イトムシ    〜 幼少期〜

夜束牡牛

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格技場3

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 深山は、キイトが木刀を受け取った際に、差し出された利き腕を確認していた。

(はい、右利きね。歩き出しも右足でしたね。では左側を責めさせて頂きましょう、ご要望通り、手加減なしで)

 深山が整った顔の下で、淡々と判断をくだす。
 デノウが向かい合う二人の呼吸を読み、合図を出した。

「始めっ」

(出方を見たい所ですが、初心者はぐずる)

 深山は薄く笑うと、キイトが考えをまとめるより先に、正面から飛び込んだ。
 分かりやすく上から木刀を下すと、相手は良い反射神経で木刀を横にし、それを防いだ。キイトが動けなくなると思い、一度下がろうとすると、木刀を斜めにされ、力は横へと流された。

(面白い、力の運びは感でわかるのかな)

 深山は素直に受け流されてから、体を回転し、右に流された木刀を、左下から跳ね上げた。
 キイトから見れば、右手下死角から、突然木刀が飛び出したように見えたはずだ。

 カンッ

 木刀が高い音を立て、キイトの手から離れる。
 深山が優雅に微笑んだ。

(感は良いが、楽勝です)

 そう思ったのも束の間、キイトが勢いで払われた右手を、ぐっと引いた。
 深山は軽く片眉を跳ねさせた。

(おや? 打撃にでますか。切り替え早いな)

 深山が、キイトの手の動きに気を取られた一瞬「ブン」と、空気を震わす低音が聞こえた。

「ん?」

 見ると、飛ばされたはずの木刀が、空気を切り独りでに戻っていく。
 木刀は、キイトの伸ばしたままの右手を軸に、くるりと円を描き、深山の頭上高くから振り下ろされた。

「っ……」

 深山は慌て木刀でそれをはね返すと、キイトの木刀は、またも宙で半円を描き、接近していた二人の間を割った。
 押していた深山の体勢がくずれる。
 すかさずキイトは左手で木刀を受け取り、下からの勢いを活かし、深山の空いた脇腹へと切り込んだ。 
 それを後ろへと飛び、かわす深山。
 深山はキイトの木刀が、一番高い所へ上がったこと、左手の関節がこちらに向いていることを確認し、すぐに間合いを詰め戻し、素早く木刀を突く。
 キイトは身を捻りながらそれをよけ、左手の高さから木刀を落とし、右手で持ち直すと、深山へと突き出した。
 しかし、深山は寸前で刃先をかわし、そのまま最初の立ち位置まで下がった。

 深山が離れたのを確かめると、キイトの指が器用に動き、木刀に繋いだ糸を再度くくり直した。

 深山の背筋に汗が伝わる。

(いつの間に糸を仕掛けたのかな? ……全く罪な外見ですね。人間の子共には、到底できない動きと判断。これがイトムシですか)

 攻防を観戦していたデノウが目を細めた。

「さすがイトムシ。糸使いを組み込み、自分の戦い方に持っていくとは。どうだ、深山」

 感心し言うデノウへ、深山はキイトから目を離さずに返事をする。

「驚きましたよ。……両利きでいらっしゃったのですね、訓練されたのですか?」

 キイトもまた、深山から目を離さずに答えた。

「生まれてすぐ、両の手で糸を裁けるよう、躾てもらいました」
「それは、恐れ入りました」

 短い会話が終わり、深山が構え、キイトも素早く構える。
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