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マドンナ、翼をください

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アカペラだったけどシャルルの歌は上手かった。

聞き覚えのある歌で、
不思議なのは英語に聴こえるのに、日本語のように理解が出来た。

ああ、思い出した、
この曲、マドンナの「クレイジー・フォー・ユー」じゃないか。

懐かしいね~、
シャルルの歳じゃ、まだ生まれていないから知らないんじゃないか?
とか思ったけど、なんと言ってもあの世界的なマドンナだし、
今じゃ英国に住んでいるんだっけ?
じゃあフランスも近いからリバイバル的に再ブームってヤツですか?
俺も久し振りの元世界の懐かしのポップスが聴けたので、
思わず歌のサビ部分で歌ってしまった。

なんか異常に懐かしい~、何かこの曲には思い出があるような~
歌い終わったシャルルに俺は客席から拍手を贈ってやった。

シャルルは拍手に対し、まるでドレスでも着ているかのように、
ドレスの端を摘まんでお辞儀する仕草までした。

「アンコール、アンコール」

「今度は日本の曲ね」

シャルルは俺のアンコールは無視して、今度は日本人の歌だけど、
かなり昔の歌、
1971年に作詞作曲された名曲「翼をください」をアカペラで丁寧に情感を込めて歌い出した。

「まさか、この異世界で、
しかもフランス人の若い女性に【翼をください】を歌ってもらえるとは、
驚きだし感動だよ~
しかし、よく、こんな古い曲を知っていたな」

「えっ?・・・私は最近知ってめっちゃ感動したから覚えたのよ。
アニメ「エヴァンゲリヲン新劇場版:破」の挿入歌だったんだけど、
エヴァンゲリヲンは知っているでしょう。
それに、
フランスでは何年も前から日本のアニメを紹介するジャパンEXPOを開催しているのよ、
知ってる?」

ああ、なるほどね。
おフランスではジャパンEXPOを開催してるからな~、で、
シャルルも現代のフランスの娘ってわけね。

「でしょう。私はこの曲をカラオケで良く歌のよ」

ふ~ん、フランスでも日本のカラオケ?

カラオケボックスとか、ああいうのもあるのかな、流行っているのかな~
すると、扉側には二人の異世界監視兵が知らないウチに立っていて

「シャルルさん、感動しました。
これが歌なんですね。
初めて歌う女性を見て、聴き惚れ、心がジンジンしました。
これって、音楽による感染ですよね?」

監視兵、見た目は日頃、冷静でクールそうだが、
今現在は涙腺が大崩壊したのか、号泣の声が出ていない版です。

「おいおい、そんなに泣くこと無いじゃないか~」

俺はつい、彼らにみっともない的な感じで指摘した。

「え~、勇者ムートも、ぼろ泣きじゃないですか~、人のこと言えないですよ」

えっ!と、思い、慌てて自分の頬に手を当てると、
確かに涙で頬が濡れていた。

しかも、俺も涙腺が崩壊したのか、次から次へと涙が滴り落ち、
胸元までぐっしょりとなっていた。

俺も知らないウチにシャルルの歌う

「翼をください」に感涙していたようだ。
確かに、シャルルの歌ったマドンナとイイ「翼をください」とイイ、
なにか俺にとって重要な何かを教えてくれる、
または忘れてしまった、または故意に隠されてしまった何かを、
心の中や記憶の奥深くに眠っている、何かを思い出させてくれそうな、
そんなもどかしいような、
それで懐かしい気持ちにしてくれたので、感情が知らず知らずに高ぶり、男泣き?
涙ぽろりんになっていたのだ。

確かに、歌には人の心を揺さぶる力があることは事実だし、
元の世界だったら、こんなに感動感涙しないような気がするが、
この異世界では歌の魅力と力を最大限にする何かがあるのかもしれない。

そして、唐突(とうとつ)だが、俺はその時に思ったのだが、
この禁止されている異世界の歌と10年前の革命とキサナ国のお姫様の失踪には、
歌が原因では、事件の鍵は歌、唄に関係しているような感じがし、
俺の思い込みだがそれは自分にとっては確信に近かった。

そして、もう一つ頭に浮かんだのは、
この異世界を牛耳る、
支配する為には、
俺のスーパーマン的で某サイボーグマンガの加速装置攻撃とシャルルの歌の力なのかもしれない。

と、勝手ながら直感的にそう思った。

歌を聴く前までの監視兵はあれだけクールと言うか、
醒めていると言うか、
例えば、俺の部屋で女の悲鳴がしたので慌てて入って来て、
俺がマルラかエルザのどちらかを、今後そこにはオルネラも含まれるかも、
もっと近未来にはドロシーちゃんまで参加したりして、
これはこれで禁断で堪らんですが、そんなことは置いといて、
そんな駅弁ファック状態でも驚いた表情はするけど、やはりそれは一瞬で、
後は、静かにドアを閉めて行く姿勢は、ミスタークールです。

が、今現在の、シャルルの歌を聴いた瞬間から人が変わった感じで、
テンションは高いは、シャルルにばかり群がり、しかも、この雰囲気って、
少女マンガや少年漫画で良くある、
学園のマドンナに群がる親衛隊か勝手にファンクラブを作って不毛な活動をする如何(いか)にもマンガな奴らに見えて、これって冗談だろう?
と、思うのだが、だが、反面、シャルルの歌う姿や歌を聴かされると、
俺は今の今まで、
隙(すき)あらば、タイミングが合えばシャルルをも手(て)篭(ご)めにしてやろう。

俺の十八番(おはこ)の駅弁ファックとカチカチ巨根でシャルルの子宮を押し潰すとかの秘儀「子宮潰し」とか、
子宮口目掛けて精子砲をぶち込む、何故か忍法

「ゼロ距離射精&確定孕み」

の術をしようと邪(よこしま)な考え、
性欲塗れの妄想無限大の心が、唄を聴いた途端、
恥ずかしいと言うか、前よりもエッチな妄想が出来にくくなってしまったから、
まあシャルルの覚醒とでも言うのでしょうか?
聖なる歌姫、君臨って訳で、
俺よりも感化された監視兵達2名は完全にシャルルの下僕(げぼく)であり親衛隊(しんえいたい)1号、2号となったようだった。

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