イトムシ    〜 幼少期〜

夜束牡牛

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一番星

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○○○○○

 じらすような夕暮れ。黄金色の光が雲間を突き抜け、やがて茜色の裾を広げる。
 小石丸館を囲む三つの守り手たち、水守、宮守、そして館士兵。それぞれが異なる位置から、空を見守っていた。
 
 小石丸館からは離れた通りで、イチヤは壁に寄りかかり、夕日を睨んでいた。

「なんで俺らが、一番外なんかね? イトムシと一緒に命張ってんのは、守護館だっての」

 共に警備をする同僚が、笑いながら返す。

「そりゃ、ヤモリの方が偉りゃーからだよ、あいつら全員黒刀持ちだし」
「じゃあ俺ら全員に持たせろよ、そうすりゃキイト君だって……」
「あ。そういやお前、あのちっこいイトムシのお友達係だっけ?」
「……」

 イチヤはそれに答えず、唾を吐くと、歩き出した。

「おいっイチヤ! 持ち場離れんなよ!」

 イチヤは同僚の怒鳴り声を聞きながら、紫色の空で、ようやく輝き出した星を見上げた。

「……いちばんぼーし、みぃーつけた」

○○○○○

「一番星、見ぃつけた」

 小石丸館の門を守備する深山が、空を見上げ歌った。
 隣の宮守が、咎める視線を送るが、彼は姿勢を崩さぬままにこりと笑う。

「子供の時、歌いませんでしたか?」

「歌ったかもしれませんね、子供の時に」

「最近よく、自分が子供の時はどうだったかなって、思い出すんですよ。……流石に、身を裂かれたり、身内に殺されかけたりは無かったですね」

「深山様、発言にお気を付けください!」

「はいはい、黙りますよ」

 宮守は上司の失言が他に漏れていないか、素早くまわりを確認した。
 そんな彼の気も知らず、深山はもう一度、細い顎を上げ、空を見上げた。

「早く夜になりなさい」

 澄ました口調で命令し、強く唇を噛んだ。
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