黄昏の恋人~この手のぬくもりを忘れない~【完結】

水樹ゆう

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第六章 記 憶 《Memory-4》

101 再びの邂逅

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「……泣いていたんですか?」

 優花の前で足を止めたリュウは涙で潤んだ優花の目を見て、悲し気に声を落とした。少しでも気持ちが和らぐようにと玲子を招いたことが、返って仇になってしまっただろうか? そんな後悔の念を感じ取った優花は、ブルブルと頭を振った。

「ち、違うんです。これは、おしゃべりが楽しすぎて興奮しちゃって眠れないものだから、本でも読めば眠くなるかなぁって……」
「本って?」

 下手な言い訳はすぐにボロがでる。
 もちろん優花の手元は空っぽで、本など持ってはいない。

「あ、あははは……」

――ああ、どうしよう。

 優花は焦った。もしも今リュウに心を読まれたら、万事休す。となりに思念体の優花がいることがバレてしまう。それだけは避けなければ。

『優花ちゃん、深呼吸、深呼吸』

 わたわたと視線をさまよわせる優花を落ち着かせようと、思念体の優花が背中をトントンとたたいてくれるが、気持ちは焦るばかり。

 その時、ふとリュウが右手を伸ばして、優花の頬をなでた。まだ乾ききらない涙の跡を拭おうとしただけだが、リュウはそのままギョッと目を見開いた。

「あっ……」

 っと、二人の優花と固まったままのリュウの三人が同時に驚きの声を上げた。

 リュウは、驚きの眼で優花の隣りを見ていた。思念体の優花を、それこそ心底驚いた表情で。

――み、見えてるの?

「リ、リュウ先生?」

 おそるおそる優花が口を開けば、リュウは思念体の優花から視線を外さずに、特大のため息を吐きだした。

「あなたは、いったい何をやってるんですか?」

 低く絞り出すような声には、ほぼ九割の諦めの成分と一割の怒りの成分がミックスされている。

 優花の背中をなでていた思念体の優花。優花の頬に触れたリュウ。優花を介して、思念体の優花とリュウの間の回線が開いた状態になったようだ。

 詳しい考察はさておき、とにかく今のリュウには思念体の優花が見えていた。

『えへへ。お久しぶりだね、リュウ君!』

 はーい! と邪気の欠片もない笑顔を向けられたリュウは、脱力して思わずその場に座り込みそうになった。近くにあった椅子を引き寄せ、どうにか二人の優花の前に腰を落ち着ける。

 一度優花から手を放してみると、途端に思念体の優花の姿が見えなくなったため、リュウは優花に断って手を繋ぐことにした。
 
「お互いに体のどこかに触れていれば、見えるようになるようですね。接触テレパス……的なものでしょうか?」

 リュウが自問するようにつぶやけば、思念体の優花は楽し気にウンウン頷いている。

『そうみたいねー。たぶんだけど、優花ちゃんの超能力のひとつじゃないかと思うんだけど』
「えっ、そうなんですか!?」

 自覚の欠片もない優花は、驚いて素っ頓狂な声を上げる。

『だって、優花ちゃんを介してしか、見えないと思うよ、私の姿。あ、それと声も聞こえてるのよね?』
「ええ、聞こえています」

 美しいハイトーンの声は、生前のままだ。

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