捕獲大作戦

丹羽 庭子

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小話

*小話2*

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【同じ会社で見えること】


「あ、清水先輩。ちょっとお伺いしたいことが……」
 社内では二人の関係は秘密にしている。
 冬から春に移り変わる頃、晴れて恋人となった望月美穂は声を潜めて清水に尋ねた。
「なんだい?」
「袴田課長、来週から出張ですよね?」
「ああ、一週間ほど。それがどうしたんだ」
「……あのデタラメな『海野営業企画特別顧問』、また書類を貯めていたのが見つかりまして」
「ハア!?」
 流石の俺も、アホみたいに開いた口が塞がらなかった。

 役付き以上でないと会う事が出来ない『海野』という上司は、会社の運営で思った以上の成果を上げるが、思った以上の厄介な面倒事を引き起こすという。
 社内でその話は有名であるが、本人を見たことが無いのでなんともいえない。
 とにかくウッカリ色々やらかすので、上層部はキリキリと気を揉んでいる要注意人物だ。
 成果次第という契約のもと動いているので、出社しなくても許されるという謎な存在。
 近いうちに俺は係長へ昇進するが、見たい反面一抹の不安を抱えている。

「課長、このままじゃ出張できませんよ」
 美穂が心配げにため息を漏らす。
「いや……何が何でも終わらせるだろうよ、課長は」
 課長がその出張の為、ずっと早出に残業にと仕事を片付けていたのを知っている。
 勿論理由を知る俺やマメ橋も、仕事に付き合うつもりだ。

「今週はずっと残業だけど、できれば家で待ってて欲しいな」
「やだっ、清水先輩こんなところで……」
「いま誰もいないさ」
 さっとあたりに視線をめぐらせ、人がいないのを確認済みだ。
「俺んちで、お帰りって言って欲しい……駄目かな?」
 疲れた体を引きずって暗い部屋に帰るより、家の前でポッと明かりが灯る家に帰りたい。
「博之さん」
 顔中赤く火照らせて、わかりましたと返事が来た。
「それにしても、どうしてあの日曜日のあと、出張いれたんですかね?」
「ん、わからない?」
「えっ? ……ああっ!」


(クロスオーバー「捕獲大作戦」×「11桁の記憶」)






【袴田課長の苦労の源はココ】


「もう無いですよね? いい加減後出しは――」
「ないない! 無いと思うよー」
「思うだけじゃ困ります!」
 『営業企画特別顧問』という肩書きの海野翔うんのかけるは袴田の怒気を含んだ物言いに全く動じずアハハと笑った。
 清水と高橋は先に帰り、この会議室にいるのは袴田と海野の二人だけ。
 海野は神出鬼没でいつ出社するのかさえ上層部は把握できていない。唯一日本の支社長としていた海野の母親は一身上の都合で退社してしまいお手上げ状態だ。連絡手段は彼の机にメモを貼る。
 それだけでは心もとないのに、何故か通じるのが不可思議な所だ。
 係長という役職がついた途端上司として紹介され、あまりの現実離れした話にそういえば自宅二階の窓は閉めたかな、なんて思考を飛ばしかけた。
 珍しい家具や装飾品を仕入れてくるので取引先には喜ばれるが、その仕入先が全くの不明。
 素材自体は一般的なのに、まずもってセンスが違う。和風でも欧風でも北欧風でも中華風でもどこでもない。まるで現実的じゃない。
 そこが人気の一端でもあるのだが。
「けーちゃんさー」
「袴田です」
「けーちゃん来週から休みでしょ? 僕あっちの人にいいところ押さえといて貰ったから。あ、これそのリストね」
 「袴田です」と重ねて正しながら、渡された用紙に目を通す。
 その目が、文字を追うにしたがって驚きに開かれていく。
「ここは……!?」
「うん、人気もあるけどちゃんと地元の評判もいい所だよ。僕からのお祝いだよ」
 にへらっとだらしなく笑うが、妙に愛嬌のある顔でつい色々許してしまいそうになる。
 だが――
「ありがとうございます。行くのが楽しみになりました。つきましてはこちらの書類に全て目を通し、サインと指示と進行計画表を頂きます」
「えー!」
「偶然、図らずも、偶々、期せずして折角お会いできたので、溜まったお仕事をして下さい」
「ちょ、僕これから出かけないと――」
「それは、これが終わってからにしていただきます」
「お祝い渡したし、それでいいにして――」
「それはそれ、ですよ、海野特別顧問?」
 黒いオーラが背中に見えたのか、シュンと小さくなって「……あい」と頷く海野。
 これで二十三歳というから、どんだけ奔放に育ってきたのか――袴田には知る由もない。



(クロスオーバー・「捕獲大作戦」×「世界を翔ける!」)


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