を止め、口を尖らせた。
「ナナフシに会いに行ってもいい?」
「駄目よ、そんな時間はないわ」
ヒノデはぴしゃりと言うと、目でキイトを近くへと招き寄せる。手を伸ばし、首元のボタンを留めてやると、キイトは嫌そうに言った。
「開けてちゃ駄目なの? 首が詰まるのは嫌い」
「少しの我慢。母さんだって我慢しているわ」
全てのボタンを確認していくと、四番目のボタンがチリンと鳴る。ヒノデは黙ったまま、そのボタンを指で弾いた。
キイトはナナフシに会いたかった。会って糸を紡ぎたかったのだ。いままでとは違う本糸は、きっとナナフシの興味を引くだろう。糸伝話の改良も罠の質も格段に上がるはずだ。それを考えると、キイトは胸が躍った。
「迎えが到着しました」
二人はクロの声に外へと向かった。宮は目と鼻の先にあるにも関わらず、馬車が用意されていた。
馬車の傍に立ち迎える男に、キイトは覚えがあった。昨夜見た宮使いだ。
宮使いはヒノデへと挨拶をし、続いてキイトにも挨拶をしたが、その目は用心深く下げられたままだ。キイトは別段その男を気にするでもなく、馬車へと乗込み、これから会う国王とはいったいどういう人間なのか、想像を巡らして楽しんだ。
美しい石畳を馬車が滑り、宮の水堀を渡ったのが窓から見えた。
宮の入口には門の代わりに立つ、見上げるほどの二本の石柱。そこから建物まで等間隔に柱が立っていた。あれらは、一つ倒したら順に気持ちよく倒れてくれるだろうか? そんな事をキイトが算段していると、馬車は建物の入口へと着いた。
翌朝、宮からイトムシ館へと、儀礼用の服がきちんと届いた。
儀礼用ドレスに身を包んだ美しい母を、キイトは眺めた。ドレスは下に向かうほど、濃い青灰色で、裾には白い蝶がぐるりと舞っている。袖口と帯には、控えめに金色の刺繍があり、動くと、隠しに縫い付けられた小さな鈴が、チリンと鳴った。
ヒノデは、ドレスの上にイトムシの真白い上着を着て、椅子へと腰かけていた。シロに髪を結ってもらう最中、服の鈴がチリチリと鳴る。
「シロさん知っている? 猫に鈴を付けると、ネズミを捕れなくなるって」
「ふふ、少しの我慢よ、ヒノデちゃん。今日は色々な人に会うのだから、持前の美しさを存分に見せつけなくちゃ。国王様に宮臣様、それに水館の女主人。今日は大忙しだわ!」
陽気なシロとは対照的にヒノデが言う。
「なんだか気が重いわ。私はキイトと一緒に過ごしたいのに」
そろいの儀礼用の服を着たキイトは、近くの椅子へと腰かけると、嬉しそうに足を揺らした。
「本糸の使い方を覚えさせないと。それに宮の作法とイトムシの作法」
それを聞き、キイトは足を止め、口を尖らせた。
「ナナフシに会いに行ってもいい?」
「駄目よ、そんな時間はないわ」
ヒノデはぴしゃりと言うと、目でキイトを近くへと招き寄せる。手を伸ばし、首元のボタンを留めてやると、キイトは嫌そうに言った。
「開けてちゃ駄目なの? 首が詰まるのは嫌い」
「少しの我慢。母さんだって我慢しているわ」
全てのボタンを確認していくと、四番目のボタンがチリンと鳴る。ヒノデは黙ったまま、そのボタンを指で弾いた。
キイトはナナフシに会いたかった。会って糸を紡ぎたかったのだ。いままでとは違う本糸は、きっとナナフシの興味を引くだろう。糸伝話の改良も罠の質も格段に上がるはずだ。それを考えると、キイトは胸が躍った。
「迎えが到着しました」
二人はクロの声に外へと向かった。宮は目と鼻の先にあるにも関わらず、馬車が用意されていた。
馬車の傍に立ち迎える男に、キイトは覚えがあった。昨夜見た宮使いだ。
宮使いはヒノデへと挨拶をし、続いてキイトにも挨拶をしたが、その目は用心深く下げられたままだ。キイトは別段その男を気にするでもなく、馬車へと乗込み、これから会う国王とはいったいどういう人間なのか、想像を巡らして楽しんだ。
美しい石畳を馬車が滑り、宮の水堀を渡ったのが窓から見えた。
宮の入口には門の代わりに立つ、見上げるほどの二本の石柱。そこから建物まで等間隔に柱が立っていた。あれらは、一つ倒したら順に気持ちよく倒れてくれるだろうか? そんな事をキイトが算段していると、馬車は建物の入口へと着いた。
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