魔族少女の人生譚

幻鏡月破

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第一章 四天王になるまで

第七話 四天王からのお話

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「四天……王が?」

「あぁ。……まさかお前とは思っていなかったが。――分かるだろ?」

 もちろんわかっている。
 四天王から直接話があるということは、一つしかない。
 それは、

「「四天王への勧誘」」

 でもありえない。私は成績も実力もないし、信用は……先程失った。

「そんな……ありえませんよ」

 カロナ先生が腕を組んでうなる。

「あぁ。私もそう思ったんだが、しかし確かにお前の名を言った」

 「そう思った」って、何か若干傷つくのは気のせいだろうか。
 私が呼ばれるわけがない。でも先生が言うなら信じるしかない。

 うーんと悩んでから、私は話を聞くことにした。まぁ四天王の呼び出しだから拒否権はないんだけどね。

「わかりました。話を聞きに――」

「おいウィディナ!」

 私の名前を強く呼ぶ声がした。
 驚いて後ろを振り向くと、リギトだった。こっちに走ってくる。まずい。

「おいリギト、走るな」

 という先生の声にリギトは止まる。

「しかし先生、ウィディナが――」

「あぁ、ウィディナは話があるんでな。しかしリギト、何故ここにいる? 授業開始時刻はすでに過ぎているぞ」

「「えっ?」」

 私も驚く。時計を見ると、授業開始時間からは10分も過ぎている。
 先ほどの騒動で鐘の音が聞こえなかったのだろう。

「ウィディナには話がある。私も同席するため次の授業は自習だ」

「え、あ、ちょっ、先生! 話が!」

「話は以上だ。教室に戻って皆に伝えておけ」

 行くぞ、と先生に言われ、リギトと反対方向へと進み出す。
 
 後ろを見てはいないが、今のリギトの姿が簡単に想像できる。アイツのことだから拳を固く握って私を睨んでいるのだろう。アイツはそんな奴だ。
 はぁ、と1つ溜息を吐くと、

「おいウィディナ。お前なんかしたのか?」

「い、いえ。特に何も――」

 ふーん、と先生は面白くなさそうに言った。

「……カルラか」

「んなっ――」

 え、何故に!? 何故に分かるの先生!?
 やっぱ先生だからなの!? 先生だからわかっちゃうの!?

「え、そ、そんなことななないですよ」

「ほぅ……まぁいいいさ」

 とにかく今は四天王だ。先程は目が合っただけで取り乱してしまったから、今回は気を付けなければいけない。目を合わせなければいいのだろうか?
 でもいざ対面するとなると圧がすごいだろう。どうしよ……。

「ウィディナ、着いたぞ」

 ついた場所は会議室。学校だからVIPルームみたいなのではないが、緊張する。
 そんな気持ちが伝わったのか先生が、

「大丈夫だウィディナ。私がいる」

 と微笑み慰めてくれた。
 やばいこの笑顔、好きになっちゃいそう。
 でも先生がいると心強い。

「カロナ・フォルティナだ。ウィディナ・フィー・ケルトクアを連れてきた」
 
 すると中からどうぞ、と声がした。

「失礼する」

 扉を開けて入ると、女性がソファーに座っていた。
 青色の長髪で、高貴な雰囲気を感じさせる女性だった。しかも巨乳。
 ……こ、この人先生並みにデカい……。私は……。

「……ん?」

 あまりにも自然に会議室に入ったため気にならなかったが、先程のような恐ろしさはカケラもない。なんでだろう?

「さあさあ座ってくださいな。お話をしましょう」

 言われるがままに向かいの席に座ると、先生は腕を組んで私の後ろの壁に寄りかかった。

「あら先生、先生も座っていいんですよ?」

「いや、私はこの話の監視役だ。お前が変なことをしないか心配なんでな」

「あら先生、私は平気ですよ? 昔とは違いますし」

 ……あれぇ? 私の勘違いなのかなぁ? なんか会話を聞くに2人が知り合いっぽいんだけど……。

 私が固まっていると先生が、

「あぁ、ウィディナには言っていなかったか。エリヌは昔の生徒でな、あまりにも優秀で、だがいろいろやらかす馬鹿者だったから天才――いや、『天災』だったか? と呼ばれていたんだ」

「あら先生、それは過去のことですよ? でもそんなこともありましたね。まぁ天災とと呼ぶ奴は片っ端からぶっ飛ばして――」

 ……昔の……生徒……。
 そんな話聞いたことないんですけど! ていうか先生何者!? 前から普通の人じゃないってわかってたけども! これぞまさに逸般人ってやつ!?

「……あれ、先生。生徒さんだったのにさっきエリヌ『様』って言ってませんでした?」

「む、そんなこと言ったか」

 先生が一瞬焦ったような表情を見せた。
 それを見逃さなかったのか、エリヌ様はニコニコして、

「あらあら先生、様呼びでもいいんですよ?」

「は? お前を様呼びなど絶対したくないな。昔私にどれだけ迷惑をかけたか覚えてないのか――」

 2人が昔の話で盛り上がっている中、私はきれいな姿勢で固まっていた。

 どれくらいの時間が経ったのか分からないが、話は終わったらしく、

「……では昔話はここまでにして、本題に入りましょう」

 そして話が始まった。
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