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第一章 四天王になるまで
第四話 授業のお話
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一時限目は座学であった。
人間との戦争が二千年目ということもあって、過去の話や歴史の振り返りなどをした。
百年ごとに来る“神定勇者”のことや、それを討った歴代の魔王と四天王、〈八大将軍〉のことなどを復習し、まとめたのだ。
初代魔王の頃には魔族は九種いた。
黒い翼を持ち、生粋の戦闘種であった黒翼種。
それと対となる白い翼を持つ白翼種。
魔物の竜とは違い、偉大かつ強力な神龍種。
魔族の中で最も魔力の扱いに長けている妖精種。
長生きで博識である長寿種。
角が生えていて、単純な力が強い鬼人種。
獣の力をその身に宿す獣人種。
豚鬼族や小鬼族など多くの族数を持つ亜人種。
そして私のような普通の種である魔人種。
初代魔王は黒翼種であり、黒翼種は当時既に数が少なく、希少種となっていたが、今ではもう黒翼種は絶滅してしまい、魔族は八種となっている。
〈八大将軍〉は各種族の長のことであり、四天王に次ぎ絶大な力を持つ。これにもまた憧れを抱くが、実際になるのなんて不可能だ。
まず根本的に魔人種には将軍がいないし、もし他種族だったとしてもその種族全員から信頼されている必要がある。それに現将軍の中には下手したら四天王よりも強い人がいるのだ。
四天王なんて魔族全員の信頼と絶大な力が必要だから、将軍よりも不可能なのではと思うが、今は昔と少し仕組みが違っており、魔王や四天王からの勧誘がある。その為何か目立ったことができたらば声がかかる可能性が少なからずあるのだ。
……あーあ、四天王になりたいなぁ……。
二時限目は実技教科で、魔道具の作成だった。
魔道具とは、目的に応じた術式が組み込まれていたり、付与されていたりする特別な道具のことだ。
別に特別な道具と言っても、作成方法さえわかって仕舞えば簡単な作業。
今回は一人一人に短剣が配られ、それに術式付与をするという内容だった。
術式付与の方法は至って簡単で、まず呪文網と呼ばれる特殊な紙に付与したい術式を組み込んだ魔法陣を描く。
次にその魔法陣の上に対象物を乗せる。
そして魔法陣を発動し、対象物に付与すれば完成だ。
今回私は魔力を流すと、魔力を帯びて幻素に対応した属性が付くというものにした。他の生徒を見てみると、刃を振動させて切れ味を良くしたり、投げると対象に向かっていくものなど、様々だった。
……あの子の追尾系って今後使えるかもしれない。覚えとこーっと。
そして三時限目の今、実技で魔法のテストだ。
課題は五十メートル先にある的を、今発動することのできる最高の魔法で破壊するというもの。
そろそろ卒業も近いのだから、これくらい出来るよね? とのことらしい。
場所は屋外の実技演習場。いくらやっても怒られることはないだろうと、少しワクワクしている。
皆のを見てみると、的をきちんと破壊できている人もいれば、届かせることすらできず悲しんでる人もいる。まぁ人それぞれだとは思うが、流石に届かせようよ、とも思う。
着々と皆が終えていき、次はカルラの番となった。
はっきり言って、カルラは魔法が上手い。学年の中で五本、否三本の指に入るくらいではないだろうか。
……もちろんその中に私もいるんだけどねー。
「カルラー! 頑張ってーっ!」
待機場所から手を振ってカルラにそう叫ぶと、彼女はこちらに振り向いて、にこりと笑った。
そして発動体勢に入る。
カルラは右掌を的へと向けた。
「――大地を割れ、炎を立てよ」
術式詠唱が始まる。
……お、高位魔法を使うみたいだねぇ。久々にアレが見られるかな?
一般的な魔法は魔力の操作が容易なため詠唱を必要としないが、高位魔法はイメージの固定や魔力の流れの安定化を図るために詠唱が必要だ。
詠唱内容は魔法に関するものなら基本的に何でも良いため、発動者が自分で考える必要があるため何気にセンスが必要だが、それらしい言葉を並べておけばそれらしいものが作れる。
「我が怒りの焔で闇の眷属共を燃やし尽くせ」
彼女へと魔力の流れが生じ、周りに火の粉が舞い始める。
地面が小刻みに揺れ始め、的の前方の地面に大きなヒビが走った。
そのヒビから魔力が少しずつ吹き出していくのが感じられる。
既に発動の準備は整ったのだ。
そしてカルラは言い放つ。
「――舞い上がれよ焔、〈オスフィリア・ラグナ〉」
言った刹那、底から響くような音が地面から放たれる。
まるで地の底から何かが迫り上がってくるような、そんな音だ。
ヒビから光が溢れ始め、そして我慢が出来なくなった地面が、光と共に裂け弾けて的を飲み込む。
その時点で既に課題はクリアしているのだが、それでは勿論終わらない。
爆発音と赤光を連れて、その裂け目から人の大きさを優に超える幾つもの火柱が
立ち上がる。
その規模は凄まじく、待機場所にいる私達にも熱が波として届き、中には手で熱を遮る者もいる。それほどの炎だ。
先程裂け目に飲み込まれた筈の的が、噴き出す炎の勢いに乗って飛び上がる。だがやはりその高熱に耐えきれず、瞬間崩れ塵になる。
……終わりかと思った?
火柱が収まる。
だが急に大きな炎が生じたために、その燃焼に食われた空気があったところは真空になる。
そしてそこに流れ込むようにして周囲の空気が埋まり、辺りを吸い込む見えない爆発が起こってカルラの魔法は終了となる。
数呼吸分の間を開け、拍手が起こる。以前見せてもらった時は相当驚いたが、改めて見てもやはり凄い。
カルラが先生に一礼し、待機場所へと戻る。するとすぐさま皆が集まっていき、〈オスフィリア・ラグナ〉の話題で一杯になった。
若干悔しいが、まぁいいとしよう。
こちらも何も用意していないわけではないのだ。
さぁ、次は私の番だ。
人間との戦争が二千年目ということもあって、過去の話や歴史の振り返りなどをした。
百年ごとに来る“神定勇者”のことや、それを討った歴代の魔王と四天王、〈八大将軍〉のことなどを復習し、まとめたのだ。
初代魔王の頃には魔族は九種いた。
黒い翼を持ち、生粋の戦闘種であった黒翼種。
それと対となる白い翼を持つ白翼種。
魔物の竜とは違い、偉大かつ強力な神龍種。
魔族の中で最も魔力の扱いに長けている妖精種。
長生きで博識である長寿種。
角が生えていて、単純な力が強い鬼人種。
獣の力をその身に宿す獣人種。
豚鬼族や小鬼族など多くの族数を持つ亜人種。
そして私のような普通の種である魔人種。
初代魔王は黒翼種であり、黒翼種は当時既に数が少なく、希少種となっていたが、今ではもう黒翼種は絶滅してしまい、魔族は八種となっている。
〈八大将軍〉は各種族の長のことであり、四天王に次ぎ絶大な力を持つ。これにもまた憧れを抱くが、実際になるのなんて不可能だ。
まず根本的に魔人種には将軍がいないし、もし他種族だったとしてもその種族全員から信頼されている必要がある。それに現将軍の中には下手したら四天王よりも強い人がいるのだ。
四天王なんて魔族全員の信頼と絶大な力が必要だから、将軍よりも不可能なのではと思うが、今は昔と少し仕組みが違っており、魔王や四天王からの勧誘がある。その為何か目立ったことができたらば声がかかる可能性が少なからずあるのだ。
……あーあ、四天王になりたいなぁ……。
二時限目は実技教科で、魔道具の作成だった。
魔道具とは、目的に応じた術式が組み込まれていたり、付与されていたりする特別な道具のことだ。
別に特別な道具と言っても、作成方法さえわかって仕舞えば簡単な作業。
今回は一人一人に短剣が配られ、それに術式付与をするという内容だった。
術式付与の方法は至って簡単で、まず呪文網と呼ばれる特殊な紙に付与したい術式を組み込んだ魔法陣を描く。
次にその魔法陣の上に対象物を乗せる。
そして魔法陣を発動し、対象物に付与すれば完成だ。
今回私は魔力を流すと、魔力を帯びて幻素に対応した属性が付くというものにした。他の生徒を見てみると、刃を振動させて切れ味を良くしたり、投げると対象に向かっていくものなど、様々だった。
……あの子の追尾系って今後使えるかもしれない。覚えとこーっと。
そして三時限目の今、実技で魔法のテストだ。
課題は五十メートル先にある的を、今発動することのできる最高の魔法で破壊するというもの。
そろそろ卒業も近いのだから、これくらい出来るよね? とのことらしい。
場所は屋外の実技演習場。いくらやっても怒られることはないだろうと、少しワクワクしている。
皆のを見てみると、的をきちんと破壊できている人もいれば、届かせることすらできず悲しんでる人もいる。まぁ人それぞれだとは思うが、流石に届かせようよ、とも思う。
着々と皆が終えていき、次はカルラの番となった。
はっきり言って、カルラは魔法が上手い。学年の中で五本、否三本の指に入るくらいではないだろうか。
……もちろんその中に私もいるんだけどねー。
「カルラー! 頑張ってーっ!」
待機場所から手を振ってカルラにそう叫ぶと、彼女はこちらに振り向いて、にこりと笑った。
そして発動体勢に入る。
カルラは右掌を的へと向けた。
「――大地を割れ、炎を立てよ」
術式詠唱が始まる。
……お、高位魔法を使うみたいだねぇ。久々にアレが見られるかな?
一般的な魔法は魔力の操作が容易なため詠唱を必要としないが、高位魔法はイメージの固定や魔力の流れの安定化を図るために詠唱が必要だ。
詠唱内容は魔法に関するものなら基本的に何でも良いため、発動者が自分で考える必要があるため何気にセンスが必要だが、それらしい言葉を並べておけばそれらしいものが作れる。
「我が怒りの焔で闇の眷属共を燃やし尽くせ」
彼女へと魔力の流れが生じ、周りに火の粉が舞い始める。
地面が小刻みに揺れ始め、的の前方の地面に大きなヒビが走った。
そのヒビから魔力が少しずつ吹き出していくのが感じられる。
既に発動の準備は整ったのだ。
そしてカルラは言い放つ。
「――舞い上がれよ焔、〈オスフィリア・ラグナ〉」
言った刹那、底から響くような音が地面から放たれる。
まるで地の底から何かが迫り上がってくるような、そんな音だ。
ヒビから光が溢れ始め、そして我慢が出来なくなった地面が、光と共に裂け弾けて的を飲み込む。
その時点で既に課題はクリアしているのだが、それでは勿論終わらない。
爆発音と赤光を連れて、その裂け目から人の大きさを優に超える幾つもの火柱が
立ち上がる。
その規模は凄まじく、待機場所にいる私達にも熱が波として届き、中には手で熱を遮る者もいる。それほどの炎だ。
先程裂け目に飲み込まれた筈の的が、噴き出す炎の勢いに乗って飛び上がる。だがやはりその高熱に耐えきれず、瞬間崩れ塵になる。
……終わりかと思った?
火柱が収まる。
だが急に大きな炎が生じたために、その燃焼に食われた空気があったところは真空になる。
そしてそこに流れ込むようにして周囲の空気が埋まり、辺りを吸い込む見えない爆発が起こってカルラの魔法は終了となる。
数呼吸分の間を開け、拍手が起こる。以前見せてもらった時は相当驚いたが、改めて見てもやはり凄い。
カルラが先生に一礼し、待機場所へと戻る。するとすぐさま皆が集まっていき、〈オスフィリア・ラグナ〉の話題で一杯になった。
若干悔しいが、まぁいいとしよう。
こちらも何も用意していないわけではないのだ。
さぁ、次は私の番だ。
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