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異世界のお偉いさんの一人、現る

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「あ~、わり~、これはちょっとした、ね、アレでして」

俺も一瞬でまずいことしたって感じで今のようなどうしようもない言い訳をした。


「化け物だ!人間の力じゃないな!鉄をこうも簡単に引き千切るなんて!」

「いや、その、アレじゃないですか?
この鉄の手錠とか足首のやつとか、鎖って、
金属疲労と言うか、長年すると鉄も錆びるじゃないですか、それで脆くなって」

俺はそんな言い訳をしてみたが、
実はもっと厄介なことに、石の壁に埋め込まれていた鉄の留めガネ金具自体も、
俺のちょっと歩いただけの力で抜けてしまい、
しかも壁の石工ブロック自体が移動して斜めになっていた。

「これが、外人の真の力か?」

貴族は誰に言う訳でもないが、そう言いながら、
イの一番に牢屋から飛び出し、あの石の階段!
螺旋階段を転げるように降りて行った。

そして、その牢屋に残った兵士二人は、
明らかにビビりながらも、俺を威嚇するように、
今では剣を抜いて俺をめがけて構えているし、
若い尼さんは顔を真っ青にして吊ったているだけで、
俺はやはり中身がオッサンだから、お騒がせてどうもすいません!
見たいなことを言いながらも、この朝食!食べていいよね!とか、
尼さんに話し、彼女は顔面蒼白になりながらも、
うんうんと頷いたので、シャルルも一緒に食べれば、
みたいなことを言いながら、
気持ち量が足んね~な~とか思いながら、食べ始めた。


俺が食べ終わる、丁度その頃、
螺旋階段を登る大勢の兵士の甲冑が擦れる音と足音が聞こえて来て、
その後、開けっぱなしだった鉄の扉前に貴族は騎士団長と思われるような男、
30代位の男が立っていた。

俺は、丁度!簡単な腹ごしらえが出来たので、
まずは空腹を満たしたので、余裕が出て来たのと、
何よりも、この牢獄中で俺の身体が一番デカいってことが、
精神的な余裕を作るんだよな~!
ビバ!身長190cm前後
やったねカトちゃん!は、違うか?

俺はだけど、根や中身は日本のオッサンだから、
礼儀正しく、ここでの偉い人?
の前に素早く立って、だけど、お偉いさんとある程度の距離を取って、
あのシャルル嬢がしたように休め!
の格好で立って、両腕も後ろにむすんだ。

お偉いさんは、身長がシャルル嬢よりも幾分か低く、
だけど精力的な、
そして好奇心たっぷりのような大きな瞳が印象的だった。

やっぱり人種は白人だね。

歳は30代後半!

元日本人の俺からすると、それ以上の歳にも思えるが、
白人って、東洋人とは違ってなんか老けて見えます。

「彼がもう一人の外人かね?」

俺が朝食を所謂!ヤンキー座りしながら、
黙々と食べている時から、
そのまま固まって立っていたシャルルは、
その格好でお偉いさんにそうですと答えた。

「まあ、5日間は何にも食べていなかったのだから、そりゃ、お腹がすくよな!
名前はムート卿かな?」

ムートきょう?ムート狂!な筈は無いな!

やっぱり中世っぽいから階級みたいな、ミスターみたいなものかな?

「ええ、ムートと申します」

あれやこれや聞きたいことはやまやまだけど、
な、中身中年オッサンだから、
あくまでも穏便にことが運ぶように丁寧に答えた。

「で、身体を拘束していた手錠と足錠は自力で取り外したようだね!」

お偉いさんは顎のあたりの短い髭を触りながら腕組みの変形版!
まるでオネエのポーズのような格好で俺の近くまで歩きながら、
俺の足元にある、
俺の指の力によって捻じれたり千切れた鉄の高速器具の破壊された残骸を見ていた。

先程までいた尖がりデカ鼻の貴族が危ないですから、
不用心に外人に近付くのは!と通告したが、流石!ここで一番?
の、お偉いさん、そんなご忠告など意にもせず、
俺に近付き、俺を見上げてしげしげと顔を見ていた。

「これが、伝説の外人か?
そっちの女性と言い、ムート卿と言い、我々と何も違いは無いな!外見上は」

「はい、ですが・・・」

尖がりデカ鼻が恐縮する感じで小声で相槌を打っていたが、
だからと言って、俺が怖いのか、お偉いさんほど、近くには来ない。

「体調は良いのかね!ここに来た時は、今にも死にそうな状態だったが」

俺はお陰さまで!とか、助けて頂いて有難うございます!
的な社交辞令を言ったが、
目では俺の頭を蹴り飛ばした野蛮そうな白人兵士の目を一瞬睨んだりした。

その白人は目を逸らしました。

「では、ムート卿の驚異的な身体の回復を祝って!
この部屋から出て、外の新鮮な空気を吸いに出ようではありませんか?」

このお偉い白人!
ちょっと大袈裟な、まるで変なミュージカルみたいな喋り方をして、
俺の腕を軽く促すように触った。

シャルル嬢も俺と一緒に拘束されていた拘束金属等を手首と足首に固定されていたのを解除されて、
俺の前にやや急かされるように扉の向こうへと歩かされた。

螺旋階段に配置されていた兵士達が慌てたように階段を降りて行き、
その次に貴族やお偉いさんが先に行き、その後にシャルルと俺が一列に降りて行った。

何回?
ぐるぐる回って螺旋階段を降りるんだろう?

結構な高さだ。
俺は螺旋階段を降りながら、
円柱の階段の壁に定期的に彫られた蝋燭を置く棚を見ていたり、
一階に降りるごとに、巨大な牢獄?
城壁の建物内の廊下を見たりしながら、
この時代に、よく作ったもんだ!と感心した。

前日本時代の頃だったら、
ブルドーザーやらクレーンやら、
所謂!重機があるからビルなどが建てられるけど、
この頃はほぼ人力だろう?
そう思うと、またまた小腹が空いて来た。

どうも、身長が190cm位になると、
身体の燃費が悪くなるか?
それとも、さっきの朝食の量自体が少ないのか?
やっと一階に着き、学校のグラウンド?
高校時代の高校建物内の中庭?
の結構広い、だけど城壁に四方に囲まれた空間が目の前に見えた。

その運動場!グラウンドには他にも数十名か、
もしかしたら百名越えの人数の甲冑兵士たちが整列していた。

俺は騎士団長みたいなお偉いさんに声を掛けられ、
シャルルと一緒に整然と並ぶ!
多分!10名×10名って感じで並んでいる兵士達の前に対峙する感じで二人で並んだ。
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