イトムシ    〜 幼少期〜

夜束牡牛

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宮守と館士兵3

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「まったく。お前ぇみてぇのが、よく副将にまで上がれたもんだ、馬鹿みてぇに昇進しやがってよぉ」
「実家が強いんでね」
「っ!……深山様、それ以上は、その……」

 過去の醜態、昇格の裏事情さえも、さらりと言ってしまう深山。それを宮守が引きつった顔で止めに入る。
 宮の人間としては、館士兵に宮の事情を明かし、嫌味の種にされるのは避けたい。しかし、館士兵の菊は、嫌味を言わずに巨体を退け、対峙していた深山に道を開けた。そして、キイトへと手招きをする。

「まったく、正直な副将だなぁ。ほら、キイトさま。馬車に乗ってくれ、俺らと競争だ」
「わぁ、馬車と競争っ」

 キイトは目を輝かせ頷いた。そして、いつの間にか睨み合いを止めた二人の目に、を改めて認め、可笑しそうに笑った。

(人間は器用だな、目と行動がちぐはぐだ)

 キイトが二頭立ての馬車へ乗り込むと、後ろからするりと、深山も入って来た。深山たちは見送りと聞いていたので、一瞬きょとんとしてしまう。
 深山は、そんなキイトへと悪戯っぽく片目をつむった。
 上がった口元に、パチリと聞こえそうな、素早いまぶたの動き。まるで、魅力的な本物のヤモリのようだ。
 そんな彼に、外から宮守が慌て声を掛ける。

「深山様、我らは門までのお見送りとなっています。隊長に怒られますよ!」
「鐘が鳴り次第帰ればいいのです。手狭ですから、君も走りなさい。……馬車との競争ですか。丁度いい、君は宮守代表ってことで参加しなさい。負けてはいけませんよ? ね、キイト様」
「はい。負けてはいけません」

 キイトが至極真剣に、宮守を励ます。その後ろで、深山が優雅に口元を上げる。

「たしかに、館士兵に負けるわけには、いけませんけど……」

 突然始まった、館士兵と馬車の競争に巻込まれ、宮守は呻き声を上げた。
 しかしここで、若い副隊長の遊びを無下に断れば、後が面倒になる事も知っている。手を抜かず、全力で付き合う以外選択肢はない。

「わかりました、頑張ります」

 宮守は、早々に気持ちを切り替えると、守護館までの道順をなぞりながら、館士兵たちの側へと並んだ。
 そんな彼に、金髪を揺らし足首を回していたイチヤが話しかける。

「ヤモリ、坂になってっから、気ぃつけろよ」
「わかっています」

 宮守は素っ気なく言ったが、すぐに、競争相手に悪いと反省したのか会釈をする。隣で伸脚をしていた菊が、二人へと言いつける。

「ゴールは守護館。先に門の紋黄蝶に触った奴が勝ちな。殴る蹴る等は禁止だ」
「わかりました」
「うっす」
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