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第四章 記 憶 《Memory-2》
56 ESPカードの的中率
しおりを挟むESP訓練の第一段階は、まずESPカードと呼ばれる、数種類の絵柄が描かれたカードを透視することから始まる。
絵柄は、全部で五種類。
白地に、黒い文字で、丸、十字、波、四角、星が描かれている。
トランプの神経衰弱のノリで、伏せられたカードの絵柄を当てていくのだ。
これができて初めて、超能力のランク付けがされるという、初歩の初歩。実は優花は、この初歩で勢いよくけつまづいていた。
「えーーーとね。ESPカードで、透視の訓練をしてるんだけど……」
「うん?」
「百発百中なの」
ぼそり、と落とされたその声は、胸を張っていい内容のわりに、ひどく自信なさげだ。
「へえ……、すごいじゃん?」
驚き混じりの晃一郎の言葉が疑問系になったのには、理由がある。
リュウには、なにか目ぼしい変化があれば知らせてくれ、と言ってあるのに、何も報告が来ていないのだ。その答えは、すぐに優花本人の口から飛び出した。
「違うの。百発百中で、当たらないの!」
「……へ?」
頬を膨らませながら、やけ気味に放たれた優花の言葉に、晃一郎は、いぶかしげに首をかしげる。
「だーかーらー。一枚も当たらないのっ!」
「それ、本当か?」
「う、うん、本当だけど……」
晃一郎の、ワントーン低くなった声音と真剣な眼差しに、優花の声は尻つぼみに消えていく。
「ありえない――」
晃一郎は、独り言のように、低くつぶやいた。
――ありえないって言われても、当たらないものは当たらないんだもんっ。
ESPカードの訓練の他に、催眠療法なども試してみたが、結果は、何一つ出ていない。
そもそも、優花自身は、自分に超能力があるかもしれないなどと言われても、いまいちピンとこない。コイン一枚、ティシュ一枚すら動かす事もできないのに。
『自分に、その力がない』
それはイコール、元の世界に戻る希望が絶たれる、ということだ。
「私、本当に、超能力なんか、あるのかなぁ……」
「それは、ある。間違いなく」
晃一郎は、潔いくらいに、きっぱりと断言した。
「少なくても、お前は事故当初、俺のテレパシーに答えているんだからな」
「あ、そうか!」
声帯と視力が機能していなかったあの時、頭の中に直接響いてきた、晃一郎の、声。あれが、テレパシーというものなのか。
「それに、百パーセントの確率で外れる、というのはあり得ないんだ」
「え、どうして?」
超能力がないなら、普通、あたらないんじゃないの?
疑問に思っていると晃一郎は、ジーンズのポケットから百円硬化を一枚取り出して、両手のひらの中でシェイクしたあと、トンと、テーブルの上に百円を握りこんだ左手を乗せた。
「表か裏か?」
わかるか?
と、からかうような視線を投げられ、優花は、むぅーっと眉根を寄せた。
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