Cウイルス・クロニクル

ムービーマスター

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日比谷公園キャンプ・陥落?

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そんなやりとりが流れ作業のように終えた丁度その時に、私の前に救出されてトイレの中にいた人、男性、格好は紺の夏用スーツを着た中年太りしていて、頭頂部が禿げているオヤジが出てきたが、どうも様子がおかしく、出て直ぐに地面にうずくまり、唸り声を上げた。

夏用スーツはよれよれで、ジャケットには白い粉上の塩?夏場で大量の汗が出て、それがジャケットまで滲み出て、汗が塩になりジャケットやズボンまで白い塩が吹いているのが見てとれた。

【どうしました。具合でも悪いのですか?私の言葉が聞こえますか?】

近くの武装している自衛隊員が、またかよ!とか、勘弁してくれ!等と誰に言うのでもなく独り言を吐き、今まで声を掛け続けていた自衛隊員も

【聞こえましたら、頭を振ってください、出来なければ、出来る範囲でイイので、なにか身体を使ってサインを・・・】

そう言おうとした時に、中年太りの蹲(うずくま)りオヤジの顔が持ち上がり、自衛隊員達を見たが、その顔はやはりと言うべきか感染者のそれで、汚らしく涎を垂らし、今にも近くの武装自衛隊員めがけて飛びかかりそうだった。

パパパパパンッと乾いた銃声が公園になり響き、さっきまで私と一緒に東京駅前ロータリーで救出された筈の男は、感染者にかかっていたので、ここに来てあっさりと射殺されてしまった。

多分、アノ男は、感染者の体液を知らないうちに触ってしまっていたのだろう。

一歩間違えば、私もああなっていたのか?

いや、私と先ほど殺処分された男性との違いはアレが見えるか見えないか、に尽きると思った。

持ち場の自衛隊員はいつもの事のように、近くにある消防者から出ているホースから水で連射されてズタボロになって流血している死体に浴びせ、洗い流しているようだった。

私にだけ見えたのだが、元人間で、まさに感染者になって即射殺された男の流れる体液は全てが蛍光液では無く、まだ人間の血の部分だったり、うっすらと蛍光し始める血液もあった。

そんな、私には壮絶な殺戮のシーンも、ここ日比谷公園の救助地帯・キャンプでは良くあることなのか、自衛隊員達は銃声の方向を見ていない者達もちらほら見え、またルーチンな作業を黙々とこなしているようだった。

そして、私もようやく魔の超高層ビルから無事!脱出できたことにホッとしたのか、もうすっかり辺りは暗くなっていることを再認識し、嘗てない暗闇の首都東京の夜空を見上げて見ていた。

辺りには、一般市民よりも、自衛隊員が多く、次に警察の方々、一般人は数名がテントの下のパイプ椅子に力無く座っていたり、すっかり放心状態のオバサンが、時々、ハっと思い出したかのように、きょろきょろと、周りを見ながら、また、糸が切れた人形のように放心状態になった。

遠くでは、車の洗剤高圧ホースのような機械で、トラックや、簡易トイレを洗っていた。

私がきょろきょろしていると、白衣を着た30代位のきりっとした感じの髪の長い女性が、私に声をかけ、こちらに来るように手招きした。

【こちらで、紫外線を浴びて頂きます】

そう言うと、紫外線を四方八方から浴びるような機器が設置されていて、そこに入った、時間として、1分位だ。

私が、浴びてから、そこを離れる時に、もう一人の若い男性が

【気休め!だけどね】

と、小さく呟いた。

先程のテントに戻ると、放心状態のオバサンに何処のTV局?メディアからの報道カメラマンとキャスターの女性がインタビューしようと近付いたが、例の調子で、放心状態なので、インタビューを諦めていた。

私は、今のキャスターがこっちに来そうな気がしたので、急いで、席を外した。

日比谷公園の奥の方?屋外音楽堂近辺で赤々と炎が燃えている感じで、そこに、防御服とマスクを被った自衛隊員達が、タンカーに乗せては、デジカメのフラッシュを発光して撮っていて、そのあと奥に並べて音楽堂のコンクリートステージの上から火炎放射機で人間のようなモノ?死体を燃やしていた。

多分デジカメは焼く前の犠牲者?感染者の死体を記録し、後で親族たちに確認してもらうって感じだろう。

TVのクルー達が、私の方に、いや、死体を火炎放射で焼く処を撮影する為に移動して来たので、私はさりげなく、距離を置いて見ていると、女性のキャスターが、このダサい作業着のような格好!どうなのよ!とか、もうこんな状態で東京首都のTV局終わってるでしょう?ヤル意味あるの?と毒づいていて、それを宥(なだ)めるように、カメラマンが猫なで声で、でも似合うよとか、まだ地方の系列の局が機能しているから大丈夫ですよ!とか何とか言っていた。


その時に、突如!死体を直接持ち運んでいた防御服姿の自衛隊員が、防御服のマスクやヘルメットを徐(おもむろ)に取り外して、唸り声を発しながら、カメラマンチームの処に物凄い速さで走り、迫っているのが遠目に見えた。
ああぁ、あ、あの自衛隊員は感染したのだ。

多分、注意はしていたとは思うが、感染者の血液?汗?体液が、防御服の隙間から入り出し、下着を通して、体液が隊員の皮膚に付着し、そして時間をかけて皮膚から染み込んで、毛細血管にウイルスが入り、Cウイルスが発症したのだ。

自衛隊員の突然の狂った態度に、他の隊員達もすぐさま気付いたが、後の祭りなほど、まずはファインダーを覗き込んでいて状況が良く分からない?カメラマンに飛びかかり、腕か手を噛み千切り、そして、厭らしい笑みを浮かべて、今度は作業着姿の女性キャスターに飛びかかった。

女性キャスターの悲鳴と共に、凶暴なカニバリズム殺人鬼となった隊員は、キャスターの服を物凄い力で引き千切り、みるみる上半身が裸になり、小ぶりな乳房が遠目でも見えた。

そこに、自衛隊員は色情狂になったがごとくむしゃぶりつき、乳房を食い千切った。

女性のキャスターの悲鳴と、そこの場所に駆け付ける警察官に、今度は片耳を食い千切られて感染したカメラマンが、身体を痙攣後に時間にして36秒(どうも人間の血液が身体全身を一周するのに36秒かかるらしい)?で飛び掛り、警察官がピストルを腰から引き抜くよりも早く、警察官の首に噛みついた。

首筋から一瞬、鮮血が飛び散り、そこに駆け付けた他の警察官達の顔や頭に飛び散り、どう考えてもネズミ算式に増えそうだと瞬時に感じた私は、一目散に、その場から走って逃げ、キョトンとしている櫻井さんに早口で状況を話し、兎に角!この場を逃げるか、感染者達を兎に角!速やかに排除することが先決だ。

と伝えたのだが、櫻井さんは、仲間を放ってはおけないとか、なんとか?とこの緊急時で聞きとることは出来ない言葉を言ったので、しかたなく、反対方向の、装甲車と他の自衛隊員の所まで、脚をもつれさせながらも急いで走って辿り着き、また、状況を話した。

数秒して、乾いた銃声の音が何発かしたが、その後は、信じられないことに、20人近くの自衛官?警察?カメラマンチーム達が全速力で走って、襲いかかってきた。

(なんだよ!この感染力の速さ?そして、まるで脳のリミッターが壊れたような運動能力?怪力?まるで普段30%しか使っていない人間の運動能力をいきなり100%使っている?感染すると使えるようになるのか?)

おろおろする新米?(歳が若く見えたので)の自衛隊員に私は指示して、装甲車に乗って、車を発進させることを命令した。

彼は戸惑っているようだったが、バックミラーに映る感染者の暴徒の迫力に参って、発進した。

近くで、休んでいた自衛隊員たちも面喰らいながらも、近くの自動小銃で撃ち始めたが、遂には銃声がしなくなった。

「この日比谷公園キャンプの次は、近いのは何処?」

私は、新米の自衛隊員に向かってそう聞いた。

【私は、あそこ以外に知りませんし、あの日比谷公園が突破!されたとすると、次は・・・】

全く頼りの無い自衛隊員だ。

私は相変わらず、記憶が戻ってこないながらも、この辺の土地勘は、何故か知っていた。

私は、装甲車が出発してから10分位してから、道路の脇に停車させた。

しかし、こんな異常な風景は初めてだった。

東京都内が全て、大停電状態で、街灯も点いていない、信号機も点いていない、何よりも都内のビル群が窓一つも電気が点いていないのだ。

そして、だからこそ、こんなに夜は暗く、月が無い夜は真っ暗で、怖いくらいで、しかも、この装甲車以外、千代田区?の道路を走っている車は今のところ皆無だった。

【また、あそこに戻りますか?多分!鎮圧されていると思いますから】

私は、この新米の希望的観測な話など、はなから聞く気が無く、反対に車内の天井のテールランプを点けて、座席の後ろにある、自動小銃を、身を乗り出して、引っ張り上げた。

【いったい何をするんですか?民間人が危ないですよ】

「今は非常時ですよ!それにいつ、感染者に襲われるか分からないし、あなたが襲われそうな時は、私が、この自動小銃で撃って、助けなくてはならないし、反対のことの方が十分あり得ますよ」

【それは、そうですが】

そう言って、装甲車のハンドル部分に伏せってしまった。

私はその間に、自動小銃の取り扱いを、あの能力を使って、使用方法や、銃のメカニズムを把握し、そして、今後の進むべき方向を考えていた。

ドンッ!べたっ!

そんな時に、運転席側の窓に誰かの手がべったりと着いて、その次にはドアを開けるようにガチャガチャとドアの取っ手の部分が弄(いじく)られた。

【どなたですか?】

返事は無く、やはり感染者であることは明白であった。

この辺は、感染者がうろうろしているらしい。

装甲車を走らせて、感染者を振りほどこうとしたが、もしかしたら、車に掴まっているかもしれない。

兎に角!一端、また日比谷公園キャンプ地に戻る事にした。

あの辺、一体だけがまだ電気が付いて煌々と明るかったからだ。
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